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ボツネタ御曝台【エピタフ】混沌こそがアタイラの墓碑銘なんで#045



【おまけの採用ネタ】
じゃんけんで泣き出しちゃうピングー・あのちゃん:https://www.youtube.com/watch?v=-avKYWKP_ss&t=3015s




元歌 渡辺真知子「かもめが翔んだ日」

ハーバーライトが 朝日に変わる
その時 一羽の カモメが翔んだ


バーガーキングの クレームおじさん
キングが あらわれ いきなりトーンダウン




「何で一番盛り上がるところでトーンダウンするんだよ!」

思ってたのと違ったんじゃないですか? キングが

「まあ、そうだな、キングが出てくることは想定できても、こんな感じのキングだとは思わないもんな~、普通」

はい、見た感じ、話も通じないっぽいですし

「しかも、ミッ〇ーマ〇スみたく、口が耳まで裂けてるしな」

いやいや、先輩、ミッ〇ーと一緒にしないでくださいよ! 可愛いでしょ、ミッ〇ーは!

「そうか?」

そうですよ、アタイなんかディ〇ニーラ〇ドでミッ〇ー見つけちゃったら、速攻抱きついちゃいますからね

「だからお前はダメなんだよ」

何でですか!?

「たしかにミッ〇ーは可愛いかもしんないよ、でも、お前が抱きついた相手が毎回ミッ〇ーマ〇スとは限らねーだろ?」

ん? どういうことっすか?

「ミッ〇ーだと思って抱きついたら、100回に1回くらいの確率で、実は本物のネズミだった! ってこともありえるだろ!」

マ、マジっすか!?

「あんくらいの大きさのネズミだったらな、人間の頭なんてアッという間にバリバリ食っちまうぞ! 絶対!」

たしかに……

「お前、最近、平和ボケしてんじゃねーのか?」

はい、危機感が足りなかったかもです

「アタイラ、ヤンキーは毎日がサバイバルなんだからな! 気を引き締めて行かねーと命取りになるんだからな!」

はい、肝に銘じます

……

しかし、大きさって大事なんですね

「そりゃそうよ、関係性つーもんは、お互いの相対的な大きさに左右されるもんなんだからな、スウィフトの『ガリヴァー旅行記』ってそういうことだろ?」

え? するとですよ、もしもアタイがイサオよりも小さくなっちゃったら……どうなるんすかね?

「そんなもん、動かなくなるまでオモチャのようにいたぶられるに決まってんだろ」

ゲッ! やっぱ、そうなるんすか!?

「そりゃそうよ、世の飼い主たちは、そういう真実と向き合わないようにしながら猫を可愛がってるんだから」

うわ~、何か怖くなってきた、可愛くない可愛くない! イサオ、可愛くない!

「子猫に散々いたぶられたあげく、ソファの隙間に挟まってグッタリしている小っちゃい自分……そんな自分の姿を想像してみな」

先輩、何でそんなこというんですか!?

「バカヤロー! そんなことをされるとわかっていても、それでも可愛いって思うのが真の愛猫家だろうが!」

いや、無理ですよ、あんだけ可愛がったのに、恩を仇で返されるんでしょ!?

「お前、見たことねーのか? お釈迦様が飢えた虎の親子に自分の肉体を与えるというありがたい壁画を」

ああ、それなら見たことあります、銭湯の壁のペンキ絵で

「……何か嫌だな、その銭湯……」

……

「要するに、真の愛猫家とは慈悲深きお釈迦様になるってことと同じなんだよ!」

え~、ヤダな、それ、無理です、アタイには絶対無理です!

……

みなさんは、どう思われますか?

是非、お宅の猫ちゃんにも語りかけてみてください

「なあ、もしも私がお前より小さくなっちゃったら、やっぱりお前は私をなぶり殺すのかい?」と……

きっと猫ちゃんは、あなたの顔を見つめながら、ゆっくりと目を細めることでしょう

それが、返事です……

それでも、あなたは猫ちゃんを愛せますか?

アタイは無理ですけどね

なので、アタイはこれからも真実とは向き合わずに生きていきます、はい





ところで、バーガーキングのクレームおじさんは結局どうなったんですか?

「トーンダウンしただけなんだから、頭は有るんじゃねーのか? かろうじて」

ですよね、頭が無くなってたらトーンダウンじゃなくて、ただの無口ですもんね

「頭が有るだけありがたいと思わなくっちゃなあ~」

でも……でもですよ、もし、クレームおじさんのクレームが正当なクレームだったらどうなるんすか?

