ミニオンズも大好きな英語の早口言葉
今回はギルバート・アンド・サリヴァン Gilbert and Sullivan の有名なミュージカル・ナンバーの紹介です。
ギルバート・アンド・サリヴァンは、作詞担当の劇作家ギルバート (1836-1911) と作曲家のアーサー・サリヴァン (1844-1900) からなるコンビ。
ヴィクトリア時代後半の英国に一世を風靡して、本格的なオペラではない、軽いオペレッタという音楽ジャンルで世界を席巻したのです。
コミックオペラとも呼ばれますが、モーツァルトのような本格喜劇オペラのドラマ・ブッファとは全くの別物です。
ギルバート・アンド・サリヴァン
この二人によるオペレッタ作品は英語舞台作品の上演記録を誇ります。
かのアンドリュー・ロイド=ウェッバーの「キャッツ」や「オペラ座の怪人」も及ばないのだとか。
風刺の効いた軽佻浮薄な歌芝居喜劇。
基本的に19世紀に流行したいろんな英語を巧妙に織り交ぜて書かれた、英語をしゃべる人のためのコミックオペラだとわたしは理解しています。外国語にも翻訳されていますが、英語で理解するのが一番です。
日本で広く知られていないのは、翻訳すると面白くなくなるという要因が大きいと思うのですが、風刺を得意としたので、物議を醸す題材も劇に絶えず取り入れたことにも注目するべきです。
代表作=問題作
彼らの代表作に「ミカド」という作品がありますが、Mikadoとは日本語の「帝」。
日本の皇室と中国王朝の宮廷をまぜこぜにしたような、滑稽な劇。
19世紀英国人から見た日本の宮廷が描かれていて(完全にフィクションです)、日本でいうところの明治天皇の御代に作曲されて英語圏で大変な人気となりましたが、日本政府は抗議。
ギルバート・アンド・サリヴァンは、別にジャパン・バッシングからこのような作品を書いたわけでもなく、ただ単にジャポニズムというエギゾチックを求めて日本を舞台としただけのようですが、日本の皇帝(天皇)を面白おかしく揶揄するような劇では、日本での上演は望めません。
劇の中のミカドは伝説の中国皇帝みたいですね。
日本のミカドの宮廷は、実は英国王室への揶揄。
直接に英国王室を批判はできないので、隠れ蓑として日本の皇室の名が用いられたというのが真相。
「ミカド」はいまもなお、欧州のすべての歌劇作品の最大上演数を誇る作品ですが、上記のような経緯もあり、日本ではギルバート・アンド・サリヴァンは歓迎されぬ音楽家なのです。
日本語でも上演された記録がありますが、興行的にあまり成功しなかったのはやむをえません。
現代においてはポリコレ的にはいろいろ正しくなく、この作品の今後の上演がどうなののか気になるところです。
「ペンザンスの海賊たち」
ギルバート・アンド・サリヴァンには「ミカド」の他にも楽しいオペレッタがたくさんあります。
その一つに「ペンザンスの海賊 」というものがあります。Mikadoに負けず劣らぬコミックオペラの傑作。
物語のあらすじはウィキペディアにおまかせして、
わたしが取り上げたいのは、ギルバート・アンド・サリヴァンのすべての劇作品の中でもっとも有名な「少将の歌」です。
A Major-General Song
英語世界では最も難しい早口言葉の一つとして知られ、英語発声の勉強のための動画を漁っていて、偶然に出会い、面白いので取り上げることにいたしました。
この歌が何のことだかわからなくとも、もしかしたらこの映画をご覧になられたことがあるのでは?
ミニオンたちは素人歌合戦のテレビ番組に紛れ込んでこの歌を披露するのです。
もちろん英語ではなく、ミニオン特有のGibberishなのですが。
これを英語で歌えると本当にすごい!
