見出し画像

ぺっぺbooks of the year 2023

今年ももう終わりますね。
2023年は年明け早々にコロナに罹患するところから始まりました。
ところがこのコロナくんが全然しんどくなくて、毎日退屈だったので家にある積読本全部読むチャレンジを始めたところ、久々の読書熱でコロナよりも熱くなってしまい、一年間読み続けて今に至ります。
もう少し読めるかなと思ってましたが、結果的に一年で50冊ちょっと読めたので、その中で面白かった本を備忘録も兼ねてご紹介します。ちなみに私は備忘録を忘備録と書く人間を親の仇のように嫌っています。気をつけたまえ。
ザクっとジャンルごとに分けて紹介しますが、掲載順番は順位ではないので悪しからず。また2023年刊行以外のものも多いので注意ください。


・純文学

今まであまり読んでこず、避けてきたジャンルで、実際自分の中で作品によって好き嫌いがはっきり分かれるし、読むのに体力がいるけど、その分ここに載せる2冊は強烈に良かった。

①ここはとても速い川/井戸川射子

関西弁で、ほとんど改行なく進む、少年の感情そのままの文章。刺さる人にはかなり突き刺さる。改行なく読みづらいかと思いきやなぜか意外と入ってくる。短いけどすごく揺さぶられた作品。

あらすじ
児童養護施設に住む、小学五年生の集。
一緒に暮らす年下の親友ひじりと、近所を流れる淀川へ亀を見に行くのが楽しみだ。
繊細な言葉で子どもたちの目に映る景色をそのままに描く表題作と、
詩人である著者の小説第一作「膨張」を収録。
選考委員の絶賛を呼び、史上初の満場一致で選ばれた、第43回野間文芸新人賞受賞作。


②わたくし率 イン 歯ー、または世界/川上未映子


凄まじいエネルギーを持った作品。後半に数ページにわたって罵倒する場面があるのだけど、その場面の勢いとはずっと脳にこびりついている。すごい。

あらすじ
私は奥歯や、わたくし率はぱんぱんで奥歯にとじこめられておる!!
著者第1小説集芥川賞候補、坪内逍遙大賞奨励賞
人はいったい体のどこで考えているのか。それは脳、ではなく歯――人並みはずれて健康な奥歯、であると決めた<わたし>は、歯科助手に転職し、恋人の青木を想い、まだ見ぬ我が子にむけ日記を綴る。哲学的テーマをリズミカルな独創的文体で描き、芥川賞候補となった表題作ほか1編を収録。著者初の小説集。

・ミステリー

今年一番読んだジャンル。いわゆるどんでん返しを読むことが多かったので、来年はもう久しぶりにクライムサスペンスとか社会派ミステリーみたいな重いやつ読みたいな。今年ハサミ男も読んで面白かったけど、みんな知ってると思ったので今回は外しました。

①鵼の碑/京極夏彦

2023年最大の事件はこれが発売されたこと。百鬼夜行シリーズ17年ぶりの新作。"節"炸裂で最高だった。ぜひ、1作目から読んでみてください。数年溶けます。

あらすじ
殺人の記憶を持つ娘に惑う作家。消えた3つの他殺体を追う刑事、失踪者を追い求める探偵…。発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は、縺れ合いキメラの如き様相を示す“化け物の幽霊”を祓えるか。

②悪いものが、来ませんように/芦沢央


2023年、一番読んだ芦沢央。イヤミスの名手だが、それだけじゃない。これは本当に面白かった。ネタバレしたくないのでとりあえず読んでみてほしいです。「震えるような読後感!」、確かに。

あらすじ
ボランティア仲間の輪に入れない、子育て中の奈津子。助産院の事務をしながら、不妊と夫の不実に悩む紗英。2人の異常なまでの密着が運命を歪に変えてゆく。そして紗英の夫が殺されて見つかった…。