「そんなの関係ねーんだよ! こっちはキングだぞ! キング!」

先輩、いつの間にかバーガーキング側の人になってますよ、庶民の味方じゃなくて巨大資本の側の人間になっちゃってますよ

「あったりめーだろ! だってキングだもん! キングが「白い」っていったらな、黒いカラスも全部真っ白になるんだよ! それがキングのキングたるゆえんなんだよ!」

ダメだ、完全に自分をキングだと思い込んでる……

「バカヤロー! 予行練習だよ! 予行練習!」

予行練習?

「そうだよ、アタイラはもうすぐ世界一の大金持ちになるんだからな、庶民を見下す練習をしとかなきゃだろ!?」

先輩、そんないい方したらバーガーキングのイメージダウンになっちゃうでしょ

「そうかぁ~、しゃあ、バーガーキングもミッ〇ーマ〇スみたく伏字にしとけばイイんじゃね?」

もう遅いです、冒頭の歌詞で思いっきり太文字で『バーガーキング』って書いちゃってますから

「マズいな」

裁判になったら絶対負けますよ、アタイラ

「だ、大丈夫だろ? バーガーキングの方々は心が広いはずだから……多分……」

先輩がトーンダウンしてどうするんですか!?

「だって、もう謝りたくないんだもん、オデコに土下座ダコが出来ちゃってるんだもん」

そんなの、アタイだって同じですよ

「オデコがアブドーラ・ザ・ブッチャーの額みたいになってるんだもん、チョットの刺激で血が噴き出しちゃうんだもん」

じゃあ、怒られる前に先に謝っておきましょうか?

「うん」

関係者の皆様、本当に申し訳ございませんでした

「すいませんでした」

次回からは、上品で有意義な記事を書くよう心がけ、絶対に誰にも迷惑をかけないようにいたします

「いたします」

なので、令和時代でこの記事を読んでいるネット民の人たちも、もう「謝罪すべきでは?」とかいってこないでください

「こないでください」

それでも、ネット民の人たちが文句いってきたらどうします? 先輩

「そりゃあ、当然、頭からバリバリ……」

だ~か~ら~




アタイラは、いわゆる〈イイ女〉になることにしました

なぜ?

それは、暮居カズヤスからプロポーズをされるためにです

なぜ、暮居カズヤスの方から?

そうすれば、暮居カズヤスとの結婚を阻もうとするスタッフたちと戦わずに目的を達成することができるからです

その目的とは?

結婚して離婚して、財産分与で大金を手に入れること

そうです、暮居カズヤスは世界一の大金持ちなのですから

……

そんなことを本当に信じているのか? もう誰のことも信用しないといっていたではないか、そうおっしゃりたいのでしょ?

その通りです

たしかに、前回は結構盛り上がってしまいましたが、アタイラも100パー信じているわけではないのです

でも、もしも、それが本当だったら超ラッキーですし、嘘だったら嘘で、それもまた良し! と思っているのです

なぜかというと、どちらにせよアタイラは、そのころには確実にイイ女になっているのですから

たとえ金が手に入らなかったとしても、イイ女になったアタイラにはイイ事しか起こりません

イイ女のところには、大勢のイイ男がイイ物をもってやって来ます、ぽたぽた焼きよりもイイ物をもって

もちろん外見だけではダメです、本当のイイ女は中身も伴っていなかればダメなのです

パリコレのランウェイを歩くようなトップモデルは、控え室で哲学書を読んでいるというではありませんか

きっと「外見は美しいけど中身は空っぽね」といわれたくないからなのでしょう

アタイラも外見のポテンシャルは正直高いと思ってはいるのですが、客観的に見たら、今のアタイラなんて、ただの育ちの悪いポッチャリ気味のヤンキー女です

結構な美人のはずなのに、あり得ないファッションでヤバい目つきをした女が、よく山手線なんかに乗っていますが、今のアタイラはアレとほぼ一緒です

だから、アタイラは心身ともに生まれ変わる必要があるのです

まるでミノムシのように、ジャージとスウェットの山の中でサナギとなったアタイラは、やがてその背中を割って羽化し、美しい蝶となって羽ばたくのです!




