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【子ども】昔話⑤定番の昔話はこんな感じ、のつもりだったけど~因幡の白うさぎ~

今回は、大失敗した話。


言語造形にはまる

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(↑ 会場前の休耕田。この写真を撮った日、私の間違いで、行ったけどレッスンはなかった。往復4~5時間かかるのに・・・)


当時、私は月1回、言語造形のレッスンを受けていた。
これがもう感動の連続。今までも「お話ってすごいなぁ」とは思っていたけれど、呼吸を整えたり、音韻を意識したり、身体を使ったり、そういうことをやってみると、さらに活き活きとしたものになる。
自分の声が、言葉が、お話の世界を生み出していくときの、何とも言えないこの感じ。
部分練習ではできても、通してみるとできない。でも、今できないってことは、いずれできるようになるってことだ。ああ、楽しい。

もちろん、子どもクラスでのお話の時間にもその学びが影響していた。「古事記」や「十二支の始まり」を語ったときの子どもたちの反応がそれを物語る。(詳しくはこちら→ 古事記①古事記②昔話④
だから、レッスンのために往復4~5時間運転するのも苦にならなかった。楽しさが余裕で勝っていた。それで、少しずつ身体が疲れていることにも気が付かなかった・・・。


フォルメンにはまる

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(↑ 円と直線のフォルメン 大人向けのレッスンより)

この頃、私は小学校の非常勤講師をしつつ、平日は放課後等デイサービスでも働いていた。シュタイナー教育を取り入れている事業所だったこともあり、療育プログラムの一部に「フォルメン」があった。
フォルメンは、ざっくり言えば「形の体験」。抽象的な形、代表的な形を動き、その動いた軌跡をクレヨン等で可視化したものだ。例えば、「手を上から下へ真っすぐに動かしたら、縦の直線が描けた」といったようなことを体験できる。体験を通して、あらゆるものを「形づくる」ための力を養うのである。それは、想像力でもあるし空間認知にも関係するし、臓器を形づくることにも影響する。
そんな、すごい効力のある「フォルメン」は、子どもの状態がとてもよくわかったし続けると子どもたちに変容をもたらすし、手ごたえ十分だった。
人間って、なんておもしろいんだろう!
興味はどんどん膨らみ、これまた楽しさが余裕で勝っていた。


子どもたちと一緒にやってみた

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そうだ、神戸シュタイナーハウスでもやってみよう。
言語造形で練習していた「因幡の白うさぎ」を題材に、フォルメンを描いてみよう。
どんな反応をするだろう?

まさに、興味本位でテーマを決定。自分の身近にあったものを組み合わせてできることを思いついた、というべきか。
疲れていなかったら、もう少し相手を思いやれたのかもしれないけれど、この時に限っては、テーマを決定するときに子どもの姿よりも自分の興味が前面に。今思えば、仕事を6つも掛け持ちして日曜日も休み無しだったら、そりゃそうなるわ!体調管理も仕事のうち!と当時の自分に言ってやりたい。


授業は誰のものか

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とは言っても、お話自体は言語造形のレッスンを受け、練習を積み上げてきたもの。子どもたちの反応はやはり上々。手ごたえ十分。
黒板にかけた布を外した時に、悲劇は起こった。
「えー、これ描くの?」
明らかに嬉しくなさそうな反応。当然だ。さっきまで、うさぎが海を渡っていく様子を活き活きと思い描き、うさぎの気持ちで大国主命を見送って、あんなにたっぷりとお話の世界観を味わったところだというのに。フォルメンはあまりに抽象的。そりゃあ、嬉しくはないだろう。
「そう、今日はこれを描きます」
と言いながら黒板を見て、我に返った。

このフォルメン、向きが逆だ・・・

私は左利き。黒板を描くときに子どものことを想わず、自分のことを考えて自分のために描いていたので、左右が反転していたのだった。
これでは見本にならない。
「これは左手で描いたものだけど、右手ならこう・・・」
と、スケッチブックを取り出してその場で描くと、子どもたちはちゃんと集中して見てくれる。
「先生、右手でも描けるんや~」
なんて優しい言葉もかけてくれて。
「ごめんなさい」
と心の中で呟きながら、落ち込んで立ち止まってもいられないので、子どもたちに改めて向き合う。みんな、描いているうちにフォルメンの持つリズムに乗ってきて、なんだかんだで楽しんでいた。

ああ、授業を自分のために使うところだった。
子どもたちと私、双方にとって実りある時間であるように。どちらかが消耗してしまわないように。常に循環しているように。
この時の苦い経験は今でも忘れないし、とても大切なものだ。時折思い出して、自分に喝を入れる。「しっかりしろ!」ではなく、「自分のキャパを見極めろ!」って。

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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。
小学校教員を経て、現在は放課後等デイサービスの指導員として働くかたわら、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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神戸シュタイナーハウス
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