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【ネオワイズ彗星】彗星って何が面白いの?

どうも、YouTubeチャンネル「宇宙冒険隊」のÜdaiです!

今回はネオワイズ彗星の接近にちなんで、彗星を研究して何が面白いのか?についてお話しします。後半では、Üdaiが関わっている新しい探査ミッションに関する紹介も!
もう1つ、彗星に関するnoteを公開しております。もう1つのnoteでは尾などの彗星の特徴的な構造に関するお話をしています。是非両方読んで、色々な方面から彗星について詳しくなってください!動画版はこちら

ネオワイズ彗星(C/2020 F3) #とは

ネオワイズ彗星は以下の画像のような軌道を持つ彗星です。
太陽からの最小距離は0.29天文単位(地球と太陽の間の平均距離が1天文単位です)で一番内側の惑星の水星よりも太陽に近く、最大距離は715天文単位で一番外側の惑星よりも24倍も遠くなります。軌道傾斜角は129度で、地球などの公転軌道に対して非常に大きな傾きを持っていることが分かります。ここまで大きい軌道だと、1周するのにとても長い時間がかかりそうだ!と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、その通りで、公転周期は現在は6,500年程度だと考えられています。ちなみに、軌道は木星等の大きな質量を持った天体の引力で簡単に変わってしまいます。ネオワイズ彗星も少し前までは公転周期は4,300年ほどでしたが、現在では6,500年に変わっています。

note図1

名前の由来は?

ネオワイズ」とはどういう意味でしょうか?
これはこの彗星を見つけたプロジェクトの名前です。もともと彗星や小惑星を発見するための観測衛星WISEWide-field Infrared Survey Explorerの略)というものがありました。このWISEは2009年に打ち上げられ、2010年に観測を開始しました。この観測衛星は彗星や小惑星の出す赤外線を捉える衛星でした。赤外線といえば「」。このような赤外線の観測衛星は衛星自身が放つ熱がどうしても観測の邪魔になってしまうので、冷却剤を搭載して本体を冷やしています。ところが、観測開始から1年も経たないうちに、冷却剤が切れてしまいました。これは事故ではなく計画通りだと思うのですが、いずれにせよ冷却剤が切れると衛星自身の熱がノイズとなって、遠くの小惑星など、暗い天体を観測しにくくなってしまいます。そこで、冷却剤がなくてもできる観測をしようということでプロジェクトの目標を少し変更します(ウォームミッション)。このときに衛星の名前も新しくNEOWISENear-Earth Object Wide-field Infrared Survey Explorerの略)と変わりました。NEOはギリシャ語の「新しい」と掛けているのかもしれませんが、一応、「地球近傍天体」の略称NEOを頭につけたということになっています。観測衛星NEOWISEは一時期観測を休止していましたが、2013年から観測を再開しました。こうして2020年3月28日に発見されたのが今回のネオワイズ彗星(C/2020 F3)なのです。

では、「C/2020 F3」とは何でしょうか?Cは単純にCometのCです。彗星が発見されたときはまず名前の最初にC/がつけられます。その後、周期が200年以下程度と比較的短く、太陽に繰り返し接近する彗星であると分かった場合はこの符号はP/(Periodicに由来)に変わります。他にもD/X/もあるので、興味のある方は是非調べてみてください。2020は2020年に発見されたことを意味しています。ではF3は?これは見つかったのが何月か、そしてその月の上旬か下旬かを表しています。下の画像を見ると、今回のネオワイズ彗星は3月の下旬に見つかったのでFがつくことが分かります。2020年の3月下旬には彗星が他にも見つかっていますが、このネオワイズ彗星は3月下旬に見つかった彗星の中では3番目に見つかったので、F3となるのです。つまり、C/2020 F3という名前は「2020年3月下旬に3番目に見つかった彗星です」と言っているだけです。

note図2

彗星のすみか

大きく分けて3つあります。
1. エッジワース・カイパーベルト:火星と木星の間にある小惑星帯(メインベルト)と似ているのですが、こちらは海王星よりも外側、太陽から約50天文単位のところまで広がっている小惑星帯です。ここから来た彗星は周期200年未満の短周期彗星がほとんどです。
2. オールトの雲:実際に観測されたことはありませんが、長周期彗星の軌道を計算してみると、太陽から1万天文単位あるいは10万天文単位くらいのところに大量の小天体が球状に分布していることが分かりました。ここから飛んでくる彗星は周期が200年以上の長周期彗星がほとんどです。ネオワイズ彗星も周期が6,500年程度なので、長周期彗星に分類されます。
3. 太陽系外:昨年ボリゾフ彗星や(彗星ではありませんが)オウムアムアが太陽系外から飛んできた天体が話題となりました。これらは太陽系外から飛んできて再び太陽系を脱出してしまうので、周期という概念はありません。一期一会ですね。

note図3

彗星を観測して何が面白いの?

彗星や小惑星は約46億年前に太陽系ができた頃からほとんど姿が変わらない生きた化石」のような存在だと考えられています。これが今になって地球に飛んでくるということは、大昔の太陽系の試料を手にとるように観測することができる、非常に貴重なチャンスなのです。彗星の尾がいつ激しく噴出されたか、尾の中に含まれるチリのサイズはどれくらいか、などについて観測結果とコンピュータシミュレーションの計算結果を比較することにより、その彗星がどれくらいガスを含んでいたか、核はどれくらい脆いのかなどを見積もることができます。こうして彗星に関するデータが積み重なることで、太陽系ができた頃、太陽系内にはどの物質がどこにあったのか詳しく分析することができます。ただ、短周期の彗星は太陽に何度も近づいて、ガスやダストを噴出しているため、表面の物質がどんどん変わっていってしまいます。一方で、長周期の彗星は太陽に近づいた経験が少なく、表面の状態が比較的変化しにくいため、より生きた化石として素晴らしい標本だと言うことができます。

長周期彗星を探査せよ!Comet Interceptorミッション

上で述べた通り長周期彗星は非常に価値のある観測対象なのですが、長周期の彗星は今まで地球に近づいた経験が少ないことから、次にいつやってくるかを予測することができません。従って、長周期の彗星が見つかってから探査機を作っても、もう手遅れなのです。短周期彗星はロゼッタなどいくつかの探査機が実際に行ったことがあるのですが、長周期彗星は基本的に地球から望遠鏡を用いて観測するしかありません。しかし、長周期彗星にどうにか探査機を飛ばそうという試みがあります。それが、昨年2019年の夏に採択されたばかりのComet Interceptorコメットインターセプター)というミッションです。
長周期彗星を発見してから探査機を開発するのでは遅いので、とりあえず先に探査機を開発しておき、地球と太陽のラグランジュ点(L2)まで一旦探査機を持っていき、宇宙空間でしばらく待機します。そして面白そうな彗星が近づいてきたら、ラグランジュ点から探査機を目的の彗星に向かわせるのです。この探査機は2028年頃に打ち上げ予定ですので、今中学生・高校生くらいの方は大学生・大学院生になったときにちょうどこの探査機のデータ解析ができるかもしれません。最新の探査機の貴重なデータを自分の手で解析できる貴重なチャンスですよ!
Üdaiもこの探査機に搭載されるカメラの1つの設計チームに加わっています。ミッションが無事に進みますように……。

note図4



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