レアチーズケーキという不思議な言葉
ケーキのことを書いたら、無性にケーキが食べたくなりました。
そこで昨日は日曜日だったので(雨が上がって外は久しぶりに快晴で、ピクニック日和でしたが、家の中で)娘と一緒にチーズケーキを作りました。
いつもは英語やマニアックなクラシック音楽のことばかり書いていますが、実はわたしは主夫歴20年の家庭料理のエキスパートです。
仕事が5時に終わると、台所に第二の仕事に出勤です。
特にチーズケーキには目がないのです。
その昔、若かったころ、世界中のチーズケーキのレシピ本を買いあさり、チーズケーキを極めました(笑)!!!
大言壮語ではなく、冗談抜きにチーズケーキづくりの名人です。
料理に美的感覚などのようなセンスはもちろん大事、手先の器用さも重要ですが、まず第一に必要なのは
であること!
技術は後からいくらでも学べます。
でも素質(食いしん坊気質)がないと(食べることが好きでないと)絶対に料理の腕前は上達しません。
なんて宣われる、わたしには理解できない人たちが世にいますが、そんな人たちの料理の腕前は絶対に上達しないのです。
どんな環境にいようとも、美味しいものを食べたいと思い、美味しいものを作ろうという努力が文化的な人間らしさです。
さて、料理の腕前の上達に次に大事なのは経験値。
どれだけキッチンに立って実際に料理して、実戦経験をどれだけ積んでいるかで、あなたが立派な主夫(主婦)になれるかどうかが決まります。
作ってなんぼ!です。
失敗は成功の母!
カッコつけて片手で卵を割って殻が入ってしまったオムレツ
焼き過ぎてジューシーではなくなったステーキ
半熟にしたかったのに固くなってしまった目玉焼き
チキンハムにするはずだったのに沸騰させてしまって固くなったチキン
発酵させ過ぎてしまった酸っぱいパン
砂糖を入れ忘れたマフィン
バターで炒めた小麦粉が滑らかにならなかったグラタン用ホワイトソース
一匹さばいて三枚におろしても骨抜きに手を抜いて小骨が残ったままの刺身
を食べたりする経験も必要なのです(いくらでも失敗例を挙げることが出来ます笑)。
九十九敗しても最後の百戦目で勝利!
百一戦目からは貴方は無敵です(最高のシェフです)。
ドラクエでいえばレヴェル99!
というわけでチーズケーキ特集ですが、今では子供たちも成長したので、わたしがこれまでに培ってきた長年の技術を次の世代に伝えようとできる限り、一緒に料理して、美味しい料理の作り方を我が子に伝授しようと頑張っています。
そこで日曜日、14歳の中学生の娘とレアチーズケーキ、作ってみました。
彼女はわたしの血を色濃く引いていて、筋金入りの食いしん坊です!
食い意地が張っています。
立派なシェフになれる才能があるのです。
というわけで、昨日は彼女にシェフ役を引き受けてもらって、私はアシスタントに徹しました。
彼女が失敗しても怒らない、褒めてもっと料理したいと思わせるために、ひたすらおべんちゃらを言いまくる!黒子役に徹しました。
ああ父親ってしんどいな。
これまで、何度か一緒にベークドチーズケーキを焼いてきましたが、レアチーズケーキを彼女と一緒に作るのはなぜか今回が初めてでした。
なので彼女には新しい挑戦でした。
レアチーズケーキという言葉
チーズケーキはバターや小麦粉ではなく、チーズがケーキの主成分になるケーキのことです。
どんなチーズでもチーズケーキは作れます。
世界メーカーのフィラデルフィア社のクリームチーズが定番ですが、リコッタ、コテージ、マスカルポーネなど、フレッシュタイプのチーズタイプならば、必ず立派なチーズケーキになります。
組み合わせを変えるともちろん味が変わり、そのたびに違う味覚に舌鼓を打つことができるわけです。
焼かないチーズケーキの場合、アオカビ系のブルーチーズを混ぜると大人の味わいになります。
白カビのカマンベールチーズは使ったことがないな。今度やってみよう。
子供にはNGですが、ブランデーやキルシュなどのアルコールを混ぜると天上の至福を味わうことができます!(入れすぎにご注意)。
ハードチーズはよく溶けないのでチーズケーキに向きませんが、ソフト系のチーズをバター小麦粉ベースのケーキに混ぜるとやはりチーズケーキになります。
まあ試してみてください。
フワフワのチーズケーキを作るのに必要なのは、少量のソフト系チーズ。
分量を工夫すると、程よいチーズの味わいの卵入り小麦粉ケーキになるわけですが、ベースは小麦粉と卵になるので厳密にはチーズケーキではないでしょうね。
入れすぎると焼いたときにチーズは底にたまるので、加減が難しい。
これは上級者向き。
さてレアチーズケーキという言葉、これがなかなか面白い。
もちろん和製英語。
という言葉を連想してしまいますが、このような言葉は英語の辞書には存在せず、英語では次のような表現で言い表します。
などと言う言い方などが一般的。
そこで「レア」とは何であるのか調べると、実はステーキの
の焼き加減が由来!
