すき間亭日記 民話「ねば坂」
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昔の話じゃ。
ある日の事だ。
親戚の家で、集まり事があってな。
家のばあさんが、朝早くから手伝いに行ったそうじゃ。
親戚の家に着くとな、石臼をゴロンゴロン、ゴロゴロ、ゴロンゴロン、ゴロゴロと引いて蕎麦粉ができるとな。
料理のうまかった、ばあさんは。
とっても、うんまい蕎麦っこを、たんと打ったそうじゃ。
ばあさんの、打った蕎麦は、たいそう評判がよくてな。
集まったもんたちも、これは、うんまい蕎麦だと言って。
一杯食っただけじゃ、たんねえと言ってな。
もっとくれ、もっとくれと言って、げっぷが出るほど、うんまい蕎麦をたんと食ったそうじゃ・・・。
手伝いも終わって、ばあさんたちも、蕎麦っこを食べおわると。
その頃にはもう、日も暮れて夜になっていたそうじゃ。
ばあさんは、足を挫いて家で待っている、じいさんの分の、うんまい蕎麦を土産にもらい家路についたんじゃ。
しかし、昔の事じゃで。
外に出ると辺りは真っ暗で、空には、たよりなげな三日月さんが、ぼぅーっと浮かんでいるだけじゃった。
だから、ばあさんは、少し心細かったけんど。
まあ、家は、それほど遠くもねえから、何事も、なかんべと思って家路を急いだんだ。
ばあさんが、じいさんの分の、風呂敷に包んだうんまい蕎麦を持って、暗い道を歩いていると。
ねば坂の所に、差し掛かったんだ。
ねば坂とはな、ちょうど坂の真ん中あたりに、粘土がとれる場所があってな。
だから、ねば坂と呼ばれていたんだ。
ちょうど、そのねば坂の所を、ばあさんが通りかがると。
どうしたものか、ばあさんの持っている風呂敷包みが、急に重たくなってしまったんだ。
ばあさんが、いくら足を前に出そうと思っても、風呂敷包みが重くて重くて、体がギュット固まってしまってどうしても動かせなくなってしまった。
突然の事に、驚いてしまった、ばあさんは。
額から、脂汗がダラダラと垂れてきたんだ。
そして、「あー、おっかねー、おっかねー」と思ったんだと。
それで仕方なく、手に持っていた風呂敷包みを、ぱっと手から離したんだ。
すると、どうした事か、急に体が軽くなって足が動くようになったんだ。
だから、ばあさんは、風呂敷包みを、ねば坂に置いたまんま逃げるようにして、じいさんの待つ家に帰って来たんだ。
ばあさんが、顔を真っ青にして慌てて帰って来たもんだから。
じいさんは、おったまげたそうだが。
ばあさんの、話を聴いて。
「そりゃあ、きっと、ばあさんの、うんまい蕎麦が食べたかったムジナかタヌキに化かされたんだべ」
と言ったんだそうじゃ。
まだ、動物たちと人との距離が、今よりも、もっともっと近かった時代の話じゃ・・・。
このお話しは、作者が実際に祖母から聞いた話をもとに創作したものです。
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2023.1.5 1.6加筆修正 1.9加筆 1.11加筆
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