見出し画像

ショートショート「火星から帰ってきた男」

有人火星探査
人類はついにそれを成し遂げた

悲願とも言えるその偉業を成し遂げた一団が
今地球へ帰還する

彼らが火星探査から旅立った日から
5年と4ヶ月
地球ではとんでもないことが起きていたのだ

「やぁ!隣人!ついに我らの星に辿り着くことが
 できるようになったんだね!おかえり!」

そこには見るからに火星から来た
と言った身なりの男が
いた

いや、正確には火星探査の時に話しかけられた男と
同じ格好の男がそこにいたのだ

「その顔は、なぜ我々が隣人の星にいるのかって
 聞きたいと言った面持ちだねぇ
 うん、まずは我々が隣人と交わした約束について
 話すことにしよう」

遠い遠い昔。
地球人類と火星人類は接触していた
だが、その時の地球人類の科学力では
火星人類との交流はできても
星間航行は不可能だった

火星人類が自分達の科学力で
連れて行くことはできる
だがそれでは火星憲章に反する
そこで彼らは、当時の地球人類との間に
『自らの力で我が星に辿り着いた時
   交流を再開する』
と取り決めたのだった

「それで!君たちが我が星に降り立った
 2年と7ヶ月前!
 待ちきれなかった私は
 我が星からの地球人到着の
 報を受け取るや否や、4016年間あこがれ続けた
 地球に降り立ったのだよ!
 いやぁ、君たちが宇宙からも見える大きな絵を
 描いたのを見た祖先が聞いたら
 涙を流すだろうね!」

彼曰く
有人火星探査が現実味を帯びた15年と3ヶ月前
火星が送り込んでいた地球探査衛星が
その情報を送信すると、その日の火星は
地球人類の火星到着に沸いたと言う

「私の家には、4016年前の地球交流の証である
 我々を模した人形がありましてね
 それを見ては、いつかこの星に降り立つと
 父も祖父も曽祖父も語っていました
 その夢を!私が!と思ったらいても立っても!」

有人火星探査船が地球を飛び立った2ヶ月と1週間後
北極星の隣に、謎の光が観測され
その正体が彼の乗る宇宙船だった

「いえね!あなた方の科学力を侮っていたわけでは
 無かったのですが、まさか我らの船体隠蔽を
 見抜くほどになっていたとは思いもよらず
 地球の皆さんから交信が来た時は驚きました!
 ですが!地球には我々と対峙した時の資料や
 想定映像集が山ほどあるではありませんか!
 それらを参考に
 『我々は宇宙人だ』
 と、返答したんですよ!」

そこからの地球は大騒ぎだったらしい
何の要求もしてこない
こちらからの要求はのらりくらりと言い包める
ただ、ここで時を待つ
とだけ言う宇宙人と睨み続ける日々だったと言う

「その節は申し訳ない
 てっきり、こう言えば貴方達が対応しやすいと
 思っていましてね
 けれど、時が経つうちにお互い
 適切な距離が分かる様になりましてね!
 『我々の星へ、人を送ったな』
 と返答したら
 あれは攻撃ではない!人類の未来のためだ!
 と素晴らしい答えを返してくださいましてね!
 『では、その証拠を示してみろ』
 と伝えて、あなた方の火星到着を
 待ったのです!」

彼らが火星に降り立った2年と7ヶ月前
第二北極星と名付けられた彼の宇宙船が
突如、地球へ飛来
降りてきた彼は、地球に降り立つと
即座に友好関係を結ぶ特使として
地球に来たことを各国に通達

「地球に一番に降り立つ
 と言うわがままを言う私に
 本星が出した条件が
 地球との交流再開を平和的に
 進める特使としての役目を担わせたのです!」

地球のあらゆる国に
あらゆる言語に対応して送られた通信は初め
どこかの映画会社が
第二北極星を使ったプロモーションだと思われ
彼もどこかの俳優と疑われた

「あなた方の言葉は、宇宙で待機している時に
 学んでいましたからね!
 しかし、それが裏目に出るとは
 思いませんでした!」

各国代表者、及び火星対策連邦共和国代表者が
彼と、彼の宇宙船に接触
代表者側が地球が
敵意を持っていないことを告げると
彼も、火星に到着した探査団から
その話しを聞かされ
歓迎していると話す

「そして!君たちが帰ってくるまでの間!
 存分に地球を調査していたのだ!
 まぁ、観光という方が正確かな
 さぁ!火星から帰ってきた隣人!
 次は我々の宇宙船で火星は招待しよう!
 片道、2日と37分の旅路だ!」

火星から帰ってきた男達は
休み暇もなく、再び火星へと赴く
2年と7ヶ月の道のりを
2日と37分の速さで


お題提供:要小飴さん
Twitter
note

あなたの「スキ」が何よりのサポートです。 ここまで読んでいただきありがとうございます。