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「罪と罰」(ドストエフスキー)感想
本作に描かれているのは、絶望的な社会の閉塞に他ならない。あらゆる努力に関わらず、抜け出すことの叶わない貧窮な生活に、人々は過去、未来への幻想にすがる以外方法がなかった。その現実、社会、言うなれば全体的な力によって運命を固定された人々のあり方が、何よりも目につくことだろう。主人公は、いわば究極的な方法によって、その固定から逃れようと試みた。しかし他の人々の例に漏れず、ついには社会の定める「罪と罰」に、屈服せざるを得なかったのだ。刑務所に入った彼は、ただちょっとしたことから(愛、懺悔、それとも他の何かだろうか?)新しい眺望を目の当たりにする。おそらくは、苦悩の果てには救いがなければならないという著者の思想と社会への要請が、そこに反映されているのであろう。
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