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たまには掘り出し物が見つかる
久しぶりに『小説新潮』を読んだ。
2年ほど前に、面白い話が数ヶ月載っていて読んでいた。それからは読んでもピンとこないものばかりで遠ざがっていた。しかし、特集の見出しだけは見るようにしていた。
2024年6月号は「生まれたての作家たち2024」という特集。新潮も図書館で借りた雑誌。新刊をよく借りる私にとって、「知っている人がいるかも?」と思って手を伸ばした。
表紙には、宮島未奈の名前がある。読んだことはないが、『成瀬は天下を取りにいく』の著者だ。「この人も新人作家か?」とか思ったりした。
知っている名前として『六人の嘘つきな大学生』の浅倉秋成、『近畿地方のある場所について』の背筋も表紙にある。
この2人が載っているなら読むか、と手に取った。
*
結果的に3作読んだ。
背筋『箱の中身はなんだろうな』
浅倉秋成『臆り億り人』
森バジル『演じろ、櫛田』
『箱の中身はなんだろうな』は、会社のゴタゴタ話。年末から欠勤している女性の調査を同期入社の人事部の男性社員がする。この男性社員は、会社の中でも一目置かれている存在で、物事を穏便に事態を片付けてくれるだろうと上層部に期待されている。
調査を進めると、タイトルの意味は忘年会で行われた一興。箱の中身を当てるゲームだと分かる。そこで行われたのは…?
ネタバレになるので書かないが、似たような話はニュースで聞いたことがある。ラストは色々分かっていながらも、会社の指示通りに動く男性社員も怖いなぁ〜と思ってしまった。
特にラストの怒涛の展開だった。「残り2-3ページしかないのにどうやって物語をまとめるのか?」と思った。
著者のコメントにも「なんだかんだ怖いのは人間です」みたいなことが書いてある。
『臆り億り人』は不意なことからインサイダー情報?を知ってしまったコンビニの店長の葛藤。この男性は積み立てNISAもやりつつ、自分で株の売買をしている。
そんな中、不意に聞いてしまった話が聞き間違いなのか、それとも宛てられている漢字が違うのか、色々頭をこねくり回しながら推理し、「これはインサイダー情報だ!」と辿り着く。
ビビりながらも、一攫千金を目指し、これまで積み立ててきたNISAを解約し、借金をし、投資に挑む。その結末は…?というお話。
男性の1人語り、色々こねくり回す過程、ビビリながらも一攫千金を目指す、そういう性格が読んでいてハラハラした。「合っているのか、いや違うのか」みたいな心理的な描写に引き込まれた。
『演じろ、櫛田』。パラパラめくって発見した。この作品は続編が読みたい。
主人公の櫛田茉莉は大学3年生。面接試験で即興劇をやることになる。その試験中、役を無視して絡んできた赤坂憂希に「女優になれ」と言われる。
憂希にもてはやされ、就職活動と並行して演技もやるようになる茉莉。大会に出場するが、日程が最終面接と被ってしまう。茉莉はどっちを選ぶのか?
というお話。面接から面接の合間の話だが、茉莉の葛藤しながらも進む心理描写がいい。続きが読みたい。