ああ日本語って!
なんという発想。
だからレアチーズケーキ、日本語だけで通用する言葉です。
超いい加減なレアチーズケーキのレシピ
冷やして固めるレアチーズケーキには、一般的に牛や豚の骨などから抽出したゼラチンが用いられます。
いわゆるコラーゲンと呼ばれるタンパク質がゼラチンになるのです。
魚の煮汁が煮凝りになるあれです。
フランス料理のテリーヌも。
濃い豚肉のスープストック(だし汁)を冷蔵庫で一晩冷やしておくと、スープは完全にゼリーになります。
でもケーキ用には市販の純正ゼラチンがいいですね。
もし無人島に漂流してレアチーズケーキを作れるチーズが手に入れば(動物の乳をコテージチーズ化して?)、動物の骨から取り出したゼラチンでもレアチーズケーキは作れます。
できたケーキをよく冷やせる洞窟を見つけておく必要もありますが(何の話だ!)
娘はゼラチンをお湯で溶かすと、ビーフの強烈な匂いが辺りに充満したことに嫌な顔をしていました。
ケーキなのに何でステーキの匂い!?なのだそうです。
こういう実体験が大事です。
彼女の料理経験値と知恵がこれで大幅アップ。
ゼラチンタイプにはいろいろありますが、今回使用したのは絶対に失敗しない、ゼラチンの粉スプーン三杯分を125mlのお湯に溶かして、液状のレアチーズケーキの生地375mlにあわせて合計500mlにして冷やして固める、というものを使用しました。
日本のレシピにはゼラチン4gを少量の水でふやかして、などと書いてありますが、このやり方ではうまく固まらないことが多いので、良く溶かしたゼラチン液にチーズ液を混ぜるのが絶対に失敗しない最良のレシピです。
プロは多分このやり方を使っているのではと思います。知らんけど。
我が家のレシピ
初めて作るという方は、最初はシェフ(パシティエ)が書いた一般的なレシピもご参考にしてみてください。
その方が失敗しません。レシピは複数のものを比べてみると原理がよく理解できます。
理屈がわからないで料理するから上手になれないのです。
クックパッドなど無料レシピでも十分。
でも料理のコツは経験がないとなかなか身につかないものです。
前述のように、我が家の場合、溶かしたゼラチンに液体状のチーズを混ぜるという成功率100%のレシピを利用します。
生卵を混ぜるレシピもありますが、生卵の安全性に不安があることもありますので、一般的に黄身を混ぜたレアチーズケーキは作りません。
一度作ってみましたが最高に美味しかったのです(翌日、お腹も大丈夫でしたよ)。
375mlのチーズですが、昨日は450mlにまで増やして(つまり同じ比率でゼラチン液も増やして)作りました。
250gのフィラデルフィア・クリームチーズ
100gほどのリコッタチーズ(高級マスカルポーネだと極上の味に=贅沢過ぎ。パンナコッタやティラミスの値段が張るわけです)
100g弱のサワークリーム(ヨーグルトでも美味しい)
レモン汁少々(お好みで)
お砂糖:ハーフカップ弱=80g(お好みで増やしたり減らしたりしてください)
クッキーベース:小麦粉+バター+砂糖+塩(これは市販の冷凍のものを使うと簡単、コンフレークスを砕いてバターと混ぜてもOK)。ベースはべつになくてもいいのですが、今回は娘がクッキーベースがいいとこだわりました。
溶ける料理用チョコレートに少量のミルク(飾り付け用)
以上が原材料。
1:クッキーベース
型紙にクッキングペーパーを敷いて、その上にクッキーの生地を敷き詰めます。クッキーの生地はお好きなものをどうぞ。
ただしベーキングパウダーを入れないこと。
チーズケーキの土台なので膨れる必要はないのです。
入れでもいいけど歪になると思います。実験してください。料理は化学です。
