アイデンティティを増強するバイアス
最近、『エビデンスを嫌う人たち』という本を読み始めました。
まだ2章しか読んでいませんが、その中で「人々は陰謀論を信じているわけではない」ということに驚かされました。
この視点は非常にハッとさせられました。彼らは、信じたいことを信じているのではなく、自分が受け入れられない状況に対処するために陰謀論に頼っている場合が多いのです。
これは、私自身の考えにも通じるところがあり、共感を覚えました。
私は本を読むとき、以前に見たことがある情報や知っている内容に出会うと、安心感を覚えることがある。「ああ、やっぱりこれで合っていたんだ」という感じです。
これは確証バイアスと呼ばれる現象の一例だと気づきました。自分が正しいと思っている情報と一致するものだけを信じ、それ以外のものを無視することです。
また、同じような現象としてエコーチェンバーもあります。これは、自分の意見や信念を強化する情報だけが集まり、それが唯一の正解であるかのように感じてしまう現象です。
意識せずに、共通点のある本や情報を選び、それらを読み進めることで「自分は正しい」と安心しているのです。
『エビデンスを嫌う人たち』では、「アイデンティティはイデオロギーに先行する」という言葉が紹介されていました。
これも印象的な言葉でした。多くの人は、特定の集団に属してからその集団の考えを支持するようになると思いがちですが、実際には自分が信じたいものを選んだ結果、その集団に属するようになるのだと説明されています。
読みながら選挙について考えました。私は特定の政党を支持していない無党派層です。
私が候補者を選ぶ基準は「その人が目指す社会の形」に共感できるかどうかにあります。そして、その社会の形に賛同する理由は、自分もそのような社会が理想的だと思っているからです。
これこそまさに、アイデンティティがイデオロギーを選んでいるという実例と言えるのではないでしょうか。
私たちは、日常の中で耳に心地よい情報や、すでに知っている情報に囲まれています。その結果、それが唯一の正解であるかのように思い込んでしまう危険があります。
確証バイアスやエコーチェンバーに囚われず、広い視野を持つことが大切だと改めて感じました。しかし、それを理解したとしても、バイアスから完全に抜け出すことは、やはり難しい。