とはいったものの、現実はそんな風にうまくいきませんよね、アタイラ、蝶じゃないし……

「だな、イイ女になるには努力が必要だからな」

努力するには、モチベーションが必要ですよね

「うん、やっぱ金だよな」

そうですね、結局信じるしかないですよね、暮居カズヤスが大金持ちだと

「うん、金のためじゃないとイイ女になる気が起きない」

はい、アタイも金のためじゃないと体が動かないです

……

「でもよ、一概にイイ女つってもよ、好みってもんがあんだろ? 暮居カズヤスの好みっつーもんがよ」

たしかに、アタイラがイイ女になっても暮居の好みじゃなかったら意味無いですもんね

「実は、ポッチャリ気味のヤンキー女が好きだったりして」

無いない、それは無い

……

暮居カズヤスとは、いったいどんな人間なのか? 

そして、どんなタイプの女が好きなのか?

情報を集めるため、アタイラはひさしぶりにパソコンを起動しました

すると、メールボックスにモナドンからのメッセージが何件か届いていました

そして、その一つには画像データが添付されていました

メールの本文には、「これは幼少期の暮居カズヤスが、就学前に書いた〈詩〉です」と書いてありました

……

画像データを開くと、後ろでカチッという音がしました

それは、先輩が『写ルンです』で写真を撮る音でした

その手があったか! 先輩、ありがとうございます、そうか~、写真か~

モナドンからの情報は、開いてしまうと数分で消えて無くなってしまうのですが、写真に撮ってしまえば、もう大丈夫です

令和時代の方から見たら、「何て悠長なことを」と思われるかもしれませんが、これがそうでもないのです

『写ルンです』の現像は最短でも半日くらいはかかってしまうものなのですが、店員の胸ぐらを掴んで「死ぬ気で頑張れ!」というと、不思議なことに1時間ぐらいであがってくるのです……アナログだって結構凄いんです

でも、買ってきた『写ルンです』は24枚撮りなので、全部撮りきるまで先輩が現像を許してくれません……まさにアナログの敗北です……

……

ということで、アタイラは暮居カズヤス少年の〈詩〉を分析することにしました




就学前の暮居カズヤスが書いた〈詩〉を皆様にもご紹介したいと思います

ただし、正真正銘の本物であるため、画像データをそのままお見せすることはできません

以下は、原文をそのままテキストに変換したものになりますので、ご了承ください



※画像データをテキストに変換


  はんばがーたべたよ
                くれいかずやす

  おかあさんとはんばがーやさんにいったよ
  はんばがーたべた
  おいしかった
  おかあさんもおいしいねといったよ
  かみをなめたらおこられた
  そしてかたずけてかえた
  そしてよるになってねた
  おかあさん
  なまはげってこんどいつくるの

 〔せんせいのコメント〕
  もしかして、はんばーがーのことかな?
  はんばーがーだったら、せんせいもだいすきだよ。



「……」

……

「……」

……秋田県出身なんすかね?

「いや、まずは〈はんばがー〉からだろ!」

……はんばがー

「……はんばがー」

……

「その前に、そもそも、これって詩なのか?」

詩でしょ、間違いなく

「だって、〈よるになってねた〉なんて、日記にすら書かない文章だろ」

いや、先輩、たぶん暮居はこの時、生まれて初めてハンバーガーを食べたんですよ

そして、そのあまりの美味しさに衝撃を受けたんですよ、きっと

「まあ、思わず包み紙を舐めちゃうくらいなんだから、そうなのかもな」

ハンバーガーのあまりの美味しさに興奮状態の暮居は、食べ終わった後もずっと、そう、トレイをかたづける時も、帰り道も、家に帰ってからも、そして、夜ふとんに入るまで、ずっと、ず~っとギンギンにキマった目をしてたんですよ、間違い無く

だから〈そしてかたずけてかえた〉と〈そしてよるになってねた〉には奴の興奮とその持続が込められているんですよ

「そうなのかな~」

だって、物凄い筆圧を感じるでしょ? この詩

「う~ん、わかんない、テキストに変換してあるし」

自分の経験や感動を文字として書くことによって、それを人に伝えることができるんだ!っていう、そんな純粋な感動が見えない筆圧となって迫って来てるでしょ!? こっちに!

「うん、まあ、そういわれてみると、そんな気がしてくるかな~」

……

でも、この先生のコメント、ムカつきません? 幼稚園の先生なのか知りませんけど、いやみったらしく、やんわりと〈はんばーがー〉に訂正してきやがって!

「しょうがねーだろ、間違いが有ったら訂正したくなるのが先生のサガなんだから」

これで暮居は間違い無く恥をかきましたよ、そして、その瞬間、この宇宙から〈はんばがー〉は消えて無くなってしまったんですよ、絶対!

