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99匹のうちの1匹

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2022年8月の記事一覧

20.書き尽くした先を見据えて

20.書き尽くした先を見据えて

 99匹のうちの1匹

すべてを生み出した先の、 無 に向かっている。

私たちの生活に意味を考えて、意味見つけられないまま死んでいきたい。
そう僕は言ったけど、本当に彼は同意してくれるだろうか。否定、ということに恐怖を感じるのは、僕が詩人ではないことの証明のような気がすると、縛られている。縛られた先の機械音は僕の知らない音。

ずっと、緑色の海で泳いでいたかった。
僕はカナヅチ。遥か先を考えたっ

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21.飽和水溶液の気泡の中で

21.飽和水溶液の気泡の中で

 99匹のうちの1匹

縋っている。

そこかしこに浮遊している空気に、足場を求めている。
私は青い光の照らす先にいて、他人のそれを側から眺めながら、また違う他人に側から眺められている。

絡まった蛸足みたいに水に溺れて、
ニルヴァーナの赤ちゃんみたいに優雅だった。

覚えたての明日に祈りながら、
美化された過去を疎む。
バスタブに残る血液がまだ固まって、ドロりと沈み浮かんでいる。
排水溝に吸い込

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22.こっちは、もう夏が終わるよ。

22.こっちは、もう夏が終わるよ。

 99匹のうちの1匹

夏の終わりの気だるさ。
突き進んだ時は一瞬で、その先の揺れる道を見る。霞む視界の先には、明日の詰め放題のような明日を覚えた。

扉の向こう。

物語の先の。

熱を帯びたカラダを、周りの熱気のせいにして、余韻に浸りたい。それはまるで憚られるような、人。人。人。。
早熟を持て余すだけの人生を、見ていたくないだけ。試験管の隅であぐらをかいて冬を待つ。夏眠がなかった、特別な“夏”

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