「絶対」も「ずっと」も、ありえないけど、それでも
フジファブリックが活動休止をするらしい。
姉の好きなバンドだった。というか、姉の彼氏が好きなバンドだった。要するに、姉は彼氏の好きな音楽を好きになったのだった。わたしとフジファブリックは、それだけの関係性だった。
それでもいつの間にかわたしは、Spotifyでダウンロードして聴き、街中やライブハウスのBGMで流れているのを見つけると嬉しくなって口ずさむようになり、今夜 活動休止の発表を見て家でひとり、泣いてしまったりした。
わたしは知らなかったけれど、フジファブリックは自分たちのことを『絶対に解散しないバンド』と言っていたらしい。
わたしがアイドルになって5年が経ちました。
デビュー5周年記念日当日は、まるいちにちを大切で 大好きな人たちと過ごしました。デビュー半年で開催した1stワンマンライブと同じ渋谷MilkyWayで、バンドセットの生音とともに。いま、あの夜を思い出しながら、ゆっくりゆっくり大切に、この文章を書いています。
ありきたりな表現にはなるけれど、最高な夜だったと思うのです。
わたしがいることが許されている居場所があって、楽しみや緊張や不安とかいう 色々な感情を持てるくらいにこのグループを大切に思うメンバーがいて、それを見守ったり力を貸してくれたり引っ張ってくれる運営やスタッフがいて、アイドルだからって手を抜いたりするわけなく掻き鳴らしてくれるバンドメンバーがいて、そのわたしたちに呼応してくれて性別も年齢も関係なくそれぞれの楽しみ方でフロアにいてくれるファンがいて。当たり前だけれど、わたしひとりでは、ぜったいにつくれない夜でした。
フロアで笑ったり泣いたり手を伸ばしたりしてくれるファンを見るたびにわたしは、ああそうだ、わたしはこれのためにここにいるんだ、と、何度でも思うことができるのです。あの夜ももちろん、そう思えた夜だったのでした。
デビュー前、アイドルになりませんかと誘われたことを 友人に相談したとき、「けいこちゃんの、将来の目標はなんなの?」と聞かれて、「音楽をずっと続けること、辞めないこと」と返したら、「そんなの無理だよ」と言われたことがあります。
事実だと思う。
だって、一緒にバンドをやろうよと話していた親友も、一緒にSHISHAMOをコピーしていたクラスメイトも、わたしより何倍も高くて良い楽器を持っていた友人たちも、みんな音楽を辞めていったから。そして実際にわたし自身も、辞めてしまいたいと思ったことがあるから。
わたしは昔からずっと、将来の夢がありませんでした。
でも、ほんとうは、将来の夢がなかったのではなかった。
ほんとうは音楽で生きていきたいと、言えなかったのでした。
不安定で、なんの保証もなくて、そんなの辞めておいたほうがいいよと言われることなんて分かっていたし、続けられるかどうかなんて自分自身ですら分からなくて 自信もなかったから。
でも、わたしは、この5年間音楽を辞めませんでした。
元々わたしは、アイドルを目指していた訳ではありませんでした。
溜まり切った鬱憤を叫んでも爆音がかき消してくれるライブハウスやロックバンドに何度も救われたから、わたしもそれに憧れていた。
掻き鳴らす音楽に自分を唯一解放できるような、バンドがやりたかった。ロックミュージックがやりたかった。
でもじわじわと将来の道を決めていくまわりのひとたちのなかに、ロックミュージックをやりたい、なんてひとは、少なくともわたしのまわりにはひとりもいなかった。だから誰にも言えなかった夢。
でも、想像していた形ではなかったけど、夢が叶いました。
ただ音楽が好きで続けたくて辞めたくなかったときにいただいたのが、アイドルになりませんか、のお誘いでした。
たまたまその時期にSNSに載せた自分の写真が少しだけ広まって フォロワーが増えたとかいう運だとか、就職活動が本格的に始まる直前だったとかいうタイミングだとか、前身グループのライブを見に行って心を打たれたとかいう理由だとか、運命か偶然か、ただそういうものが重なり合って、ここにい続けて気が付いたら5年が経っていました。
すこし前だったら、こんなことを言うのは無責任だと思っていたこと。
これがたとえ約束された運命だったとしても、ただ運が良かっただけの偶然だったとしても、同じ場所で音楽を辞めることなく5年という月日を確かに越えて、夢が叶ったいまだから、言わせてください。わたしはいつか音楽を辞める日がきて ステージに立たなくなる日がくるし、あなたもきっと いつかわたしに会いに来なくなる日がくるだろうけど、それでも言わせて欲しいのです。
わたしはずっと、ここで音楽を続けようと思います。
だからずっと、わたしと、わたしたちといっしょにいてください。
「ずっと」も「絶対」もないと思う。
でも、ないと分かっていながらも、「ずっと」も「絶対」も言いたくなってしまうような、どうしようもなく溢れてしまうような愛なら、わたしは持っています。
7月26日(金)渋谷CLUB QUATTROにて、SOMOSOMO5周年記念ワンマンライブ『ANSWER』を開催します。
5年音楽をやっていても、チケット完売なんて、満員御礼なんて、痛いくらい頑張らないと達成できないものです。そしてそれを達成するためには、1枚のチケットが、ひとりのお客さんの存在が、たぶんあなたが思うよりずっとずっと大切なのです。
だからどうか、ふうんそうなのか、で終わらせないで、あなたがこの日この場所に来て欲しいです。
わたしたちにできることは、わたしたちの魅力をどうにかこうにか伝えること、それを裏切らないように日々パフォーマンスの準備をすること、そして当日全身全霊で楽しませること。
ただ、あなたがこの日この場所に来るということは、あなたにしかできないことです。来てくれさえしたらきっと楽しませてみせるし、来てよかったと思わせてみせます。
初めてだとしても、久しぶりだとしても、飽きそうなくらい会いに来てくれていたとしても、関係なく心を動かすのがわたしたちの使命です。大丈夫、任せて。
この5年の答えを出せるような夜にしようと思います。
改めて、5周年を迎え 6年目に突入したSOMOSOMOとツクヨミ ケイコを、これからもどうぞよろしくお願いいたします。☾