「別にイイじゃねーか」

もう一度食べたとしても、もう初めて食べた時の、あの衝撃的な味は二度と戻って来なかったでしょうね、物自体は同じであっても、もうそれは〈はんばがー〉ではなく〈はんばーがー〉なんですから……あの味は、あの、この世のものとは思えない美味しさは〈はんばがー〉という言葉と共に永遠に消え去ってしまったんです

「不思議だよな、人の脳って」

……

「だったらよ、先生は何てコメントすれば良かったんだ?」

何の躊躇もなく「せんせいも〈はんばがー〉だいすきだよ」って書くべきだったと思います

「そうなのかな~」

そうですよ! そうすれば、この宇宙空間に少なくとも二つの〈はんばがー〉が存在できたのですから!

「二つもいらねーけどな」

……

「まあでも、先生的には横棒が一本足りないのが問題なんだろうけどよ、アタイラから見たら全然問題ないよな?」

そうですよ、言葉を伸ばす時には横棒を一本入れるんだって知ってるだけでたいしたもんですよ、アタイなんて、こんくらいの歳のころに文字が書けたのかどうかさえ自信無いですもん

「だよな、暮居はたいしたもんだよ、〈はんばがー〉で全然問題ねーよ、横棒なんて一本あれば、それで十分だよ」

ですよね、『ターミネーター』は『たみねたー』でイイですし、『欧陽菲菲』も『おやんふぃふぃー』でイイですもんね

「そうそう、『おやんふぃふぃー』の『らぶいずおばー』な」

……




そんで、いよいよ〈なまはげ〉案件ですね

「待たせて悪かったな」

これは、少なくとも父親と母親のどちらかが秋田県出身なんだと思いますね

そんで、年末年始に帰省した時に〈なまはげ〉と衝撃的な出会いをしてしまったんですよ

「だとしてもよ、唐突すぎんだろ展開が、どうすれば〈はんばがー〉から〈なまはげ〉につながるんだよ」

これはあくまでも仮説なんですけど、『失われた時を求めて』の子供のころのエピソードと同じなんじゃないかと……

「また、プルちゃんかよ」

主人公は子供のころ、母親がしてくれる〈おやすみのキス〉を心の支えにしていたんですが、客人が夜遅くまでいたりすると、母親がなかなか自分の部屋に来てくれないんです

「上流階級は社交が最優先だからな」

で、それが、辛くてつらくて、あまりにも辛すぎたせいで、なな何んと、ママの〈おやすみのキス〉それ自体が怖くなってしまうんです

「何だよ、本末転倒じゃねーかよ」

〈おやすみのキス〉をするために2階に上ってくるママの足音を、主人公の男の子は恐怖に身を震わせながら聞くことになるんです

「不思議だよな、人の脳って、パート2」

……

「え? でもよ、それと〈なまはげ〉と、どういう関係があるんだよ」

さっきもいいましたけど、暮居少年はハンバーガーのあまりの美味しさに衝撃を受けたわけですよ

「きっと、テリヤキバーガーとか食べたんだろうな」

だから、夜寝る前に「おかあさん、ハンバーガー屋さんには今度いつ行くの?」って訊こうとしたわけです

「普通はそうだろうな」

でも、そこで暮居少年は躊躇してしまいます、彼は思いました、もしも、おかあさんに「もう行かないよ」っていわれたらどうしようと

「そんなことはねーだろ」

あんなに美味しい、この世のものとは思えないような食べ物は、きっと人生のうちでも、そう何度も食べられるものじゃない どうしよう、もし、おかあさんに「もう行かないよ、ハンバーガー屋さんになんて、もう一生行かないよ!」っていわれたらどうしよう……

「普段何食べさせられてたんだよ、何か暮居少年がかわいそうになってきたぞ」

そして、その瞬間、ハンバーガーをもう一生食べられないんじゃないかという恐怖と、あの夜、秋田県の実家の家族団らん中に突然現れた〈なまはげ〉の恐怖が、奴の頭の中で接続されてしまったんすよ

「ああ、それで思わず「おかあさん、なまはげってこんどいつくるの」って訊いちゃったわけだ」

その通りです

「何か自信満々だな、全部お前の勝手な想像なのに」

だって、他に説明できます? 有るんだったらいってくださいよ

「有るよ」

マジっすか?

