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人間の歯は凶器であり、毒親最強の武器。

痛い。
噛まれていたところが、痛い。

今は、もう噛まれてないのに
何年経っても
あの鈍い痛みが、私を襲う。


人間の歯は
恐ろしいほど身近にある凶器。

しかも
口を閉じれば隠すこともできる。

食事にも使えて
収納可能とか…多機能すごいな。



あまりにも異常な光景。

気持ち悪い、怖い、何より痛い。
逃げたいのに、逃げられない密室。

”食い込む歯”
”悦びに満ちた顔”
”雄たけびのような奇声”


私にとって人間の歯は
食事ではなく、私を噛む凶器だ。

食事に使うことへの
違和感が、今もある。

当時、私の代わりに
餌になる家族はいなかった。

私が餌になることで
あの人は笑顔だったし

何より

他の家族は
私が餌にされていることを信じなかったから。



あの人が笑うのが嫌。

笑ったときに見える歯。

”それ”を見るたび、
今日も噛まれる。

その予告をされるような、怖さだった。


あれからだいぶ経つが
今でも、自分の笑顔が好きになれない。

思いっきりはしゃぐことも
みんなで笑い合うことも怖い。



コロナ渦で救われたこと。

マスク社会。
心が落ち着く。

みんな口元が見えない。
素晴らしい…‼
(あまりの感動で、語彙力さえ飛んだ)


凶器が見えない世界は
驚くほど穏やかだった。

自分にとって人間の歯は
凶器というイメージがあまりにも強すぎて

それが見えないだけで
この世界は本当に、本当に、平和だった。

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桜色せつな
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