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意外と知られていない日本に30種類以上ある香酸柑橘類

虚静恬淡(きょせいてんたん)
→ 心にわだかまりがなく、さっぱりしているさま。

さっぱりさせる、すっきりさせる、爽やかにさせるという意味で、柑橘類の話をしよう。

私の出身である広島では、すっかりレモンの産地というブランディングができあがっているようだ。

東京出張した際に広島はレモンが有名だという話もよく聞くようになったことは、とてもいいことのように思う。

地方を活性させるためには、名産を生み出すことがなによりも近道だし安定するからだ。

広島はレモンの産地というブランディングに成功しているが、同じ柑橘類、香酸柑橘類が日本には30種類以上あることを知っている人は意外と少ない。

みかん、はっさく、レモン、ゆず、すだち、かぼすといったあたりは比較的メジャーかもしれないが、香酸柑橘類に分類される柑橘にスポットを当ててみよう。

香酸柑橘ってなぁに?

香酸柑橘とは果肉を食べるのではなく果汁の酸味や果皮の香りを楽しむ柑橘のことをいう。

先述したが、レモン、ゆず、すだち、かぼすあたりをイメージするとわかりやすいと思うが、清々しい香りと酸味で料理を際立たせ、食欲を刺激してくれる料理の名脇役といったところだ。

