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ショートショート集

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田丸雅智さんの「物語の発想法を学ぶ」講座で得たショートショートの書き方で書いたショートショートをまとめたマガジンです。 100〜1000文字程度のショートショートの世界を楽しんで…
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#小説

ショートショート「カラス部」

あー!あ、あー! あーあー、あー!あー! あー……あ!?か!かかぁ!くぅあ! あー!あ、あ、あー! 「なんだ、なんだ?  今日は偉くカラスが鳴いてるねぇ」 「それに、なんか多くない?ちょっと怖くない?」 「なんかの集まりかな?」 「集まり?カラスが?集まるの?まっさかぁ」 「ええ?でも、そう考えたほうが面白くない?」 「ナルシストだねぇ、きみは」 カラスの群れを見ながら 部活帰りの二人が帰っていく あー!あー!かぁ! かあ!あー、やっと人間帰った? 「帰った帰った!」

ショートショート「空飛ぶ3連カラスはじめてのコンビニ」

君は見たことがあるか! あの3つらガラスを 中崎町の夕暮れの空を飛ぶ 三羽連なって飛ぶあの、みつらガラスを! あのさんばは、決して 人間の施しを受けないのだ! たとい、目の前でパン屑を 撒かれても一瞥もくれず 樹木のムロをつつくのだ その姿にある種の高潔な精神を覚えた人々がつけた名が みつらガラスなのだ その、さんばが連なって空を飛ぶ姿を見たものは その高潔さに自然と深いお辞儀をしてしまうと言う そんなさんばだったが 昨今の異常気象により、餌のやりくりに苦戦する様

ショートショート「ジュリエットカフェ』

ロミオとジュリエット 誰もが一度は聞いたことのある シェイクスピアの4大悲劇の一つだ だが、その物語となると 詳しく話せる人はどれだけいるだろうか あー、ね!ロミオとジュリエット、ね! あれ、ね!うん!どうしてね!あなたはーね! ロミオなのー、てね!うん! ロミオとーね!ジュリね!エットね!うん! 悲しい話よねー こんなところだろう そんなふわっふわの人達を救うべく ロミオとジュリエットの ジュリエットになり、物語を追体験しながら 飲食が楽しめるのが ここ、ジュリエット

ショートショート「道に落ちていたタイムスリップ」

あれ、これ、どこかでみたような そうだ、子供の時に捨てたおもちゃだ 何でこんなところにあるんだろ 懐かしい でも、ほんとうに私のおもちゃなんだろうか 拾って、細部を見回す あ、あの時壊した部品だ これはあの時の自分のおもちゃだ でも、どうして あの時捨てたおもちゃが あの時捨てた夢がこんなところに あの時のまま落ちていたんだろうか ふっと目を閉じ 当時の想いにふける 周りから認められなかったあの頃 自分の夢を貫けなかったあの頃 思い出の中の自分が笑いながら泣いている

ショートショート「地球部」

母なる大地、地球 豊かな自然に恵まれ 生物が棲息出来るだけの環境を備えた 青い星、地球 私、寺田明日香は この地球への愛を人々に伝えるべく 地球部、クラブジアースを立ち上げたのだった 立ち上げたのだったのだが まだクラブジアースのメンバーは私一人だ この広い宇宙に たった一つの地球の寂しさに比べれば どうと言うことはない どうと言うことはないが 部活として認められるには 一学期中にメンバーを五人集めないといけない クラブジアースの活動は地球を愛すること その活動を広め

ショートショート「AIに教えられたこと」

教師不足が騒がれ始め 長きに渡り試行錯誤が繰り返されていた そんな中、AIを教師にした教育が 一つの成果を上げ始める 生徒達は、オンラインでも現実の教室でも 教育を受ける場所を選ばず 24時間、365日、自分の好きなタイミングで 最適なカリキュラムを受けられるようになった AIの見た目は、無機質なものだと あまりにも味気なくなってしまい 生徒達の集中力や、学習への愛着が湧かず 実際の人物を用意し オンラインではその人物のアバターを作成し AIによってリアルに動き、喋り

ショートショート「2人用酔っ払い二重人格」

人は酔う。 その為に酒を飲む。 極論と言われればそうだが 酔うことで、日常とは違う自分を曝け出すのだ。 そんな、お酒を楽しむ人々が 新たな酔い方をするお酒の噂を聞きつけた。 「酔うと一緒に飲んだ人と人格が入れ替わるお酒」 と言うものがどこかのおしゃれなバーで 提供されているというのだ。 原理はわからないが 人格が入れ替わって酔ってしまうお酒は 噂が噂を呼び 街のバーではそれが置いてあるか聞かれるのが お約束となっていた。 そして、ここ中崎町にある隠れ家的バーで それ

