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積み重ねという営み、面白味であり醍醐味


<積み重ねという営み、面白味であり醍醐味>

タネを蒔いてから数ヶ月もすれば「自分がどれだけ積み重ねたのか」がはっきりと収量という形で姿を現す。それはセンスとか知識量とか技術力とかではない。初心者はすぐにそれを言い訳にするが、畑にはそんなものはたいして重要じゃない。

特に自然農で使う技術は基本中の基本だけ。プロの農家からしたら誰もが知っている。それだけをただ丁寧に、しっかりと、積み重ねていく。

農薬や肥料みたいにすぐに効果が現れるわけじゃないから、大抵の人は無意味で無効果だとすぐに判断してしまう。

しかし、この地球にある自然界の仕組みはあらゆる生命がつながって、連鎖し合う関係性の中にあるから、自然農の手入れはいつだってゆっくり浸透していく。ゆっくりと、しかし確実にフィールド(野)を楽園に変えていく。野良仕事というものは本来そういうものだ。

ただその積み重ねが、大型機械や動力ではたどり着けないところへと連れて行ってくれる。ただその積み重ねが、大量の有機物の投入では決してたどり着けない境地へと連れて行ってくれる。

はじめて自然農を始めた人でもここまで頑張って積み重ねてきた人はもうすでにそれを実感していることだろう。

たった一本のきゅうり、たった一粒のトウモロコシ、たった一個のミニトマト。

それを口に入れ、噛み締め、ここまでの営みがフラッシュバックして、そして自分の命の一部になる。タネを蒔くワクワク感、発芽するかどうかドキドキし、小さな双葉に感動し、毎日天気や気温を気にして、定植した後にやってくる虫たちにやきもきし、葉の色が変わってきて不安が募り、ガンバレ!と声を掛ける。生えてくる雑草を刈っては敷き、どこからともなく現れた綺麗な蝶に心を奪われる。そして、ついに雌花が咲き、実が少しずつ形を変えていく。さぁ、食べてくれと言わんばかりに艶やかな実が私をいざなう。

その自然界の仕組み全てが、自分の身体の一部となる。その瞬間に自分自身が自然と隔離された存在ではなく、自然の中に含まれた存在だということに身体で実感する。そのときの嬉しさ、安心感、充実感。この地球で生きているという実感、生かされているという体感。

それは肥料や堆肥、農薬を使った農法では決して味わえない。それはスーパーや産直市場で買った野菜では決して味わえない。

どんなに口でオーガニックを訴えても決して味わえない。どんなに頭で環境問題を解決しようとしても決して味わえない。

それが積み重ねという営みの面白味であり、醍醐味である。あなたはこの夏どんな味を楽しむことができるだろうか?

この自然界の仕組みに感謝せずにはいられない。過去の自分に感謝せずにはいられない。そんな農という積み重ねを営んでもらいたい。


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