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ヘドロの創作

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フィクションの創作です。
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2024年11月の記事一覧

ヘドロの創作 2024/11/24

ヘドロの創作 2024/11/24

 【猫の喫茶店】

 マスターは仕事が昼の仕事がひと段落して、昼ごはんを食べた後一休みしてマタタビキャンディをなめよう、とポケットに手を突っ込んだ。
 ……なにかがポケットでひっかかっている。なんだ? 飴玉なんか入れたから引っかかったのか? 引っかかっているものをマスターは無理やり引っ張り出した。
 引っかかっていたのはスマホであった。バッテリーのところがパンッパンに膨らんでいて、百均の手帳型ケー

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ヘドロの創作 2024/11/17

ヘドロの創作 2024/11/17

 【猫の喫茶店】

 マタタビ市にも外国猫観光客がずいぶんと増えた。マスターは店の窓の外を歩いていく外国猫観光客をぼんやり観ながらコーヒーを淹れていた。
 外国猫観光客は明らかに地猫であるマスターたちとは違う見た目をしている。異様に大きくてもふもふだったり、独特のマーブル模様だったり、手足が短かったり、耳が折れていたりする。最近ではマタタビ市の猫にもそういう容姿の猫はいるが、それでもマスターのよう

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ヘドロの創作 2024/11/10

ヘドロの創作 2024/11/10

 【猫の喫茶店】

 喫茶「灰猫」のマスターはネットショッピングというのをやったことがない。マスターは初老と中年の中間くらいの歳だが、いままでネットショッピングで「これが欲しい」と思う品物を見たことがなかった。
 だがある日、なんとなくスマホでニュースサイトを眺めていたら、とても素敵なコーヒーカップとソーサーのセットが激安、という広告を見てしまった。激安ということはもしかしたら粗悪品では、とも思っ

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ヘドロの創作 2024/11/3

ヘドロの創作 2024/11/3

 【猫の喫茶店】

 喫茶「灰猫」にすごいお客がきた。今をときめく大文豪、ソーセキ氏である。
 ソーセキ氏は喫茶「灰猫」の隣にある出版社まで出向いたついでに、灰猫でナポリタンをすすり、コーヒーを飲み、たいへん満足して帰っていった。ちょっとミーハーなところのあるマスターは、色紙にサインをお願いし、いただいたサインを壁に飾った。

 それを見ていた何人かの常連が、ソーセキ氏はまたくるのか、とマスターに

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