自分を捨てるということは
昔の私には鉄の"自分ルール"があった。
・タバコは吸わない
・アニメは見ない
・マンガは読まない(大好きな作品を除く)
・TVは見ない
・SNSはTwitter以外使わない
・ゲームは持たない
・・・などなど。
こうしてみると、随分と「きゅうくつな」人間に見える。
(実際そうだったのかもしれない)
誤解のないように言うと、私は何も「娯楽が嫌い」なわけじゃない。
むしろ娯楽は大好きだ。
お酒は週8で飲んでる気がするし(気のせいだ)、
旅行は国内外どこでも行くし、
友達に誘われれば飛んでいく。
ただ、自分が「やる」ことと「やらない」ことを明確に線引きしていた。
どんなにお酒は飲んでもタバコは吸わない
(友達の誘いだとしても、だ)
友達の家でゲームはしても、自分では買わない
そもそもTVは家に置かない(今も持っていない)
好きなことに全振りしたいから、あえて「しない」ことを決めていたのだ。
——正直に言えば、、、そんな自分に酔っていた。
「明確に白黒つけられる」自分、カッコいいな、って。
(実際、「自分を持ってるね」と褒めてくれる友達もいた)
なので、「私といえば」というイメージとして、「アニメとか漫画とか読まないキャラ」というイメージがついていたのだ。
なので、とあるアニメ作品を見たと話したときに、友達は大層驚いていた。
「へええ、お前ってアニメとか見ないヤツだと思ってた!」
(その作品は小学生の頃に見ていたアニメで、今でも時々見ているのだ。実は。——ガンダムだ!!!)
このような「鉄の自分ルール」で身を固めていた時代が、私にはあった。
◆◆◆
実は私にはもう1つ、「鉄の自分ルール」がある。
「遊びの誘いは断らない」だ。
「今週末空いてる?飲み行こうぜ?」
「今度バーベキューしようよ!」
「ボーリング行くんだけど、人数足りなくて」
誘われたものは、先約がない限り断らない。
(断らないせいで予定がパンパンになり、結果断ることもあるが。。)
せっかく「私」という人間を誘ってくれているのだから、(それが頭数稼ぎだとしても)その誘いをリスペクトしたいからだ。
そんな私に、変化が起きた。
「誘いを断らない」ルールに従っているうちに、どんどん「新たなジャンルの」誘いを受けるようになった。
「今度ゴルフ行こうよ!」
「スキューバダイビングってやったことある?」
「キャンプ行かない?」
これまでの私だったら絶対やらないようなジャンルばかりだ。
正直気乗りしないものもあった(——ゴルフだ!)
でも、「ええい!マイルールに従うのみ!」と身を乗り出してみたのだ。
——楽しいじゃないか!
ゴルフも、スキューバダイビングも、ハイキングも!
いざやってみると面白い!!!
そして私はもう一つのことに気づいた。
いつの間にか、アニメもマンガも読んでるじゃん。自分。
相変わらずタバコとTVは無縁だけど、アニメやマンガを割と積極的に摂取するようになっていた。
そのおかげで毎日の楽しみも増えたし、友達との話題にもなった。
いつの間にか私は「新しい私」になっていたのだ。
◆◆◆
と同時に思うこともある。
「"自分"を捨ててしまったな」、と。
昔は確固たる「自分」を持っていたのに。
いつの間にか「自分」と「他者」の境界が曖昧になっていた。
確かに「新しい自分」にはなったけど、それは同時に「昔の自分」を捨てたことにはならないか?
それは別に悪いことじゃない。
悪いことじゃないまでも、なんだか寂しいような気がした。
おれ、どこ行っちゃったんだ、と。
◆◆◆
それでも思うのである。
私はいつだって"今"の自分が好きだ。
学生の頃の自分は、その当時の"今"を全力で生きていたし、
社会人の私は、相変わらず"今"を全力で生きている。
昔の「自分」には昔の"今"があっただろうし、
今の「自分」には今の"今"がある。
だから。
昔の自分を捨てたこと、そして新しい自分と出会ったこと。
それは自分にとって、新しく生きるべき"今"との出会いなんだ。
いつかその「新しい自分」を捨てる時が来たのなら。
私は彼に手を振ろう。精一杯の笑顔で。
◆◆◆
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