社労士的就業規則の作り方 1

鹿児島で社労士をしています原田です。
社労士向けセミナーで、集客しやすい就業規則。私の事務所も就業規則案件が多いです。書いている現在でも4件の就業規則の大幅改定を依頼されています。

就業規則の心構えについては、初歩+で書いているので参考にして下さい。


 この内容の対象は就業規則を初めて作る方向けです。一部そうではない話も含みますが。そのため就業規則の厚労省モデルを使いながらお話します。厚労省モデルは、解説も細かくされていて、きちんと読み込んで正しく解釈すれば、有用な無料ツールのひとつです。社労士で就業規則に対する知識が浅いなら、必ず読んで理解しておいて欲しいと思う部分がたくさんあります。

 企業で自ら作られる場合でも、かなり最強に近いツールだと思います。前提条件は、ちゃんと読み込んで理解すればの話です。厚労省が発表しているので、当然、労使の片方だけに圧倒的に不利とか有利とかにならない配慮までされています。

 就業規則は趣向や主義主張で根本から変わる部分もあるので、ここで書くのも一説になることになります。

と言うことで、第1章 総則に行く前に、就業規則を販売する社労士的には、別のことをする場合があります。


第0章 前文

 就業規則の前に、従業員の心構えや会社の目的等を記載する場合があります。時々あまりに会社側に立ち過ぎた社労士が作った就業規則をみて、
「この前文を従業員が見たら引きますよ」
と言ってしまうものもあります。

 企業理念やクレドを最初に記載するのは、個人的に賛成です。ちゃんとしたものがあればの話です。適当につくった理念を書くぐらいなら、書かない方がいいです。

 従業員が読む際には、最初の1ページぐらいは絶対に目を通してしまうので、まともな話でスタートした方がいいです。

 昔は、「就業規則は義務だから作るが(10人以上の事業所は作成して監督署に届け出る義務がある)、従業員には読ませたくない」という会社が結構な割合でありました。

 当時、読ませたくない部分の筆頭は、何と言っても「年次有給休暇」です。有給を使わせたことが無い会社も大量にあった時代ですから、「うちには有給の制度は無いよ」としらばっくれていた時代がありました。ほんの数年前までの話です。それ以外だと、むしろ禁止事項や義務が書かれているので、読んで欲しい多い部分が多いはずです。

 2019年に有給付与の義務化が行われ、今のトレンド的には、読ませる前提の就業規則が多いです。裁判上も読ませない規定だと負ける場合があります。それだけに最初の前文や文言を記載する場合は、不安感や不信感を覚えることが無いように注意が必要です。


第1章 総則

 そもそも総則って何? 総則は、全体に通用する規則のことです。

(目的)
第1条 この就業規則(以下「規則」という。)は、労働基準法(以下「労基法」とい う。)第89条に基づき、 株式会社○○の労働者の就業に関する事項を定めるもの である。
2 この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令 の定めによる。

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

文中の太字にしてある労働基準法第89条とは、

(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない(後略)

労働基準法

 ここには作成義務に基づいて定めたことを述べています。個人的には、太字部分は削除しています。規則を定めるにあたって、根拠法を示すことも確かに大切ですが、こうした解説のように参照法令を示さなければ、ほとんどの労働者は分からないだろう、と思うのが大きな理由です。

第2項については、
・規則より法律が優先するのだから要らない
・努力義務を義務化することになるから要らない
と言われる先生もいます。その言い分もごもっともですが、この文言があると、法改正で新たに加えなければならない部分を記載しなくても、有効性が主張できるという部分で、助成金申請時に役に立つ場合があります。

この辺りは、事業主の意思や社労士の考え方で異なるでしょう。私的にはどっちでもいいと思います。

 厚労省モデルにはついてませんが、この次に複写・持ち出しの制限をかける規定を入れる場合があります。あらさがし禁止の意味です。全員に配布しないなら、入れておいた方が無難かもしれません。悪意をもって捻じ曲げようとする人が、複数の人数でこねくり回すのは望ましくありません。

これも事業主の考え方次第です。入れなくても問題ありません。時々「閲覧簿に書け」とか頭の悪い条項をつけてるものもあります。これは絶対に書いてはいけません。

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