英語だと滅茶苦茶に難しいのですが、舞台俳優のための発声練習にもってこいであると、私の敬愛する英語発音のカリスマYouTuberさんが練習することをお勧めしています。
Clear Speech のために舌を動かす練習を日々するべき。英語のためのはっきりとしたメリハリある言葉を喋るための練習です。
もちろん英語発音練習の超上級編ですが、ゆっくり喋れば、きっとあなたもできるようになる。
英語喉を使って、一つ一つの音節を音を飛ばすように、パッパッパッパと。
ジブリッシュではない、オリジナルな英語版はこのようなものです。知識と教養はたくさんでも、実践的な海軍知識に乏しい英国海軍のお偉いさんを揶揄った歌。
こういう歌です。
分からない言葉ばかりで辞書を引いて苦労して訳しました。
つまり、海軍将校たるエリートは、実践的な海軍知識よりも、こんな風に実用的ではない役立たない知識をひけひらかして(ほとんどの人が知らない言葉)庶民を圧倒して威張っているという風刺。
ヴィクトリア朝英国社会らしさがこの歌に体現されています。
でもこれだけ理系分野も文系分野にも通じていれば、確かにすごい知識人ではあります。フーガは複旋律音楽のことなので、一人でハミングするのは物理的に無理だとしても(笑)。知ったかぶりが半分ですね。
この歌を数回聞いただけで歌いこなせるならば、あなたは間違いなく日本人離れしています。
まずは日本語で舌慣らし
英語の前に、日本語で舌を鳴らしてみましょう。
と同じようにわかりやすいメロディが早口言葉には不可欠です。日本のアナウンサーや俳優はこの「ぴょこぴょこ」をはっきりと発声する訓練をするのだと思います。
わたしが子供だったころには(昭和50年代です)ドリフターズがこの早口言葉をお茶の間に広めていました。早口言葉はメロディとリズムが大切です。
英語を喋れるようになると、日本語の早口言葉はそれほど難しくない。
音声学的に日本語はほんとに単純で、やはり舌を鍛えると早口言葉にも強くなる。
子供のころにできなかった早口言葉が自分には、いまではスラスラ言えてしまうのは意外です。
ArticulationとDictionのための舌を英語をしゃべって鍛えたからです。きっとドリフターズのように日本語早口言葉を喋れるならば、英語も上達します。
カタカナで書いてみると
さて、Major Generalに戻ると、普通の人には(英語ネイティブでも一度聞いたくらいでは)無理なので、ArticulationとDictionの訓練のためにこの詩を読みましょうと、俳優の発声指導されるベンジャミンさんはお勧めするのです。
このままじゃ難しいので、楽譜で援用すると(楽譜が読めるならば)歌いやすい。
英語はどの音節で切るかが大事。音符を読みながらだと圧倒的に歌う安く発声しやすくなります。八分音符だらけですが、音程は一音ずつしか変わらない、覚えやすいメロディ、だから早口言葉に最適。
とりあえず、一ページだけ。
音符が上下するので、これでアクセントがわかりやすい。アップダウン、アップダウン、と「ダウン」で音をずり上げるようにして読んでみてください。
無理やりカタカナで書くと(語尾の母音は「ない」つもりで読んでください、例えば最初のアムはアMです)。
冒頭のIは、歌が弱起でスタートなので、この部分に力を入れてはいけません(四拍子は一拍めを強調)。
アイ|アム・ザ・ヴェ・リ|モ・デル・オブ・ア・|
|モ・ダン・メイ・ジャー|ジェ・ネ・ラル・アイヴ|
|イン・フォ・メイ・ション|ヴェ・ジ・タ・ブル|
|ア・二・マル・アン(ド)|ミ・ネ・ラル・アイ|
|ノウ・ザ・キングス・オブ|イング・ランド・アン(ド)・アイ|
|クォート・ザ・ファイ(ツ)・ヒス|ト・リ・カル・フロム|
|マ・ラ・ソン・トゥ|ウォー・ター・ルー・イン|
|オー・ダー・カ・テ|ゴ・リ・カル・アイム|
|ヴェ・リ・ウェル・アク|ウェイン・テッ(ド)・トゥー・ウィズ|
|マタ・ズ・マ・ス|マ・ティ・カル・アイ|
|アン・ダー・スタン(ド)・イ|クエ・ジョンズ・ボゥス・ザ|
|スィン・プル・アン(ド)・クア|ドラ・ティ・カル・ア|
|バウト・バイ・ノ・ミアル|シ・オ・レン・アイム|
|ティー・ミン(グ)・ウィズ・ア|ロット・オ・ニューズ|
カタカナ化は骨が折れますね(笑)。発音も正確さからは程遠いし。Thはサ行やザ行の音に置き換えましたが(Theoremなど)、不正確です。子音連結も日本語では表記不可能なのです。
でもこれで英語が苦手だとしても、一応、これをリズムに乗せて読めば、日本語カタカナの早口言葉として成立しそうです。
舌を思い切り使ってRとLを言い分けて下さい。
英語喉を使って、深い息で一気に発声すると、カタカナでも英語に聞こえますよ。発声した音を喉を響かせてエコーさせましょう。
大げさに音を前に飛ばしてみてください。
わたしはこの歌を朝晩呪文のように唱えることにしています。
口を動かすことも運動です
リモートワークばかりしていると、人と会う機会が減り、言葉を喋るための口を動かす機会が減るので、こういう発声練習は私の生活には不可欠です。
ギルバート・アンド・サリヴァンの英語は語呂合わせが面白く、英語圏で深く愛されていることにも納得です。シェイクスピアほどに難しくもなく(古語が出てこないし、晦渋な芸術的表現は皆無のため)よりずっと親しみやすい英語を楽しく学べるギルバート・アンド・サリヴァン。
イギリス英語をマスターしたいといわれる方は、ぜひともギルバート・アンド・サリヴァンを教養として、娯楽として楽しまれるといいですね。
英語は強勢に支配された言葉。
勢いつけて太字の部分を強調して、メロディがほとんど変化しない、この歌を歌えれば、間違いなく英語、上達しますよ。
何度も書きましたが、英語をしゃべるためには筋トレしないとだめです!