文字どおり、香り高く酸味がある柑橘のことで、夏から秋にかけて旬となり全国の食卓の味を引き立ててきた。

この香酸柑橘類が日本に30種類以上あることも書いたが、あまり知られていないのはなぜだろう。

その原因の1つが香酸柑橘の敷居の高さにあるといわれている。

つまり、みかんやはっさくのようにフルーツとして食べることに比較的抵抗はなくても、香酸柑橘はどの料理に合うかを考えるところから始まるということだ。

また、せっかく使ってみたくてもなかなか手に入らないという現実もある。

その要因となっているのは、産地との連携ができていなかったり、生産者や売り手の発信が弱いというところもあるだろう。

ただ、今やSNSの時代だ。

上手く活用して全国区になった事例も増えており、まずは上手くいっているところを真似すればいい。

香酸柑橘類の一例

具体的には、どんな香酸柑橘類に分類される柑橘があるのか、一部を紹介していこう。

すだち

すだちは、ゆずの近縁の柑橘で、かぼすと同じミカン科ミカン属の分類となっている。

1個の重さは40グラムほどの小ぶりの柑橘である。

主に徳島県で生産されており、若い実の方が風味が良いことで知られている。

すだちは、昔からその果汁を食酢として利用していたことから、酢橘と呼ばれるようになり、これが名前の由来になったとされている。

一年中出回っているが、最盛期というか旬は9〜10月。

秋に松茸に合わせて利用されているイメージの強い人も多いのではないだろうか。

1974年には徳島県の花に指定されている。

かぼす

かぼすもすだちと同様に、ゆずの近縁の柑橘といわれ、すだちより一回り大きく酸味が強めなのが特徴だ。

1個の重さが140gほどで、テニスボールくらいの大きさだ。

主に大分県で栽培されていて、漢字では臭橘と書き、昔から皮をいぶし、蚊やブヨを除ける薬として利用されてきた。

ここから、カイブシ→カブシ→カボスとなったといわれている。

市場には一年中出回っているが、、9〜10月が最盛期で、2〜5月は少なくなる。

地元大分県では、ふぐ料理に使われることで有名だ。

へべす

へべすは漢字で平兵衛酢と書き、その特徴は、非常にビタミンCが豊富なことだ。

ビタミンCは直接細胞内の酸化還元現象を活性化し同時に細胞内の呼吸作用の調整も行う。

さらに、タンパク質を合成する必須アミノ酸9種類のうち8種類が含まれており、健康づくり体力づくりには欠かせない一品として知る人ぞ知る香酸柑橘なのだ。

名前の由来は、約180年ほど前に宮崎県日向市の富高という地区で見つけた長曾我部平兵衛爺さんに因んでつけられている。

種が少なくて搾りやすく、果汁が多いのも特徴である。

長門ゆずきち

山口県のオリジナルの香酸柑橘だ。

長門市、萩市、下関市で栽培されており、収穫時期は8月上旬~10月下旬までで、生産量は約10トンと希少価値が高い。

名前のインパクトとは裏腹に、爽やかな香りと優しい酸味が特徴だ。

醤油との相性が非常によく、黄色く色付いたものは、きになる長門ゆずきちと呼ばれ、より上品な味わいになるという。

大きさはゴルフボールよりやや大きく、青々とした緑色が美しい。

辺塚だいだい

鹿児島県の肝付町内之浦と南大隅町佐多の町境周辺の辺塚集落に古くから自生、栽培していた香酸柑橘だ。

出荷量が年間約50トンと希少な一品だ。

ダイダイに比べて小ぶりで皮が薄く酸味が少ないのが特徴で果汁と香りが良い一品だ。

ライムに似た爽やかな香りで、魚の刺身を食べるときに醤油に果汁を一搾りしたり、輪切りにして焼酎に浮かべたりなど、いろいろな楽しみ方がある。

2017年12月に農林水産省が、辺塚だいだいを、国が農林水産物や食品をブランドとして保護している。

香酸柑橘類の楽しみ方

日本に30種類以上ある香酸柑橘類の一部を紹介したが、他にも香酸柑橘類と呼ばれる柑橘はたくさんある。

使い方がわからないという人向けに、とりあえずの使い方もいくつか紹介しておこう。

1)牛乳と合わせる

牛乳200ccに対して、香酸柑橘を半玉ギュッと絞りかき混ぜる。

皮を下にして絞ると皮に沢山含まれる香りや酸味も一緒に絞れて味わいが増す。

香酸柑橘の酸味がまろやかさを増し、ラッシーのような味わいになるのを試して欲しい。

もし、複数品種ある場合は牛乳の代わりに、砂糖不使用の炭酸水に絞って味と香りの違いを楽しむのもオススメだ。

2)果物と合わせる

料理に合わせるイメージが強いですが、実は甘みの強い果物とも相性は抜群なのが香酸柑橘類だ。

特に梨や柿がオススメだ。

酸味を足したにも関わらず、フルーツ本来が持つ甘さが一層引き立つ不思議な体験をすることができる。

料理を食べた後のデザートとして是非一度試して欲しい。

3)お酒と合わせる

定番の使い方だと思うかもしれないが、使えるのは焼酎やウイスキーの蒸留酒だけではない。

ビールに入れるのも、苦みをまろやかにしてくれるのでオススメだ。

特に、果汁の多いへべすを搾ると、度数の高いお酒の角が取れて沢山飲めてしまうという。

それぞれ酸味や苦みの具合が違うので、自分のお気に入りの香酸柑橘類を探すのも面白いし楽しめる。

4)産地の人たちの使い方を真似てみる

すだちといえば徳島、かぼすといえば大分と連想されるように、香酸柑橘は産地との結びつきがとても強い食材だ。

そのため、産地出身の友人がいたら、美味しい食べ合わせを是非聞いてみて欲しい。

例えば、焼酎のかぼす氷割りが徳島県では飲まれている。

まず、製氷皿に注ぐ水にかぼす果汁を加える。

そして、焼酎を飲む際に完成したほんのりかぼす味がする氷で割り、さらにかぼすを追い絞りして贅沢に飲むのである。

次に、すだちの皮すりおろし冷奴は徳島県で食されている。

豆腐にすりおろしたすだちの皮をのせ、醤油をかける。

皮に豊かに含まれている香りが口に含むと溢れてくるので、一度は経験してみたいという人も多いのではないだろうか。

まとめ

冒頭の話に戻るが、柑橘類という言葉を聞いたことがある人は多いだろうが、香酸柑橘類というジャンルがあることを初めて知ったという人もいるだろう。

そして、少しでも香酸柑橘類と呼ばれるジャンルの柑橘を試してみたいという人が現れたら嬉しい限りだ。

こういった実を食すのではなく、脇役を添えるという日本の文化は奥深いし、趣があってとてもいいものだ。


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植田 振一郎 Twitter

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