ショートショート「道に落ちていたタイムスリップ」
あれ、これ、どこかでみたような
そうだ、子供の時に捨てたおもちゃだ
何でこんなところにあるんだろ
懐かしい
でも、ほんとうに私のおもちゃなんだろうか
拾って、細部を見回す
あ、あの時壊した部品だ
これはあの時の自分のおもちゃだ
でも、どうして
あの時捨てたおもちゃが
あの時捨てた夢がこんなところに
あの時のまま落ちていたんだろうか
ふっと目を閉じ
当時の想いにふける
周りから認められなかったあの頃
自分の夢を貫けなかったあの頃
思い出の中の自分が笑いながら泣いている
あぁ、そうだった
私はあの日から諦め方を覚えたのだ
笑い泣く自分に手を伸ばす
あの時の自分に一言でもいい
「捨てるな」って言いたかったのだ
届くわけが無い
届くわけなどない
そう思ったとき、自分の肩に触れた
「捨てるな!」
目の前が真っ白に染まる
次の瞬間、おもちゃは消えていた
けれど、あの頃捨てた夢が
私の中に息づいている
あれは、何だったのだろう
まるでタイムマシンが道端に落ちていたような
そんなことがあるわけが無いか
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