日記:世界は「行き止まりではない」。柳美里さんのブックカフェ
私は、本は背表紙(もしくは表紙)が見えていないと意味がないなーと考えてます。特に電子書籍が普及してからは、紙の本の存在価値はまさにそこにあると考えていて、なので自宅に「壁一面の本棚」を手に入れた時は感無量でした。その感覚を追認してくれるような言葉に出会い、場所を知り、嬉しくてご紹介。
ポリタスTV。柳美里さんが南相馬市で営むブックカフェ「フルハウス」取材回を視聴しました。一言で言えば「フルハウス」、家のすぐそばにほしいです。
※文末に動画をリンクしています。(津田さん、取材・配信ありがとうございます)
「出会える相手」のいる本屋
詳しくは動画見ていただくのがベストです。ざっとお伝えすると、ご友人の作家さんがテーマを持って選んだ本があったり、本の配置をジャンル分けにしていなかったり。カフェは注文しなくても図書館的に過ごせるそうで、ふらりと日常的に利用できるのがありがたい。また、柳さんの以下の言葉も嬉しいです。
新刊がどんどん入れ替わる本屋、つまり本が「商品」で客は「消費者」の本屋ではなく、本の本来の役割である「出会い」のある本屋。「柳さんの選んだ本」という、「出会える相手」のある本屋です。
高校生の、電車待ちの本屋
特に、南相馬市に開校した技術高校の学生さんが電車待ちに使うというお話には、「私の高校の帰り道にもほしかった」と心底思います。電車一本逃してもブックカフェがあるなんて、そんな高校時代、よくないですか?私なら、わざわざ電車を逃します。柳さんは、「意外と高校生が、『え!』、ていう本をとっていく」とも語っています。
このカフェがきっかけで本を読み始めた高校生さんや、お父さんのお小遣いと半々で4500円の本を購入した中学生さんのお話には胸が熱くなりました。
世界は「行き止まりではない」
柳さんが「ビジュアル的に」と語ったように、そして私が冒頭で持論をお話させていただいたように。本は、もちろん読むためのものではありますが、それだけでなく背表紙がずらりと並んでいる姿は、世界が一つではないということを、光景として見せてくれているんですよね。私は、そのビジュアル効果はとても大きいと思います。それを明確に語ってくれていたのが嬉しかったです。
実は本だけでなくて、まいにち見る風景のどんな小さな一つにも大きな世界が広がっていると私は思います。私たちが見ている世界は、いろんな世界の入り口の集まりだと思っています。なので、柳さんの「行き止まりではない」という言葉は、当たり前のようにある日常の、けれども大切な可能性を表現してくれた言葉だと思いました。
いつもの変わらない街、スペースには限りのある本屋。けれどそこにはたくさんの「扉」があり、その「扉」は比喩ではなく、本当に扉の「その先」がある。本の中にはたくさんの世界があるということはよく語られますが、それは例え話ではなく、本当にその先があるんだ、と柳さんのブックカフェからは感じられました。多くの人にとって大きな励ましになる言葉であり、場所だと感じました。
ミニシアター
この投稿ではカバーしていませんが、この「フルハウス」に併設して水道屋さんの倉庫を改修したミニシアターを企画しています。本屋があり、さらに劇場って、うーん…さらに羨ましい。改修とはいえしっかりミニシアターとして機能する空間を作るのは大変なコストで、クラウドファンデング中(2022/4/27まで)。動画では改修中の空間を見られます。見るだけでワクワクするので、ご興味「ない」方もぜひ。
雑記:はっさくが美味しい日々です/公園の緑はさらに濃い/今日も早く帰れたのですが、早く寝ないとまた寝不足に/タイトル画は、ずいぶんむかしに私がアクリルガッシュ習作として描いたものです。お恥ずかい気持ちもあるのですが「あ、内容と合ってるなー」と、その誘惑に勝てなかった
(日記:2022年4月20日)
※柳さんミニシアタークラウドファンディング中(2022/4/27まで)
※【ポリタスTV】毎週月〜金曜、午後7時よりジャーナリストの津田大介さんが配信。次回放送日19時までは見逃し配信。それ以降は有料アーカイブサービスにて視聴できます。ご紹介動画は無料でも見られますが、アーカイブプランの登録メンバーも募集中。ぜひ。
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