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社労士的就業規則の作り方 20

鹿児島で社労士をしています原田です。

社労士がみんな大好き給与計算に関係する賃金規定の話です。
社労士でも会社内でも、給与計算担当者は、計算間違いで従業員から信用を無くしたり、自分のミスでは無いのに激しく怒られたり、指示通りやったのに恨まれたりと面白イベント満載です。
みんな大好きなので、やりたくないといった声も多数耳にします。

ここでは厚労省モデルを使って、社労士が就業規則に対してどうアプローチするかを案内しています。


第6章 賃金 第44条~

臨時休業の賃金

(臨時休業の賃金)
第44条 会社側の都合により、所定労働日に労働者を休業させた場合は、休業1日につき労基法第12条に規定する平均賃金の6割を支給する。この場合において、1日のうちの一部を休業させた場合にあっては、その日の賃金については労基法第26条に定めるところにより、平均賃金の6割に相当する賃金を保障する。

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

 労基法第26条と書いているので、さっそく見てみましょう。

(休業手当)
第二十六条使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

労働基準法より

 と言うことで、法令通りなので義務です。労働者の権利ですが、事業主側としては「ノーワークノーペイだ」と主張しがちなので、わざわざ書いておくわけです。賃金に関する事項なので、必須記載事項でもあります。


欠勤等の場合の給与計算

(欠勤等の扱い)
第45条 欠勤、遅刻、早退及び私用外出については、基本給から当該日数又は時間分の賃金を控除する。
2 前項の場合、控除すべき賃金の1時間あたりの金額の計算は以下のとおりとする。
(1)月給の場合
基本給÷1か月平均所定労働時間数
(1か月平均所定労働時間数は第40条第3項の算式により計算する。)
(2)日給の場合
基本給÷1日の所定労働時間数

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

第1項は、ノーワークノーペイの原則通り、仕事して無いので給料から引くという当たり前の話です。中小企業の場合はこの内容に近い形が多いです。

 大手や公共団体の場合には、単純に欠勤・遅刻・早退を引かない場合もあります。
・遅刻早退は〇回までは大目に見る
・3回遅刻で欠勤1回とみなす
・3回欠勤までは引かない
とかを取り決めている場合があります。

3回遅刻で欠勤1回は減給の制裁(労基法第91条)の上限を超えないように制裁として引くことになります。制裁なので懲戒処分のひとつとして考えるべきなので賃金規定上で定めていいのかは疑問だったりします。ただし実質上2回までノーペナルティなので、妥当性が無いとは言い切れないと思います(これは感想)。運用に注意でしょう。

(制裁規定の制限)
第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

労働基準法より

第2項では具体的な計算方法について記載しています。「第40条第3項の所定労働時間の算式により」と書いてあるので、その解説を読もうとこのNoteのページを探してはいけません。

なぜなら、数式が並んで面倒だったので私のNoteでは省略してあります

ということで、これを読んでる人が怒る前に貼っておきます。

モデル就業規則 第40条 第3項

残業代の基になる計算式を使って、その分を欠勤等の控除に利用するので、妥当性があると言えるでしょう。

所定労働時間の計算方法については諸説あるので、別の機会にお話しするかもしれません。これも考え始めると深い話になります。

残業代の基になる金額を計算した時に、割り切れることの方が少ないので、
例えば、1299.709円/時間とかの少数になったりします。

厳密な話をすれば、円単位で四捨五入して、1300円/時間にすると、
①10時間残業した場合
四捨五入:1300円/時間    ×1時間×1.25=16,250円
丸めない:1299.709円/時間×1時間×1.25=16,246.3円
となり、割増賃金の支払としては本来よりも大目に払っているので問題ありません。

②10時間遅刻(早退)した場合
四捨五入:1300円/時間    ×△10時間=△13,000円
丸めない:1299.709円/時間×△10時間=△12,997.09円
と言うことで、本来より多く引き過ぎになります。これは賃金未払いになります。

そのため残業代計算時は切り捨て、欠勤控除では切り上げして計算する場合が多いです。この差は未払い賃金の時効3年分でも数千円にもならないので、これだけを争点とした裁判は起こらないと思いますが、監督署から指摘されたれり、助成金で問題視されるので注意が必要です。

こうした端数計算の方法まで就業規則や賃金規定に記載している企業も稀に目にしますが、ほとんどの企業では記載していません。


 こちらは社労士目線で作る時の話であり、モデル規則の解説に書いてあることには、あまり触れていません。併せて参照して理解することが必要です。

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