夜、空港、道標

夜の空港が好きだ。

暗闇の中に光る飛行機のランプ、滑走路のライト。
どこか物憂げな乗客の前に広がる電光掲示板。

21:30、ハノイ。
21:45、ドーハ。
22:00、パリ。
22:30、北京・・・・・。

夜の空港の中でも、行き先の電光掲示板が特に好きだ。
自分の知らない街、知っている街、、、。

この空港が、この飛行機が、こんなにも世界中と繋がっていると思うとワクワクする。

今回自分が乗れる飛行機は1つ。行き先も1つだ。
「それ以外」にこんなに選択肢があると思うと不思議な気分になる。

今から自分はこの日本という国から飛び出して、「外」へ出かける。
国内から海外へ。立派に「行って」いるわけだ。

でも。

電光掲示板を前にすると、自然とさびしさが湧いてくる。

私はどこにも行けないんだ、って。

22:45、ドバイ。
23:00、ソウル。
23:15、台湾・・・・・・。

こんなにも選択肢が広がっているのに、私はその中の1つにしか行けない。

さびしい。

それでも私は夜の空港、とりわけ電光掲示板が好きなんだ。

どこにも行けない夜、そしてどこかに飛び立つ朝——。

さびしさからワクワクへ、その心の変化を受け止めてくれる気がするから。

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