③方舟/夕木春央

設定とラストが秀逸なミステリー。クローズドサークルの設定、こういうのもありなんだなと(あらすじ参照)。ラストはかなり呆然としました。もう少しキャラに個性あればもっと良かったなと思いましたが十分面白いです。

あらすじ
地震によって山奥の地下建築に閉じ込められた柊一たち。水が流入しはじめ、地下建築の水没までおよそ1週間。地下建築から脱出するためには、9人のうち誰か1人を犠牲にしなければならない。そんななか、殺人事件が起こり…。

④儚い羊たちの祝宴/米澤穂信

友人に勧められて読んだ短編集。クソ面白かった。時代設定や雰囲気も大好きだし、ミステリーとしてもめちゃいい。本当に好みだった。4作目「玉野五十鈴の誉れ」が特に好き。

あらすじ
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。

・恋愛

綺麗な恋愛ものをそこまで自分から読みにいかないので話題のやつしか読めてないですが、話題作は強烈に面白かったですね。

①光のとこにいてね/一穂ミチ

とにかく美しくて儚い話。第一章終わりでもう泣きそうだった。個人的に、年間読んだ本の中でもトップ3に入るくらい大好き。本屋大賞受賞でいいよ。令和の今だからこそ、生まれ、受け入れられた作品かもしれない。

あらすじ
古びた団地の片隅で出会った結珠と果遠。ふたりは何もかもが違った。着るものも食べる物も住む世界も−。ひとつの愛に惑うふたりの四半世紀の物語。

②汝、星の如く/凪良ゆう

上記「光のとこにいてね」を読んで「本屋大賞だろ!こんなもん越えれるわけねえ!!」と喚いていたのだが、受賞作のこれ読んで「グググ・・・」となった。これも凄まじく良かった。こっちは、美しくて儚くて、痛くて辛い。

あらすじ
【本屋大賞(2023年)】【高校生直木賞(第10回)】
瀬戸内の島に育った高校生の暁海と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していき…。

③私が語りはじめた彼は/三浦しをん

異性にだらしない系の小説超好きなんですが、これはがっつりそれ。件の浮気男村上はほとんど登場せず、それに振り回される周りの人間にスポットを当てる。コミカルとシリアスがいい塩梅で読みやすい。そして三浦しをんの文章力。

あらすじ
私は、彼の何を知っているというのか?彼は私に何を求めていたのだろう?大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘—それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。だが、それは愛というようなものだったのか…。「私」は、彼の中に何を見ていたのか。迷える男女の人恋しい孤独をみつめて、恋愛関係、家族関係の危うさをあぶりだす、著者会心の連作長編。

・ホラー

僕ホラー大好き。読む前に一番ワクワクする。映像のホラーも好きだけど文章で表現されるジャパニーズホラーが大好き。

①をんごく/北沢陶

ジャンルを分けるならホラーになるとは思うけど、ミステリーとしても、SFとしても、恋愛ものとしても秀逸。エリマキがかっこよくて好きだ。
あと大阪市中央区の地名が死ぬほど出てきて楽しいぞ。でも得意先のこととか思い出しちゃって少し悲しくなるぞ。

あらすじ
【横溝正史ミステリ&ホラー大賞大賞(第43回)】【横溝正史ミステリ&ホラー大賞読者賞(第43回)】【横溝正史ミステリ&ホラー大賞カクヨム賞(第43回)】
大正時代末期、画家の壮一郎は妻・倭子の死を受け入れられずにいた。巫女に降霊を頼むと「普通の霊とは違う」と警告を受ける。倭子の霊について探る壮一郎は、死を自覚していない霊を喰う「エリマキ」と出会い…。

②近畿地方のある場所について/背筋

カクヨムでバズった作品の書籍化。
23年、間違いなく最恐。フェイクドキュメンタリーホラーの最高傑作だと思う。付録に収録される、性格の悪い写真資料が最高。読んでください。見つけてくださってありがとうございます。

