自由度の高い探究プログラム、生徒にどう寄り添う?【半年間のオンライン探究プログラムを運営してみて】
探究の授業から発展して、生徒から個別の相談を受けたりもっと発展的な内容に取り組んでみたいという相談を受けたことはありませんか?
そんな時、ぜひ力になりたい!と思う一方、限られた時間でどのように生徒と関われば良いか悩むことと思います。
リディラバでは、2022年9月から約半年、各々が興味のある社会課題に取り組むフルオンラインの探究プログラム「リディ部U18」を開催しました。
長期間にわたり、しかもフルオンラインで生徒の伴走をするのは私たちにとっても初めてのこと。
今回はこの半年間の取り組みを振り返りながら、生徒との関わり方について工夫したことをご紹介します。
(目標設定ワークシートの配布は終了しました)
自由度の高いプログラムを乗り越える鍵🗝とは?
今回のリディ部U18、プログラム開始時に決まっていたことは
期間は半年間
フルオンライン
プログラムを経て成果発表会を実施すること
の3つでした。
逆にいうと、何をどのように発表するか、ひとりで取り組むかチームで取り組むかといった部分は生徒の希望に委ねられており、探究プログラムとしてはかなり自由度の高い設計でスタートしました。
自由度の高いプログラムになればなるほど、生徒一人一人のやりたいテーマや取り組み姿勢に大きく差が出てきます。
そんな時、クラス全体に対して画一的な指導をするだけでは生徒の探究心を深められないことは自明です。とはいえ先生方も生徒一人一人に多くの時間をかけることは難しいですよね。
このリディ部U18プログラムも25名ほどの生徒でスタートしましたが、私たちリディラバ教育旅行チームがそれまでメインで進めていた「スタディツアー」がある中での実施だったため、なかなかメインの担当者が1人で全体を丁寧に見ることは難しい状況でした…。
メンターと共に、まずは「目標設定」。その上で「期間」「人数」「手法」の明確化を💡
そこでリディ部U18では、日頃からリディラバのスタディツアーなどに協力いただいているボランティアの社会人や学生、社員で分担し、生徒1人に対して1~2名のメンターをつけることに。メンターは1人につき、大体3~5名程度の生徒を担当することにしました。
この中で特に大事なのは、1on1ミーティング。そして初回が非常に重要でした。
初回の1on1では、目標設定のワークシートを元に生徒と1時間ほど話し、スタート時点での生徒の半年後の「目標」=「ありたい姿」を決めてもらいました。(このワークシートは記事下部でも配布しています!)
そして、
「自分の興味のあるテーマをとことん追求したいのか」
「グループで物事を進めることを重要視したいのか」
「アクションを起こしたいのか、文献などをじっくり読み込みたいのか」
といった軸について丁寧にヒアリングして、この半年間のプログラムに取り組む上での「条件」を決めていきました。
「せっかくの機会、絶対アクションまでやり切りたい」という生徒にとっては、半年間はかなり限られた時間ですし、「自分の関心のあるテーマをとことんリサーチしたい」という生徒とは意識づけやペース配分が変わってきます。もちろん、途中で1度決めた条件を変えることもできますが、まずはスタート時点で半年間の取り組み方についてイメージを具体化していきます。
探究の授業の場合、授業設計の段階で決まっている条件もあるかもしれませんが、少なくとも「期間」「人数(ひとりでやるのかチームでやるのか)」「手法」という3つの条件をスタート時に明確にして生徒自身が意識できるようにおくことは、生徒にとっては探究テーマを決めるよりも比較的決めやすい上、その後の探究を進めていく上で悩まず進んでいける軸になるので、早めに決めておくことが重要だと感じました。
メンターとしても、決めた条件を元にメンタリングの重要なポイントや今後力を入れるべきポイント(例:チームでのワークを重視→メンバーのチームビルディングや日程調整が大変そうだなあ/個人重視→モチベーションの担保をこまめに確認しなくちゃ…etc)が見えやすくなり、プログラム全体の内容やスケジュール感をコントロールしやすくなります。
ちなみにリディ部U18では、以下のような形でスタートしました。
長いプログラムに途中で挫折しそうな生徒。どう寄り添う?
