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社労士的就業規則の作り方 6 服務規律

鹿児島で社労士をしています原田です。
 社労士だったら誰もが大好きかも、就業規則の作り方です。今回はいよいよ服務規律です。何でもありで一番面白いはずのところです。

ここでは厚労省モデルを使って、社労士が就業規則に対してどうアプローチするかを案内しています。


第3章 服務規律  第10条~

服務の目的

(服務)
第10条 労働者は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の 指示命令に従い、職務能率の向上及び職場秩序の維持に努めなければならない。

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

 服務規律の最初に書く、「みんなで守ろうね」条項です。表現の違いはあっても、どのモデルにも書いてあります。私の書くものにも当然に書かれています。

 服務規律を「服務規程」として別の規則にする場合は、少し変えた同様の文章を(目的)として第1条に記載します。

守るべき服務の列挙

(遵守事項)
第11条 労働者は、以下の事項を守らなければならない。
① 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと。
② 職務に関連して自己の利益を図り、又は他より不当に金品を借用し、若しくは贈与を受ける等不正な行為を行わないこと。
③ 勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと。
④ 会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと。
⑤ 在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩しな いこと。
⑥ 酒気を帯びて就業しないこと。
⑦ その他労働者としてふさわしくない行為をしないこと。

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

 服務規律の本題部分です。服務規律の多くは、法令で定められていない
・企業内の禁止事項
・行為を行う場合に許可を必要とする事項
・提出や申請を義務付ける事項
等を記載します。原則的には法令で定めてはいけないものを除いて、
「やって欲しいことは全部書く、やってほしくないことも全部書く」
が原則です。

 服務規程違反は、けん責・降格・減給(時に解雇等)の罰則を与える事由となる根拠規定にもなるので、性悪説に立って、できるだけ書いた方がいいでしょう。

 ただし良識を書いたことを書くと、今時はネットに掲載されて笑いものになる可能性もあるので、自分の良識が一般的に正しいかを誰かにチェックしてもらった方がいいと思います。

 文中の項目について考えてみましょう。
①は許可があればOKなので当たり前。誰の許可かを書いた方がいい場合もあります。

②は賄賂禁止。便宜供与禁止の意味です。賄賂だと思ってないで便宜供与する人がいるので、賄賂禁止よりもこうした記載の方がいいでしょう。

③は当たり前なのですが、当たり前は書いておくべきです。

④に付随して、SNS規制等も記載する場合があります。飲食店・コンビニはもう必須記載の時代です。

⑤は退職後も規制するという規定です。退職後に懲戒できないので別に対処も考えるべきですが、「書いてあるからね」と抑止するために利用します。情報漏洩については、個人情報等について第16条にも記載しています。

⑥を書かないといけないのが悲しい現実ですが、職場がバーだと書けないですね。「飲んで何が悪い」というバカげた主張を黙らせるために入れます。

⑦でその他全部になるはずですが、明示してないことについては、何とも言い難いことになるでしょう。


 服務規律は、社労士的には腕の見せ所だったりします。産業的に禁止して欲しそうなものを先に入れておくと喜ばれます。ありがちな部分で言うと、接客業なら、髪型やアクセサリ等の身だしなみ、制服やネームの着用
製造業なら、加工場の持ち込み禁止物や製品・商品の取り扱い
といった感じです。事前に仕事内容を思い浮かべることが大事です。

 世間でトラブルが起こったり、事件が起こったりすると、追加したりします。個人的には過去にMLMで痛い目にあったので、厳しく規制する規定をやんわりと入れてます。

 禁止規定と義務規定を分けているパターンも時々目にします。
条文の最初に、「以下のことを禁ずる」から始めるのですが、時々項目の中に「やってはならない」と書いてあり、
「やってはならないことを禁じるのですね」
と笑い話になる場合があります。文章の流れには要注意で項目を組み立てないと恥をかきます。

 服務規律の中には、遵守事項として掲げる他に、様々な規定を盛り込みます。これ以降に記載する法令として義務付けるものもあり、慣習的に禁じるものも出てきます。

 常識的で言うほどでもないことでも書きます。従業員から「ここまで書かなくてもいいのでは?」と聞かれたりしますが、
「会社として困る面と、そういう人が近くで仕事をしていると困る面と両面があるので、一概に会社を守るだけでなく、まともに仕事をしている人を守るためにも、厳しい規定が必要なのです。」
という説明を従業員にすることもあります。

 そのため性悪説に立ちづらい従業員で作る就業規則は、あまり感心できないケースが非常に多く、そういう規則を定めたために、結果的にまともな従業員が辞めることになることは防がなければいけません。


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