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「あなたは何をしたいのか?」という難問
採用の面接で、「あなたは次の会社で何をしたいのですか」と偉そうに質問することがあるが、いざ自分に聞かれると、これと言って具体的に示すことがないことに気づいた。
中には物心ついた時から将来なりたい職業が決まっている人もいるが、自分の人生では特にやりたいことが見つからず、自然の流れで今の「人事」という仕事に就いた。思い返せば幼稚園生の頃、大工さんになりたいと言っていたらしいが、いつの間にか「大工」という選択肢は消えていた。
自分が大学受験をした2013年はIT業界が伸びていたこともあり、これからはITを学ばなくてはいけないと感じて情報系の学部を選択した。授業で難易度の高いC言語を学んだことで、自分にはエンジニアとしての適性がないと挫折した。大学ではギリギリ単位をもらうことができ卒業できたが、時代の流れに逆らえず、適性のないIT業界の企業に就職して、エンジニアとしてキャリアをスタートさせた。
プログラミングを学んだからという理由でエンジニアになったが、適性がないことには変わりなく、1年半という長いような短いようななんとも言えぬ期間で1社目を退職した。次の会社を決めずに勢いで辞めてしまったこともあり、3ヶ月のニート期間を経て、これまたIT企業に就職した。
2社目では、エンジニアではなくITコンサルタントとして、プロジェクト管理に従事した。この会社ではプロ管をメインで行いつつ、業務後に組織開発プロジェクトに参加した。各社員はそれぞれのプロジェクトにアサインされるため自社の社員と交流することが少なく、むしろ取引先の人間と仲良くなるという不思議な環境だった。
せっかくだから自社の社員とも仲良くなりたいと思ったのが、組織開発プロジェクトに参加したきっかけだ。多少自社の社員同士で仲良くなることに貢献しつつも時間が足りずに思うようにプロジェクトが進まないことにモヤモヤして今の職場に転職した。そのため、自分にとっては2社目の経験が転機だと思っている。
大学卒業時は人事という選択肢はなかったのに、今では人事として組織開発や人材開発に携わっている。組織開発は今でも非常に関心を持っている分野だ。ただ残念なことに、今後人事としてどのようなキャリアを築いていきたいかと聞かれれば、明確な答えは提示できないだろう。それくらい自分のキャリアを回答することは難易度が高いものだ。
自分のやりたいことなど時間が経てば変わるものだし、自分が置かれた環境や立場によって目指すものや優先順位が変わってくる。その中で自分のやりたいことを見つけ、キャリアを築いていくことは非常に難しいのだ。
結局、何がしたいのかと聞かれればどのように答えれば正解なのだろうか。その業界や職種で今より多くの経験を積むことなのか。いまだに答えが分からないが、目の前の与えられた仕事を淡々とこなしながら、いつか答えに辿り着きたいと思う。