映画『トム・ヤム・クン!』
2005年/製作国:タイ/上映時間:110分
原題 TOM YUM GOONG
監督 プラッチャヤー・ピンゲーオ
予告編(日本版)
予告編(海外版)
STORY
タイ。数百年に渡り、ゾウと共に生きてきた「最強ムエタイ戦士」の末裔たちの暮らす村。
しかしある日突然、その村のゾウ2頭が動物密輸組織に襲われ、オーストラリアへと連れ去られてしまう。
家族であるゾウを救うため、最強ムエタイ戦士のカーム(トニー・ジャー)は、シドニーへと向かう。
ゾウの運命は? そしてカームの戦いの行方は?
今、怒りの最強ムエタイが、オーストラリアをぶっちぎる!
レビュー
夏になる頃、観たくなる映画がある。
夏になったら、食べたい料理がある。
それは、『トム・ヤム・クン』。
新鮮な活きの良いエビで作ると『トム・ヤム・クン』はとても美味しい。
ゆえに新鮮で活きの良い俳優がエビのようにハネまわる本作も、当然美味しい。
数年前、当時少し気になっていた異性と共に本作を鑑賞した折、鑑賞後に「ん~、アクションは凄いんだけど、ストーリーがねぇ……。ちょっとはフランス映画あたりから学んで欲しいなぁ」と言われ、それを聞いた私は内心、「熱々のスパイシーなタイ料理のスープを食した直後にマッタリとしたフランス料理のソースについて語られてもさ……」と大人気もなく、まるで新鮮なエビの身のようにプリプリとしてしまった。
本『トム・ヤム・クン』(スープ)の「出汁」は、主役の「ムエタイ」の味と風味を、「斬られ役の雑魚敵(多数)」「カンフー」「剣術」「プロレス」がさらに引き立てて奥のある味と風味を形成し、パーフェクトな「ハーブ」チョイスとしての「カポエイラ」が芳醇な香りとクセになる刺激を生み、「香味野菜」であるところの「モーターボートチェイス(途中からヘリコプター乱入)」「一発撮りワンカット撮影、螺旋階段アクション(30人薙倒し)」「連続49人関節ギメ」「スーパージャンピング膝蹴り」「多数のゾウ」「ゾウの親子(子ゾウと主人公のサービスショット含む)」「伝統舞踊」「森の緑」等が全体のバランスを整え、想定外の「隠し味」として「マダム・ローズの鞭攻撃」がリピートを誘発する最終兵器として、君臨する。
で、何を言いたいのかというと「本作の物語は脚本の中にではなく、アクションの中にある」と言うことを言いたいのである。
またヴァチカンのミケランジェロの「ピエタ」を軽く凌駕する、ラストのアジアの美(タイの美意識によるアジアン「ピエタ」)の流れは、悠久の時の流れと、その流れの中に存在したであろう数え切れない無数の優しさの記憶へと、私を導くのである。
最後に
私が最も美しく、最も多感であった頃、昭和10年代生まれのお姉様とバチバチに意見が食い違い、大喧嘩になったことがあるのですけれども……
お姉様:アンタねぇ、そんな海老で鯛を釣るようなことばっかり考えてんじゃないの! 上手くいくわけないでしょう!? 夢みたいなことばっかり言って! もっと現実を見なさい! 現実を!
私:あぁ、そういうの昭和の考えですしぃ~。今の時代はそんな古い言い回しは通用しませんからぁ
お姉様:じゃあ今はなんなのさ。言ってごらん!
私:今? 今はねぇ、 エビはタイから輸入してんの。 わかった?
私からすれば「古い考えはもう通用しない」という「🦐(エビ)デンス」を示したつもりだったのですけれども、思いのほか火に油を注ぐ結果となってしまい、この後お互い更にヒートアップしてなじり合うこととなりました。この経験から私は、分からず屋な相手に「タイ(対)抗」してはいけないということを学びました。
しかしそんな時代も過ぎ去り、今、エビは「タイ」ではなく「メキシコ」や「インドネシア」からの輸入品ばかりが目に付き、色々と寂しい思いでいっぱいです(遠い目)。
はたして今の子たちは、「エビ」と「タイ」で何を語るのか(別に語らなきゃならないってことはないけどさ(笑))。
まぁなんにせよ、夏に雫の汗を滴らせながら啜る『トム・ヤム・クン』は美味しい!🦐💕
※実は数年前よりほぼヴィーガン生活なのですけれども、今年は久々に啜ろうかな
追記
DVDのプレミアム・エディションに収録されているメイキングがとても面白いので、機会がありましたら是非!
その他
本場タイの「トムヤムクン」の作り方
本作に登場した格闘技「カポイエラ」を学ぶ
①出演者のトレーニング風景
②実戦にて勝利する「カポイエラ」選手
古式ムエタイを学ぶ