「まず、〈なまはげ〉=〈怖い〉だから〈嫌い〉っていう思い込みが、すでに浅いんだよ」

怖いでしょ、小っちゃなガキにしてみたら〈なまはげ〉なんて

「いや、アタイが思うに、この場合の〈なまはげ〉は、〈なまはげ〉であって〈なまはげ〉じゃないんだよ」

すいません、何いってるかわかりません

「ようするに、この〈なまはげ〉ってのは、あの〈なまはげ〉じゃあなくて、茨城県の実家に住んでいる〈いとこ〉のお姉さんのことなんだよ」

あっ! 秋田から茨城に変わった!……え? そ、それって、もしかして……

「そう、この場合の〈なまはげ〉ってのは、〈髪を脱色したヤンキーのお姉さん〉のことなんだよ、茨城の実家に住んでいる〈いとこ〉のお姉さんつったら100%ヤンキーだろ?」

それはいいすぎでしょ! 清楚系の女もいるでしょ! 2%くらいは!

「まあ、本物の〈なまはげ〉に比べたら、ヤンキー姉さんなんて十分清楚系だろうけどな」

いや、怖いでしょ、子供から見たヤンキー女なんて〈なまはげ〉とたいして変わらないでしょ

「それが好きになってしまったんだよ、暮居少年はヤンキー姉さんのことを」

ゲッ! マジっすか?

「うん、間違いない」

でも、でもですよ、好きになった女性のことを〈なまはげ〉呼ばわりすんのはチョット違うんじゃないっすか?

「まあ、最後まで聞けよ」

「茨城の実家で夕飯を食べていると、遠くからけたたましい原付のエンジン音が聞こえてくるんだよ」

確実にレディースですね

「普段はほとんど家に帰らねーくせに、親戚が帰省してくると帰ってくんだよ、用もねえのに」

そうそう、わざわざ仲間を引き連れて帰って来るんですよ、用もないのに

「見せつけたいんだろうな、自分が地元でブイブイいわせてんのを、そんで「小っちゃい時は体が弱くておとなしい子だったのに……あんな風になっちゃって」とか思われたいんだろうな、だから帰って来るんだよ、特に用もないのに」

そんで、暮居は出会ってしまうんですね、ヤンキー姉さんに

「そう、そして、暮居少年は恋に落ちてしまうんだよ」

そうなっちゃいます? ある意味〈なまはげ〉より恐ろしいのに

「バカだな、好きになる理由は可愛いだけじゃねえんだぞ、怖くてカッコイイも理由になるんだからな」

そういうもんなんですかね

「お前も子供のころを思い出してみろよ、怪獣や怪人や妖怪なんかは、怖いけどカッケー! って思ってただろ?」

ですね、大好きでしたね

「妖怪大図鑑とか読んだり、広告の裏に怪獣を描いたりしただろ?」

はい、オリジナルの怪人とか描いてました

「それと一緒だよ」

一緒か……たしかに、夜のレディースの百鬼夜行感はハンパないっすからね

……

あれ? 〈はんばがー〉と〈なまはげ〉のつながりは?

「まあ、聞けよ」

「ある日、暮居少年はヤンキー姉さんがお風呂に入っていると聞かされるんだよ」

ん?

「そして、暮居少年は思うわけだ、「お姉さんと一緒にお風呂に入りたい……」と」

暮居君! ダメダメ! いくら子供でも同意が無かったらダメなんだから~!

「脱衣室に立ち尽くしていた暮居少年は、勇気を振り絞って風呂場のドアを開けてしまいます」

ヤバイヤバイヤバイヤバイ!

「ドアを開けた瞬間、「なめんじゃねーぞ! コラー!」という怒鳴り声と共に、暮居少年はお湯をかけられてしまいます」

子供に何てことすんだよ! この女!

「全身ずぶ濡れになってしまった暮居少年は、全裸で立ち尽くしたまま昇天してしまいます」

……ぬ、脱いでいたのか……

……

「な? つながっただろ?」

え? どういうことっすか?

「暮居の詩の〈かみをなめたらおこられた〉とヤンキー姉さんの「なめんじゃねえぞ! コラー!」だよ

あっ! そういうこと!

包み紙を舐めるなと母親に注意された瞬間、奴はヤンキー姉さんを思い出してしまったんですね

「そう、自分にお湯を浴びせかけたヤンキー姉さんの裸を」

え? じゃあ、ハンバーガーを食べた後、夜寝るまで目をギンギンにさせてたのは……

「ヤンキー姉さんの裸を思い出していたんじゃねーのか?」

うわ~、ませたガキっすね~

で、愛するヤンキー姉さんを〈なまはげ〉呼ばわりしている理由は何なんですか?