リディ部U18は半年間のフルオンラインプログラムです。時にモチベーションが下がりがちな生徒にいかに寄り添っていくかも非常に頭を悩ませたテーマの1つでした。
学校の授業では年単位でプログラムが組まれていることも多いと思います。半年間のプログラムですら多くの生徒が挫折を経験しましたので、生徒のモチベーションが下がった時にどう立て直していくかは重要なテーマでしょう。
今回特にモチベーションの変化が顕著に見られたタイミングとして、ゲストスピーカーによる講義が挙げられます。
生徒の取り組み条件やテーマが大体決まってきた開始2ヶ月後に、社会課題に取り組むゲストスピーカーによる講義がありました。
ゲストスピーカーが、キラキラした実績を引っ提げて意気揚々と語る姿に、生徒はさまざまな刺激を受けているようでした。
自分もこんなことができるかもしれない✨とモチベーションが高まる生徒もいる一方、中には「自分の考えていることはちっぽけすぎて全然ダメだ…」と自信を無くしてモチベーションが下がってしまう生徒も出てきました。
自信を無くしてしまいそうな生徒たちには、メンターによる1on1を再び実施。丁寧なフォローを心がけました。
一旦広がりすぎてしまった視野を今一度「自分にできること」という範囲に目を向け直してもらい、
「自分が全部できるわけではなくて、自分ができる範囲でアクションを起こすことで、間接的に何かが変わるかもしれない。」
ということを、例を出したり、メンターの実体験を元にとにかく励ましていくようにしていきました。
この辺りの声かけは、社会問題を構造化して伝えているリディラバだからこそ得意な領域でもありました。
またフルオンラインということもあり、コミュニケーションの取り方にも非常に頭を悩ませました。今回は主にSlackとZoomを使ってプログラムを進めていきました。特にSlackは使い慣れていない生徒も多く、テキストコミュニケーションの難しさを感じましたが、SlackではDMとオープンチャンネルを目的に応じて使い分ける、なるべくZoomで話す時間を設けるなどの工夫を行いました。
また、このZoomで生徒と話したことをその場で完結させるのではなく、実際に次の行動に繋げていくための柔軟な対応も生徒のモチベーションアップにつながったと思います。それについては次の段落で触れていきます。
結局はメンターの「傾聴力」と「柔軟性」
半年間のプログラムを終えてみて、メンターに一番求められたスキルは「傾聴力」と「柔軟性」だと感じています。
生徒の心の奥底にある「やりたい」気持ちに耳を傾け、整理して、プログラムに反映させるようにできたメンターの担当生徒ほど、最後まで生徒はモチベーションを保って満足度高くプログラムを終えることができました。
例えば、ある生徒はさまざまな背景から「社会問題の当事者の方のお話を聞いてみたい」ということを打ち明けてくれました。
私たちリディラバには、様々な社会問題について学び、時に当事者として問題に向き合いながら、困りごとの生の声を多くの若い世代に知って欲しいと願う人の繋がりがあります。
そんな時は、「例えばこんな人なら紹介できるよ」「興味があれば聞いてみることはできるけどどうする?」と、生徒のイメージを具体化させてあげる声かけをしながらいろいろな提案をぶつけていきました。
またある生徒は「一緒にこの問題に取り組んでくれる仲間が欲しい」と相談してくれました。そんな時は「こんなスピーチコンテストがあって興味がある人が出てくるかもしれないよ」と提案し、実際に生徒がそのスピーチコンテストに出場するということも起こりました。
今回のプログラムでは、「社会課題」という一定のテーマがありましたが、みんななんとなく気になるニュースがあったり日々の生活で違和感を抱えているものの、それを明確に言語化できずにモヤモヤしている生徒が多くいました。そんな生徒たちが、この半年間を通じて自分の抱えていたモヤモヤを胸を張って発表できたり、あるいは言語化からさらに一歩進んで周りの大人を巻き込んで小さなアクションを起こせた生徒もいます。
私たちは、時に社会課題という枠を飛び越えて生徒が一生懸命になっていることについて話を聞いて、メンター同士で情報を共有しあい、プログラムの内容自体を柔軟に適応させていくことで、このモヤモヤを抱えている生徒たちに寄り添っていきました。
最後まで伴走しきれなかった生徒さんもいるためその点は力不足も感じています。
しかしながら、紆余曲折しながら探究プログラムを進めてきたこの経験が、生徒に寄り添っていきたいと考えている先生方にとって少しでもお役に立てば幸いです。
また、今回はメンターとして数名の大学生/社会人の方にご協力いただいた他、メンターが引き出した生徒の「やりたい」の受け皿として、自分自身の知見や経験をごく少人数の生徒に向けてお話いただくという形で関わっていただいた大人の方も多くいらっしゃいます。
先生方も、時に自分1人では知識不足、経験不足で誰かに頼りたい、でも頼れる人がなかなか見つからない…ということもあると思います。
一緒に社会課題の探究に取り組む伴走者をお探しの先生方がいらっしゃれば、ぜひリディラバとしてお手伝いしたいと思いますので、お気軽にご相談ください✨
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