あらすじ
近畿地方のある場所にまつわる怪談を集めるうちに、恐ろしい事実が浮かび上がってきました。

③火のないところに煙は/芦沢央

芦沢央、2作目のランクイン。こちらも秀逸なフェイクドキュメンタリー。本作に絡んで秀逸なweb仕掛けや裏表紙ギミックもありよく練られてる。「染み」がめっちゃ怖いです。

あらすじ
【静岡書店大賞小説部門(第7回)】
作家の「私」は、突然「神楽坂を舞台にした怪談」を依頼され、驚愕する。心に封印し続けた悲劇は、まさにその地で起こったのだ。私は迷いつつも、事件を小説として発表することで情報を集めようとするが…。

・詩集・歌集

詩はいいぞ、短歌はいいぞ。読むのに時間かからないから、現代に一番合ってる読み物かもしれないね。

①ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集/斉藤倫

ずっと探してた一冊。詩を少年にすすめることを通じて少しづつわかる二人の関係。詩だけじゃなく、ストーリーもちょっと切なくていい。買って良かったオブザイヤー。

あらすじ
きみはいつものように、あけっぱなしの玄関から、どんどんぼくの部屋にあがりこみ、ランドセルをおろしながらこういった。「せんせいが、おまえは本を読めっていうんだ。ことばがなってないから」。ぼくは一冊の詩集をきみに手渡す。「ここんとこ、読んでみな」。詩は、おもしろい。そして、詩はことばを自由にし、ことばはわたしたちを自由にする。20篇の詩を通して、詩人斉藤倫と楽しみ、考える、詩のことそしてことばのこと。

②水上バス浅草行き/岡本真帆

今一番好きな短歌作家まほぴ。生活を切り取るセンスが抜群。
平日の明るいうちからビール飲む ごらんよビールこれが夏だよ
↑これを座右の銘として生きていきたい。

あらすじ
現場から病院までの犬という犬を吠えさせてゆく救急車 この街はどこも消毒済みだから手書きの誤字がとてもうれしい 水上の乗り物からは手を振っていい気がしちゃうのはなぜだろう 第1歌集。

【収録短歌より3首】
ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし
3、2、1ぱちんで全部忘れるよって今のは説明だから泣くなよ
平日の明るいうちからビール飲む ごらんよビールこれが夏だよ

・ノンフィクション


①北関東「移民」アンダーグラウンド ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪/安田峰俊

文句なく、2023年一番面白かった作品。知らない世界ではあるけど、職業的に他人事ではいられない。ノンフィクションものへの熱が高まったきっかけになった一冊なので本当に感謝している。

あらすじ
ベトナムから来日した技能実習生だったが、職場から逃亡し北関東「移民」アンダーグラウンドの住人となった自称「ボドイ(兵士)」たち。不法滞在、窃盗、殺人…。彼らによる事件現場を訪ね歩く体当たり潜入ルポ。

②母という呪縛 娘という牢獄/齊藤彩

超毒親。超ヒス親。誰でもこの結末に行き着くのではないかと思える絶望感。自分の環境に感謝した。人によっちゃかなりきついと思います。いいノンフィクションでした。

あらすじ
「医学部9浪」の娘はなぜ母を刺殺したのか−。司法記者出身のライターが、獄中の娘と交わした膨大な量の往復書簡をもとにつづる、「学歴信仰」に囚われた人たち、そしてすべての母と娘に贈るノンフィクション。

・最後に

12/29現在、23年は53冊の本を読んだみたい。今読んでる本が重めのノンフィクションなんで、多分この数字でフィニッシュするかなと予想してる。
読書習慣、子供の時以来のペースに戻して毎日豊かになって気がします。来年も続けたい。

今年の読書記録

一応、個人的にもっとも面白かった3冊は、
北関東「移民」アンダーグラウンド ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪/安田峰俊
近畿地方のある場所について/背筋
光のとこにいてね/一穂ミチ
次点:汝、星の如く/凪良ゆう
です。ここに載せたのは全部面白かったけどね。

皆さんの今年一番好きだった本はなんですか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?