薄力粉10:バター7くらいの割合がいいです。砂糖はご自由に。
土台用なので少量で十分。
作り過ぎたらクッキーとして、後で焼くと無駄にはなりません。
型に敷き詰めたクッキーベースをオーブンで焼きます。
予熱していれば、多分10分くらいで焼けます。
固くしたいか、柔らかにしたいかはお好みで。
2:チーズ液
クリームチーズは室温に戻しておいて、電動泡だて器で混ぜます。
固まりは混ぜにくいので、ナイフなどで小さくしておくと楽です。
よく混ざったらサワークリームやリコッタや砂糖も投入。
徹底的に混ぜましょう。
ここで完璧にしておかないと舌触りが悪くなります。
レモンも投入。お好みでヴァニラやお酒なども。
3:ゼラチン
チーズが混ざったら、次は固めるためのゼラチンです。
125mlのお湯にスプーン3杯ですが、375mlを450mlに増やしたので、比率を合わせて1.2倍して、お湯は150mlにします。
粉ゼラチンは目分量でスプーン3.6杯に。
粉ゼラチンをお湯で混ぜると獣臭い香りが一面に漂いますが、我慢しましょう。チーズと混ぜると匂いは完全に消えてしまいます。
ゼラチンが良く溶けて混ざったら、チーズ液と合わせます。
よく混ぜてからクッキーを敷き詰めた型に流し込みます。
もしクッキーベースで側面を覆わない場合はバターを塗っておきましょう。
4:マーブル!
ゼラチンを混ぜたチーズ液を型に入れたら、次はお楽しみの模様づくりです。
これはレアチーズケーキでないとなかなか楽しめない。
ベークドチーズケーキでもできますが、焼きあがって変色したりしないので、レアチーズケーキの方が綺麗に仕上がります。
溶けるチョコレートにミルクを少し混ぜて電子レンジで溶かして、チーズの上に垂らして、カプチーノのラテアートの要領でチーズケーキの表面を大理石のようにデザインします。
ここは完全に彼女のセンスに任せてみました。
ジャーン!
一丁上がりです。
3時間、冷蔵庫で冷やいて、側面を温めて、型から取り出すと:
いただきます!🤤
舌の上でとろける魅惑!
あっという間にごちそうさまでした!😋
YUMMY!
美味しかったです。
でも作るのに一時間くらいかけて三時間冷やして待って、ようやくお皿に盛っても、食べるのは、ほんの数分の出来事!
この数分の至福の時間のために、わたしは何十年も料理の経験値を蓄積してきたのでした!!!
我が子が継承してくれるといいな。
わたしの料理の経験と体験を。
おまけ:過去のチーズケーキ
毎年分ありますが、キリがないので、このくらいにしておきます(笑)。
湯浅昭の傑作ピアノ曲集『お菓子の世界』にチーズケーキが含まれていないのは解せない!
この曲集が書かれた1970年代には、チーズケーキはまだ日本では一般的ではなかったということでしょうか?
シュークリームとか、ドーナツとか、プリンとか、チューインガムとか、柿の種とか、お菓子のイメージをほんとに見事に音楽化しているのです。
カリカリの柿の種はスタッカートで飛び跳ねて、伸びるチューンガムは音符がレガートしてリズムが粘る(笑)。
現代日本人作曲家によって書かれた素晴らしい曲集!
わたしの愛奏ピアノ曲集です。
明日はフェリックスのお姉さんのファニー・メンデルスゾーンのことを書きます。彼女はフェリックスに匹敵する大作曲家です。
プロイセン王国の首都ベルリン在住の大富豪令嬢ファニーさんはクワルクで作ったケーゼクーヘン(Käsekuchen:チーズケーキのドイツ語)を口にされたことはあったかな?
クワルク(Quark)はドイツのコテージチーズ。
19世紀ドイツにもチーズケーキはあったはず。
チーズケーキの歴史は古く、古代ギリシアやローマの頃からチーズをケーキに加えたデザートがあったそうですよ。
Happy Cheesecake!