中国の「冷やし中華」はさぞすごいとお思いなんでしょ?
それでは早速ご覧いただこう。
中国上海の冷やし中華が
こちらだ。
想像と全然違っていた方が大半ではないだろうか。
冷やし中華といえば、黄色っぽい中華麺に酢醤油のスープ、彩り豊かな具材をピシッと整えて盛り付けた夏グルメ。その豪華版を想像していたかもしれないが、実際には5歳児の自由時間ぐらい具材が転げ回っている。
どちらかと言えば日本の冷やし中華と比べざっくばらんで庶民的なのが、この「上海式冷やし中華」なのだ。現地では「上海冷麺」またはただ単に冷麺と呼ばれ、れっきとした夏の上海名物料理である。
販売期間は主に6〜9月で、「上海冷麺はじめました」的な告知もなく、初夏に入ればスッと始まり、秋口にはいつの間にか終わっている。まるで夏の恋。
中国式冷麺は中国各地で特色があり、一般的に「涼拌麺」と呼ばれているので、今回紹介する上海冷麺を「冷やし中華」とひとくくりにするのは無理があるのかもしれない。強いていうならば「冷やし上海」だろうか。ますます意味が分からなくなるので、ここでは上海冷麺と呼ぶことにする。
ゴワゴワするけど慣れれば美味しい
一番気になる味なのだが、「酢」という要素を除けば味も食感も日本式冷やし中華とは全然違う。
それぞれの要素を以下のように比較してみた。
■麺
冷し中華:ツルツルでコシがある、やや黄色
上海冷麺:ゴワゴワ
平打ちのゴワゴワした麺は喉越しが悪く、むしゃむしゃ食べ進めるような感覚である。
■スープ
冷し中華:冷たい酢醤油、胡麻だれ、味噌だれなど
上海冷麺:酢とピーナッツソース
ツンとした酸味のお酢とほんのり甘いピーナッツソース、これを麺にからめて食べることで、中華料理独特の甘酸っぱい味となる。酸味が足りなければテーブルのお酢をびしゃびしゃにかけてもOK。
■具
冷し中華:ハム、きゅうり、錦糸卵、トマトなど
上海冷麺:おかずぶっかけ
日本式冷やし中華と最も大きく異なる点がこの「具」である。具というよりは「おかずぶっかけ」という表現が正しい。写真の上海冷麺は豚肉・パプリカ・マコモを乗せた「三絲冷麺」で、定番の一品となっている。
他にもモヤシを使った「豆芽冷麺」、カツレツを乗せた「大排冷麺」、豚肉のピリ辛煮、魚香肉絲、田鰻、お麩とキノコなど、さまざまな種類の具が用意されている。
簡単に言えば「麺に中華料理をぶっかけて食べる」だ。これまでの説明が台無しになるぐらい簡単に言い過ぎてしまったけどそんな自分を許そう。
初めて食べた時は、日本式冷やし中華の概念が壁となり、美味しさが頭に入るまでタイムラグが発生していたが、今ではすっかり慣れてしまい、夏になれば燃え上がるようにこの麺をむしゃむしゃ食べている。
そもそも冷たくない
冷麺なのだが常温だ。冷たいものを食べる習慣があまりなく、具の中華料理も冷やしてしまえば油が固まってしまう。特に肉系の具は硬く味も悪くなるので常温ぐらいがちょうどいい。
中国語の温度を表す漢字と体感は概ねこんな感じだろうか。
日本の冷やし中華は「冰」ぐらいの温度だが、上海冷麺は「冷」程度の温度なので、私たち日本人からすれば常温のように感じてしまうのも無理はない。
光の冷麺でDIY
「光冷麺」というものがある。煌びやかなインスタ向けのキラキラ系映え冷麺というわけではなく、具なし冷麺である。中国語で「光」は「何もない状態」を指す意味としても使われる。「光頭」ならハゲ頭となる。インスタ向けキラキラハゲ頭だ。
麺と酢とピーナッツソースだけが届く。煌びやかさゼロだが、利点はなんといってもその安さ。料理と麺を別々に食べたい人がこれを注文する。
もう一つの利点としては、DIYでオリジナル上海冷麺の作成が可能なこと。おかずを乗っけるだけなので、思い思いの具材で好きな上海冷麺を自作できるのだ。光冷麺と数種類の具を用意して、手巻き寿司パーティー感覚で家族で楽しむのも良いかもしれない。
想像と違っていたとは思うが、これだけ上海冷麺を見せられては一度食べてみたくなったのではないだろうか。中国は広いので、他の都市ではスタイルの全く異なった冷やし中華や、想像を超えた驚きの冷やし中華にも出会えるかもしれない。
なので引き続き、中国の「冷やし中華」はさぞすごいとお思いください。