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ザ・シンプソンズのシェイクスピア劇

もう20年くらい前になりますが、その昔、わたしはアメリカのファミリーアニメ「ザ・シンプソンズ」の大ファンで、1990年代から2000年代のThe Simpsons は全て見ていました。

大学生院生の頃から十年くらい、結婚して子供が生まれるまで見ていた唯一のテレビ番組かも。

わたしは海外在住なのですが、こちらでは夜の7時から毎晩放送していました。まだインターネットもブロードバンドではなかった時代。動画をインターネットで見るのは一般的ではありませんでした。

この番組、基本的にブラックユーモアと社会風刺がThe Simpsonsの面白さなので、全く子供向きではないのです。

アダルトオンリーと警告の出るエピソードもあるほど。政治ネタや夫婦ネタなどは子供には理解できないものです。映画のパロディなども満載。

時事ネタのカリカチュアに大いに笑い、また英語の勉強に非常に役立ちました。

そのThe Simpsons、2022年になっても、いまだに続いているのですね。1989年から断続的に続いていて、36シーズン目だとか。

調べるとディズニープラスを購読すると過去に放送された全話が見れるのだそうです。

サザエさんのように、誰も歳を取らない、永遠に成長しない、アメリカ中流家族の戯画。

最近、英語原文による、すべてのシェイクスピア劇読破に挑戦しているのですが、シェイクスピアのパロディのエピソードがあったことを思い出しました。

シーズン14のエピソード13話。

ザ・シンプソンズによるシェイクスピア

ホーマーがシェイクスピアのお話を読んで聞かせます。

すると、お話が再現されて、Bertバートが王子ハムレットで、弟のクローディアスに殺されて亡霊になった父王はもちろんHomerホーマー

クローディアスはバーテンダーのMoe モー

先王の妃のガートルードはMergeマージ

ハムレットの恋人のオフィーリアはほとんど出番はなく、宴会の場で歌を歌いながら窓からお城の堀に飛び込むLisaリサ

シンプソンズのハムレットは4分ほどでハムレットのスーパーダイジェスト版と言えるでしょう。

ホーマーからクローディアス王による毒殺の話を聞いたバートは、道化師クラスティらに暗殺の様子を劇にして演じさせて、クローディアス王の狼狽えを目の当たりにして、先王殺しを確信。

バートは王妃の寝室に向かい、物陰に隠れている男を刺し殺します。

このポローニアスはラルフの父親の警察官ウィガム。当然ながらポローニアスの息子のレアーティーズはラルフというわけで、最後はシンプソンズ流に全員が死んで幕です。

たった4分でハムレットのあらすじを紹介してしまうのはなかなかのもの。

上記の動画には日本語字幕はありませんが、普段のシンプソンズを見たことのある方なら、きっと理解できます。

ハムレットのお話を知らないと多分面白くない。でも、知ってると大笑いできてしまう!

Tomorrow Speech

さらにはマクベスも。

有名なトゥモロー・スピーチをホーマーが披露します。なかなかの名演です。

マクベスのこの台詞についてはこちらで詳細に語りました。

ザ・シンプソンズは、子供のための番組ではありません。

あくまで子供のために作品制作を続けるディズニーとは完全に一線を画した別世界の作品。

ザシンプソンズによるマイフェアレディ

マイフェアレディのパロディもありました。Wouldn’t it be lovely? のザ・シンプソンズ版がこれ、酷い英語を喋る小学校の雑用係の。。の英語を、コックニーのイライザが美しい英語を学んだように喋らせる特訓をする話。

下の歌はもちろんこれが元ネタ。

こちらはRain in Spain stays mainly in the plain のパロディ。ヒギンズ教授はもちろんリサ。

オリジナルはこんなふう。

ザシンプソンズのディズニー映画

さらには確信犯的パロディというか盗作。

最後のエンドロールの Time to say good bye では、こんなふうに歌われる。

Ho hi, ho hi, ホーハイ!ホーハイ!(もちろんオリジナルはハイホー)
It's time to say goodbye. お別れの時間です
If Disney sues, we'll claim fair use, もしディズニーが訴えたら、フェアユースなのだといいましょう(そのくらいに知れ渡っているということ)
Ho hi!
Ho hi!
Ho hi!

フェアユースはご存じですよね。そのこともこちらで解説しました。

元ネタの「白雪姫」の七人の小人の歌はこんなふう。

マイフェアレディもメロディを崩して原曲だとわかる作りのパロディだし。

さらには美女と野獣の名曲「Be our guest」は「See my vest!」に!

メリーポピンズの「A Spoonful Sugar」も

元ネタ知っていると本当に楽しいザ・シンプソンズ。

際どいネタもたくさんあり、見ていて不快になることも多かったのですが、こういうミュージカルや映画のパロディは見ていて本当にお腹を抱えて笑えるものでした。もちろんバートやリサが大好きな「Itchy and Scratchy」は「トムとジェリー」のパロディ。

他にも聖書のパロディなどもありましたが、キリがありませんね。

わたしにはとても懐かしい、いまだに新作が作られている、アメリカの「サザエさん」ともいうべき、The Simpsons!

わたしはアメリカ文化圏に住んでいませんが、それでもシンプソンズは大いに楽しめるものでした。

全ての英語学習者にオススメですよ。政治などの時事ネタや話題の映画、シェイクスピアなどの文化的作品に通じていれば通じているほど笑える作品です。

日本ではあまり知られてはいないようですが、アメリカ人でこの作品を知らない人はほとんどいないでしょう。文化的に知っておいて損はない作品です。

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