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「名前って大事、気の合う友達って大事ね!~『ビューティフル・ネーム』~」【YA70】

『ビューティフル・ネーム』 北森 ちえ 著 (国土社)
                          2018.7.14読了
 

かつてとっても大好きで夢中になっていたバリー・マニロウという歌手。
声もよくて歌も上手で、感動的な曲なんかサビとかすごく歌いあげちゃうのでずしんと心に響くのです。
 
今回紹介する“勝手に夏曲”は、『Can't Smile Without You』で日本題名は『涙色の微笑』です。


曲の内容はもう、めちゃくちゃ好きな女性に自分の愛を表現するもので、夏でもなんでもありません。
バリー・マニロウの夏曲と言えば、有名な代表曲『コパカバーナ』でしょ!とおっしゃる方が多いのでしょうが、ごめんなさい、本当に自分勝手なイメージだけでここでは夏曲を選んでいます。
 
この曲を聴くと、なぜだか不思議と夏の早朝のイメージが浮かんでしまうのです。
この曲のちょっと爽やかな感じがそう思わせてしまうのでしょうか。
いやいや、それは私だけの変な感覚なのでしょうね。すみません。

中学生の和田桃子は、クラスではいつもひとりぼっちで過ごしています。
 
小学校でのある事件から、親友と距離をおくようになり、そのまま他にも友達がそばにいない状況が続いていました。

だから中学校では、入学後うまくやって友達作りをするつもりだったのが、やっぱりというか案の定出遅れてしまっていました。
結局、周りからは「すみっこの人」と呼ばれていたのです。
 

ある日、廊下で夏休み期間に大学で開催される「わくわくサイエンス・プロジェクト」というイベントのポスターを何気なく見ていただけなのに、教師に勘違いされ勝手に申し込むよう押し切られてしまいました。
 
いよいよそのプロジェクトの初日、ちょっと変わった男子大学生と遭遇します。そして大学にある、とある銅像には名前がないことを教えられます。
 
さてプロジェクトにはかつての親友・咲季も、クラスの中心人物であるみどりといっしょに参加していました。
しかし桃子には、咲季はみどりのあとをただついてきているだけという印象を受けました。
 
 
彼女たち二人は、優秀で見た目も綺麗でものをはっきりという女子大学生の麗華が主導するラットの解剖実験に加わりました。
しかしそういう実験が苦手な桃子は、ついていくのが無理でした。
 
つらそうにしている桃子を先程の男子学生がかばってくれるのですが、麗華はそういう彼の性格と行為を非難します。
それでも結局その男子学生が、プロジェクトで桃子の担当を受け持つことになるのでした。
 
 
桃子たち二人は複数のラットに対して、手厚く面倒をみてあげるグループとそうではないグループに分け、その後の体調などを比較する実験を試みます。
「名前を持ったラットは幸せに生きられるのか?」がテーマなのです。
 
よく面倒を見る方のラットにそれぞれ名前をつける学生と桃子。
桃子は一匹に「クロキ」さんと(ちょっとおどろく男子学生…)、学生はもう一匹に「ピーチ」さんと名付けました。
 
そして、彼らはお互いのことも、本名ではなく考えついた呼び名で呼びあうことにしたのです。(そもそも未だお互いに本名を名乗っていない時点で、ちょっと無理があるようにも思うのですが、そこはあまり深く追求せず…(^^ゞ)

学生に「ブラック」さんと名付けた桃子。
そしてブラックさんは桃子に「レッド」さんと名付けてくれました。
 
 
大学の実験室に通うのが楽しくなった桃子。
実験も順調にいっていたある日、動物実験棟の中でサルモネラの感染症が発生し、すべての関係者が出入り禁止となってしまいました。
おまけにその中にいたラットは感染の疑いがあるため、処分されてしまうと聞かされた桃子。
 
最後にブラックさんとともに、ふたりは実験のことやラットたちのことを振り返ります。
やさしく慰めてくれるブラックさん。
しかし、その後はそのまま別れた二人でした。
 
 
そして夏休みがおわり、学校で体育祭が行われました。
借り物競走で最終走者に優勝の運命がかかっているところに、みどりが咲季に嫌なプレッシャーをかけていたのを目撃した桃子は、わだかまりがあったけどかつての親友でもあった咲季を助けるべく、最終走者の咲季と順番を替わってあげることにしました。
 
そして最終走者となった桃子がお題の紙をひろうと、「スーツのイケメンにお姫様だっこをしてもらってゴールせよ」などと書かれているのです。
あわててスーツを着た人を探していると、なんとブラックさんがそこにスーツを着て立っていて…。
 
 
久しぶりの再会を果たしたふたり。
あの名付けたラットや実験はどうなったのでしょうか。
ブラックさんはどうして桃子の学校までやってきたのでしょう…。


 
名前、それは一人に一つずつある。(ゴダイゴの名曲「ビューティフル・ネーム」の歌詞にも同じフレーズが…)
 
名前がキーポイントとなる、穏やかな風が吹くような青春小説でした。
 
物語はお姫様抱っこの一件では終わらず、その後の桃子とブラックさんの二人の関係の行方、そして咲季との友情復活もあります。
 

余談ですがここにも出てくるスクールカーストというのが、最近はよくあるパターンでいろんなYAもので見かけますね。

この本でも、どうしても自己主張の強い人の方が前へ前へ、先へ先へと進んでいける雰囲気や、嫌なことを弱いものに押し付けるという間違った権利、一旦絡まってしまった他人の関係を利用して、自分の都合のいいように事の成り行きと方向を決めてしまう人間の存在が描かれています。

もうそろそろそういう設定はなくてもいいのかなと私は思うのですが、悲しいかな世の中からそもそも無くなっていないし解決していない、子どもたちにとって大きな問題のままなのでしょうね。
 


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