ショートショート「しゃべる失恋を英語で説明」

僕の失恋はよく喋る 初めて失恋が喋ったのは幼稚園の時 どこにでもある せんせーを好きになったってやつだ 子供心の憧れと好意が ないまぜになった思いを打ち上け 大きくなったらね、とやんわり回避されたその夜 初恋は失恋になり、僕の目の前で具現化した 具現化した失恋は、饒舌に失恋の原因、次への応用 今回の恋愛から得た教訓を説明してくれた 失恋の見た目は、失恋した相手の形をしている 話し方や声もその人そのもので 的確に僕のダメなところを指摘してくるので 失恋の悲しみよりも精神的ダ

ショートショート「立方体メガネ注意報」

「おはようございます!  本日、3月29日のメガネ予報の時間です!  今日のメガネは、九州から西日本にかけては  黒縁ときどきフレームレス  名古屋から東京は綺麗な丸メガネ  東北、北海道はお昼頃からベッコウメガネと  なっております。  レンズ曇り確率は、全国的に高く  メガネ拭きの手放せない1日になりそうです。  続きまして、警報注意報。  各地に、フレーム変形警報が出され  デリケートなメガネの  取り扱いが求められております  この警報に伴う、メガネ庁の記者会見が

ショートショート「火星から帰ってきた男」

有人火星探査 人類はついにそれを成し遂げた 悲願とも言えるその偉業を成し遂げた一団が 今地球へ帰還する 彼らが火星探査から旅立った日から 5年と4ヶ月 地球ではとんでもないことが起きていたのだ 「やぁ!隣人!ついに我らの星に辿り着くことが  できるようになったんだね!おかえり!」 そこには見るからに火星から来た と言った身なりの男が いた いや、正確には火星探査の時に話しかけられた男と 同じ格好の男がそこにいたのだ 「その顔は、なぜ我々が隣人の星にいるのかって  

ショートショート「ショートショート」

あの、失礼ですが、もう一度伺いますね? ショートショート、ですね? あ!いえ!聞き取れはしました! えーっとぉ、ベリーショートのことを ショートショートってお呼びに…… うん!はい!ですよね! ベリーショートとショートショートは!ね! ぜんっぜん違いますもんね! ねー!ですよねー! うんうんうん、ショートショートかぁ この辺かな? この辺をショートにしちゃう感じ?かな? こわいこわいこわい、なにその目! こわいよ!え?え?ショートショート、え? はい、分かってますよ

ショートショート「板チョコ10枚23%OFF」

途方に暮れる この言葉が頭をよぎったことはあるだろうか? わたし? ははは こんな質問をするくらいですから そう、今です 見てください、これ なにって? 板チョコですよ なにって? 1000枚の板チョコですよ 10枚で23%OFF 10枚を7.7枚の値段で買えるんですよ? まぁ、だからって、1000枚もポチったのは ミスでした 770枚の板チョコの値段って バカにならないんですよね そして、これからこの1000枚を消費しないと いけないんですよ ね?途方に暮れ

ショートショート「緑と強欲」

「じゃあ、今日は緑と強欲で」 「あいよ!緑と強欲!  そちらは?」 「うーん、前回が黒と情熱だったから  赤と情熱にしようかなぁ」 「あいよぉ!赤と情熱、入りました!」 「赤と情熱ぅ!ありがとうございます!」 人々の「感情」と「色彩感覚」が 自由に取り扱える時代 「その感情を想起させる」色を 提供できるようになっていた 「うん、やっぱり緑の穏やかさと  強欲のコントラストは心が躍るなぁ」 「あー、赤の情熱だなぁ  黒のフツフツっとした情熱もdesire感あって  好きだ

ショートショート「殺人サーブ」

「こちらです!よろしくお願いします!」 ここは暗殺者ギルド ここには名うての殺し屋たちがひしめいている そんな中で一番の名うて それは、どんな依頼も確実に適性のある仕事人に 依頼をサーブするこの人 受付の「メチヤ・メキキヨキネン」 「殺人サーブ」の二つ名を持つ人物だ メチヤの依頼書サーブの朝は早い まず、前日までの残った依頼書の確認だ 素早く目を通すと、適した仕事人に連絡を送る どうにも怪しい依頼はそっと奥の方にしまい 無駄な暗殺は行わないのだ ギルド開所 メチヤのサー