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「秘密を持ったクラスメイトに生きる勇気をもらう~『放課後、君は優しい嘘をつく。』~」【YA85】

『放課後、君は優しい嘘をつく。』 雨野 マサキ 著 (KADOKAWA)
                          2018.8.31読了

私が仕事現役の時、辞める直前までの図書館での担当がYA(ヤングアダルト)部門だったこともあり、YA棚に置く本の選書やテーマ展示、YA向けのイベント企画、職場体験などの担当、そしてYA本をお勧めするおたよりの発行を一人でやっていました。
(そういうお仕事に関する記事も今後書いていくかもしれません…)
 
おたよりに毎回おすすめ本の紹介記事を書くにあたり、実際に新刊本をはじめ埋もれがちな良い本を自分が読んでおもしろいと感じたり、子どもたちに読んで欲しいなと感じた本を選んでいました。

正直に言うと私が好きな本は、このnoteですでにご紹介しているYA本のような単行本なのですが、でも現実に子どもたちが好んで読んでいる本は、ライトノベル(ラノベ)本が今は主流です。

たまに、かつて人気があったケータイ小説(横書きの本で、多いのは恋とか愛する人との死別を扱ったものなど)なども読まれたりしていましたね。
 
だから大人の司書の好みばかりは載せられない、ということでたまにはラノベ本を取り上げることもありました。
人気のファンタジー(異世界ものや戦いのものなど)やBLもの、お姫様系はこちらが紹介しなくても勝手に読んでくれるので、そういう内容以外の本を紹介することにしました。

でもどうしても学校生活に密着したものが多くなってしまったのは仕方ないですけどね。
そんな中で実際に“YAおたより”に紹介したものの中で私でも割といいなと感じたラノベ本を取り上げたいと思います。

ある大規模な飛行機事故が起こり搭乗者のほとんどが亡くなってしまった中、奇跡的に助かった4人の子どもたち。
そのニュースは当時大々的にメディアなどにとりあげられました。
(※実際に似たようなシチュエイションの飛行機事故がありましたが、それとは全くの無関係でフィクションのお話です)
 
生き残った4人の子どもたちのひとり、古賀春一は丘の上に建つ白亜のお城のような家に住んでおり“王子”と人々から噂されていましたが、実はその事故で両親をなくし、自身も足に怪我を負い杖なしではうまく歩けないという悲惨な境遇になっていました。

そのため事故以来すっかり表に出ることがなくなってしまい、ずっと家に引きこもっているのです。
折しも高校に入学する年になりましたが、当然のことながら一度も学校には姿を見せていませんでした。
 

そんな中突然、彼のクラスメイトでクラス委員と名乗る樋口彩楓が、春一を下界に連れ出すべく春一の家・白亜の豪邸に直接乗り込んできたのです。
 
しかし肝心の春一は当然のことながらなかなか顔を見せず、代わりにこの家の乳母のツルさんと若い執事の藤野さんと話をするうちに意気投合。
そしてツルさんの作るお菓子とお茶をごちそうになりに、週2回放課後に春一のこの家に通うようになりました。

彩楓の決心は固く、春一が下界に降りるまでは絶対にこの豪邸に通うことを止めないと誓った彼女には、春一が学校に来るまでに秘密にしなければならないことがあったのです。
 
それがあかされた時、読者も自然と涙することに…。
 
 
白亜のお城のような邸宅に住む王子様はやはりイケメン(^^)という設定は王道です。
少女漫画のような設定ではありますが、最後はなるほどね、と納得のエンディングを迎えます。
彩楓の幼馴染の存在が、やや物語に変化をもたらしたのでもうちょっとからんでくると思ったのですが、意外とあっさりとした展開だったので、そこが少し物足りなかった部分ではあります。
 
 
事故で片足の自由が効かなくなったイケメンの卑屈になってしまった心、カチカチに凍ってしまった心を明るさで引っ張って柔らかく融かしていく…というよくあるパターンかな?と思ったのですが、この作品の本当に言いたいことは微妙に違っていました。
生きていく大切さを読者である子どもたちに訴えているのかもしれない…。
 
春一もただ卑屈になっているのではないし、彩楓もただ単に春一を引っ張り出そうとしているのではない。
彩楓のポジティブな考え方がどこから来るのか、それは最後まで読んでわかります。
本当に優しい気持ちになれる良質のラノベでした。


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