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日常の「ハガキ」が彫刻に変わる!アート思考サロン in 代官山 第2回 冨井大裕氏と語る「思考の飛躍:日常から異次元へ」

2023年12月6日(水)、代官山 蔦屋書店のシェアラウンジにおいて、アート思考サロン in 代官山 第2回 冨井大裕氏と語る「思考の飛躍:日常から異次元へ」を開催しました。このサロンは、書籍『イノベーションを創出する「アート思考」の技術』の出版を記念して不定期で開催しています。


アート思考とビジネスパーソンを体験でつなぐ

アート思考とは、現代アートのアーティストが作品を制作する際に発揮する思考プロセスと共通しています。アート思考を身につけることで、ビジネスパーソンは、新しい視点や発想、問題解決能力を高めることができます。しかし、多くのビジネスパーソンにとって、アーティストとの接点は限られています。このイベントでは、ビジネスパーソンがアーティストと直接対話する機会を提供し、「アート思考」を体感していただくことを目指しています。

冨井大裕さんの作品にみられる思考とは?

前半では、アーティストの冨井大裕さんに、これまでの経歴や制作した作品について紹介していただきました。冨井さんは、身近に存在する日用品の中に別の視点を導入して、立体的な形(彫刻)に仕立てるアーティストです。冨井さんの作品づくりには、以下のような特徴があります。

  • 「彫刻を作る」という考えで制作はしておらず、「作るということをする」ために制作をしています。何か物質に「作るということをした」ものが「作品」になるといいます。

  • そのための方法として主に日用品を素材にしています。ストロー、スーパーボール、画鋲など、冨井さんが選ぶ日用品は、冨井さん自身があまり好きではないものです。「白目に映るものを中心にする」と言います。好きなものを対象にすると、どうしてもゴールを設定してしまいます。好きでなければ、素材を機能や目的から離れた「形」や「構造」として見ることができ、最終的には面白いものができると考えています。そして、その結果に自分自身が驚きたいと言います。

冨井大裕さん
冨井大裕《joint (ball)》

過程を楽しむ

続いて冨井さんが影響を受けた書籍を紹介していただきました。それは、以下の3冊です。

●    ティム・インゴルド『ラインズ 線の文化史』
●    細野晴臣『アンビエント・ドライヴァー』
●    長嶋 有『三の隣は五号室』

この3冊の共通点は、まず「オチがない」ことだといいます。それでは何が書かれているかというと、過程が書かれています。例えば『ラインズ』では、目的地に行く際に寄り道をすることを勧めています。目的地まで効率重視、最短距離で行ってしまうと発見がありません。この3冊は、目的地に辿り着くまでの過程をどのように楽しむかについての話が書かれています。
冨井さんは、美術は役にたつものではないと言いますが、アートの鑑賞のしかたも制作の態度も、いずれも過程に意味があります。アートを仕事にしていることで過程を愛せていると語ってくれました。そして、人は最後には死んでしまうのだから、その過程をどれだけ楽しめるかが重要ではないかと問いかけてくれました。

冨井さんの推薦書籍


ワークショップ:ハガキの条件/彫刻の形


後半は、冨井さんのファシリテーションでワークショップを行いました。今回のワークショップのキーワードは「シンタックス(修辞学) 」です。例えば「私」という言葉と「ピアノ」という言葉をつなぐ場合、助詞をどうするか、順番をどうするかによって、できてくる意味が全く変わります。同じように、モノとモノをどのように繋ぐか、どういうふうに並べるかをいろいろ試すことから素材を彫刻にしようというワークショップです。

ワークショップの流れは以下の通りです。

  1. 皆さんが自宅から持ってきていただいたハガキの中に、なんらかの形を発見して、その形に沿って切り込みを入れます。何箇所切り込みを入れてもかまいません。

  2. 次に、切れた部分をつなぎ、ホチキスでとめていきます。すると、勝手にカタチが現れます。

  3. 最初から、こういうものを作ろうとするのではなく、どういうルールを設けて作るかを考えます。

  4. ハガキに切り込みを入れ制作した彫刻を、書店のいろいろな場所に置いて写真を撮ってもらいます。作品を置く向きを変えるだけでも全然違う情報になります。写真を撮るときも、どの方向から撮るかで印象が大きく変わります。

実演する冨井さん

皆さんが制作した作品は、かなり複雑な立体構造をしています。最初からこのような複雑な構造を思い描くことは、私たちには難しいものです。しかし、今回のように、簡単なルールを設定するだけで、思いもよらぬ構造が立ち上がってくる。とても面白い体験です。

皆さんが制作した作品

作品を書店に展示する

そして、このワークで重要になるのが「観察」です。まず制作した作品をいろいろな角度から観察し、元のハガキにはなかった新たな情報を発見します。そして、発見した情報を展開するために、展示場所を探します。今日のこの場所で一番いい場所、ベストではなくジャストな場所を探します

最後に、皆さんが展示し撮影した写真を共有しました。皆さん、書店とは思えないような場所を見つけ出し、新しい世界を創出していました。冨井さんからもコメントをしていただきました。それぞれの作品が唯一無二で素晴らしく、個々の存在が愛おしく感じられる、エキサイティングなワークショップとなりました。

書店に展示された作品

参加された方からは、これまで経験したことのなかったことを体験できた冨井さんの作品づくり/ものの見方に刺激を受けたなど、高い評価をいただくことができました。
 
トークとワークショップをしてくださいました冨井大裕さん、そして参加していただいた皆さんに感謝いたします。

 


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