「それは、母親が息子にウソを教えたからだよ」

ウソ?

「悪影響を及ぼしかねないヤンキー女に息子が近づかないよう「あれは人間じゃないのよ! 〈なまはげ〉よ! だから絶対に近づいちゃだめなんだからね!」とウソをついてしまったんだよ」

ああ、それで暮居少年は勘違いしてしまったんですね、愛しい女性の名前が〈なまはげ〉だと

「そう、ナマハゲ……アンミカみたいな感じで覚えちゃったんだろうな~」

じゃあ、詩の最後の〈なまはげってこんどいつくるの〉ってのは、「愛しいヤンキー姉さんに会いたいよ~」っていう意味なんだ~

「そういうことだな」

う~ん、でもスッキリしない、理解はできたけど何かスッキリしないです

「まあ、そういわず、そんなバックグラウンドを理解した上で、もう一度、暮居少年の詩を読んでみろよ」

……



はんばがーたべたよ
                くれいかずやす

  おかあさんとはんばがーやさんにいったよ
  はんばがーたべた
  おいしかった
  おかあさんもおいしいねといったよ
  かみをなめたらおこられた
  そしてかたずけてかえた
  そしてよるになってねた
  おかあさん
  なまはげってこんどいつくるの

 〔せんせいのコメント〕
  もしかして、はんばーがーのことかな?
  はんばーがーだったら、せんせいもだいすきだよ。



……ホントだ、後半は〈はんばがー〉に一切触れてない……そして、先生のコメントなんて、もうどうでも良くなった……

あー、もうダメです、もう笑えなくなっちゃいました、幼児性欲臭が漂って来て全然笑えなくなっちゃいました~

「不思議だよな、人の脳って、パート3」

なにいってるんすか! 先輩のせいですからね!

「お前の仮説とたいして変わんねーだろ」

いや、先輩の方が断然飛躍しすぎです、ほとんど妄想です!

「でも、充実した時間だったろ?」

はい、充実感と同時に、とんでもなく時間をムダにしたような気持ちです

「これでわかっただろ? 暮居カズヤスの好みの女が」

……

え? も、もしかして、ヤンキー女?……

……

ダメダメダメダメ~! それじゃダメなんです~、先輩! いくらイイ女になるための努力をしたくないからって、思考回路を捻じ曲げて無理やり現状維持にもって行っちゃダメなんです~!

「だよな、不思議だよな、人の脳って、パート……」

イイです、それは! もう飽きました!

……

でも、一つだけ訊いてイイですか?

「何だ?」

あんなに怒鳴られたのに、何で暮居はヤンキー姉さんのことを怖がらないんですか?

「そりゃあ、あれだろ、女に罵声を浴びせられれば浴びせられるほど興奮するタイプの男なんだろ?」

ただの〈ドM〉じゃなっすか! 暮居!

「ダメか?」

嫌ですよ、アタイラが怒って怒鳴れば怒鳴るほど興奮するんでしょ? そんな奴と一瞬でも結婚なんかしたくないっすよ!

「まだわかんないから、まだ〈ドM〉と確定したわけじゃないから」

まあ、そうですけど……

……

「でもよ、モナドンはどういうつもりで暮居カズヤスの詩を送って来たんだろうな」

さあ、量子コンピュータの考えてることなんて、アタイラにわかるはずありませんよ

「もしかしたら、これ送ってきたのAIじゃなかったりしてな」

他に誰がいるんですか?

「暮居の母親が押し入れの奥から息子の作品を引っ張り出してきて、そんで、それをアタイラに送り付けて喜んでるだけかもしんねーぞ」

だとしたら、最悪のマザーコンピューターっすね……

……

「そんで結局結論は何なんだよ、暮居の好きな女のタイプは何なんだよ」

そんなのアタイだってわかんないっすよ、確実なのは暮居カズヤスはかなりヤバい奴だってことだけです

「ヤバいのは最初からわかってるだろ」

そんなこといわれても……

「お前、暇なとき結構暮居とくっちゃべってたよな? 何か覚えてねえか?」

う~ん、どうだったかな~

……

あっ! そういえば!

「何か思い出したか?」

参考になるかどうかわかりませんけど、昔好きだった女のことを話してましたね

「どんな女だ? 参考になるぞ、それ」

う~んとですね、その女は~

「うん、うん」

え~と~、たしか~、わき毛はボーボーだけど~

……

「……」


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