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ヘドロの創作

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フィクションの創作です。
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2024年12月の記事一覧

ヘドロの創作 2024/12/29

ヘドロの創作 2024/12/29

 【猫の喫茶店】

 エノコロ小路もすっかり歳末ムードである。街にはレコード屋の鍵しっぽの黒猫が選んだ指揮と演奏の第九が流れ、浮かれた印象である。
 テレビも特番ばかりになり、街はクリスマスを過ぎてすっかり年末! という感じである。
 マスターも昨晩、明日はやっと仕事納めだ……と思いながら布団に潜り込んだ。そして商店街の福引きで、一等のハワイ旅行を引き当てる夢をみた。
 夢のなかでマスターは、寒い

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ヘドロの創作 2024/12/22

ヘドロの創作 2024/12/22

 【猫の喫茶店】

 猫世界もクリスマス目前である。
 マスターも子猫時代の、クリスマスの楽しい思い出というのはいくつかある。たとえばモノゴコロついて、なにかゲームやパソコンなどすごいものが欲しいな、と思っていたらプレゼントはマグカップで、たいへん落胆したこととか。
 なぜこれが楽しい思い出なのかは後で述べるとして、マタタビ市はクリスマスですっかり浮かれていた。サンタクロースの仮装をした猫やらカッ

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ヘドロの創作 2024/12/15

ヘドロの創作 2024/12/15

 【猫の喫茶店】

 きょうは猫世界大河ドラマ「経典とネズミ」の最終回の日だ。
 この「猫世界大河ドラマ」というのは、人間がえねっちけーなる放送局の番組として見ている「大河ドラマ」というものを猫世界で真似したもので、基本的に歴史に題材をとったドラマを1年間放送するものだ。
 しかし脚本家もキャストもスタッフも全員猫であるため毎年猫のお腹のように少々中だるみするのがお約束のドラマ枠である。猫なので。

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ヘドロの創作 2024/12/8

ヘドロの創作 2024/12/8

 【猫の喫茶店】

 マタタビ市はすっかり冬になってきた。冷たい空っ風がぴーぷー吹き付ける。喫茶「灰猫」を取り囲んでいるつたが風でぴろぴろ揺れる。すっかり冬だ、なんというかとてもとても気が滅入るなあ、と「灰猫」のマスターは思った。
 これでは「タージ・ミャハル」の大将はさぞかし参っているのだろうな、と様子を見にいくと、フリースやらダウンやらでモコモコに着膨れながら仕事をしていた。
 マスターが「灰

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ヘドロの創作 2024/12/1

ヘドロの創作 2024/12/1

 【猫の喫茶店】

 12月になった。
 マタタビ市はすっかりクリスマスムードだ。スーパーマーケットではケーキやごちそうの予約チラシが配られ、みんなまだ先だというのにクリスマスクリスマスと騒いでいる。街をあるけば讃美歌・ジャズ・ポップス問わずクリスマスソングが鳴っていないところはないという感じである。
 そもそもマタタビ市においてクリスマスは「人間の家に帰ると人間がチキンを分けてくれるめでたい日」

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