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#20 スカイツリーの足下で息づく下町の暮らし(墨田区京島/東京)|写真とひとり散歩
昭和の残る風景を探しに、でかけたのは墨田区京島。
ここには、関東大震災や東京大空襲による焼失を逃れた昔ながらの街並みが残っている。
お供は、PENTAX KFで、レンズはHD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limitedだ。
マクロレンズだが、寄れる単焦点レンズとして使えるのが特徴だ。
京成曳舟駅から京島に降り立つ
京島は、曳舟駅の南東に広がるエリアだ。
名前の由来は、東京の「京」に向島の「島」からと言われている。
昭和初期に向島区に編入され、戦後は墨田区に属することになったためつけられたようだ。
自分は、都営浅草線に乗り、京成曳舟駅へ降りて京島に向かう。
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駅前には高層マンションが立ち並び、広々としたロータリーがある。
降りた反対側には、いまや絶滅危惧種的な扱いのイトーヨーカドーがある。
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早速、散歩をしながら京島周辺を見ていくことにする。
閉店した店舗の哀愁
駅から歩いていると、早速古めな店舗を見つけた。
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どうやらシャッターが閉まっているようだと近づいてみると、閉店していた。
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調べてみると2023年8月末での閉店だったようだ
張り紙にも気遣いと温かさを感じる
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正面に貼られた店からの感謝の手紙には、右下に小さい文字で「とてもおいしかったです!お疲れ様でした」などと客と見られる方のコメントが書いてあった。
この店は、店主が作る手造りローストビーフが特においしかったらしく、他にも惣菜が売られていて、好評だったようだ。
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人の気配を感じることができた
路地に入ると、一層古びた建物を見つけた。
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そろそろ修繕をしなければ危なそうだが、大丈夫だろうか。
少し心配になりながら、ここを後にした。
少し早い椿を見ながら
さらに、南東へ歩いていくと、サザンカがあった。
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よく見ると、その隣は椿だ。
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サザンカと椿の見分けかたは、花の落ち方にある。
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花びらが散りながら落ちるのがサザンカで、花ごと落ちるのが椿だ。
一部では、その落ち方から縁起が悪いと思われがちだが、これは比較的最近のイメージで、平安時代は高貴な花として貴族の間でもてはやされていたようだ。
余談だが、日本書記には、天武天皇にツバキを献上した記録も残っている。
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これから見頃を迎える椿を見にいくのも楽しみだ。
さて、この場所は通学路につき、徐行を促す木板の看板があった。
しかし、古びていて読みにくく、それでもこの場所の雰囲気には合っていて、まさかわざとこのまま残しているのかとも勘繰ってしまう。
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地域の安定性が過密を生む?
歩いていると、歴史がありそうな建物を見つけた。
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この京島という土地は、古い街並みが残る土地ではあるものの、木造老朽建築物が密集して建っていることや細い路地が多く、災害に弱い特性がある。
そもそも、なぜこの地域がこのように密集した住宅街になったかというと、冒頭にも述べたように関東大震災での被害が少なく、郊外地だったため、震災後に一気に人口流入が起きて都市化され、過密状態の住宅建築が行われたという歴史がある。
要するに、この地域の安定性が多くの人を呼び込んだ結果とも言えるのだ。
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ただし、現代社会においては、再開発ほど大規模なものではないにしても、防火や災害対策は必要だと感じる。
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木造である上に、過密、かつ道幅が狭く、消防車が通れる気配もない。
それを見越したように、京島には至る所に消化器や井戸が存在している。
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この景観自体は、残して欲しい風景であると同時に、気をつけて安全に過ごして欲しいと願わずにはいられなかった。
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傾いているのがよく分かる
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長屋を活用
表通りに出ると、早速長屋があった。
ここは、そのまま放置をされているわけではなく、1階は店舗として活用されている。
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一方で正面には、古めの店舗。
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なんとなく、長屋の活用は、下北沢の北沢ビルを思い出した。
商店街に向けて歩みを進める
京島には、キラキラ橘商店街という商店街がある。
なかなか特徴的なネーミングだ。その商店街に向かって歩みを進めることにした。
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途中古びた看板を見つけた。
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街全体は、少しずつ変化してきているが、所々に残る昭和がとても懐かしい気分にさせてくれる。
そういえば、このエリアは、スカイツリーに近い。
ふと目をやると、なんとも感覚がバグりそうな光景を目にした。
昭和建築物とスカイツリーのコラボだ。
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それでも路地を覗けばこの通りだ。
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掲示物もなんだか温かみを感じた
最近、こういった下町やレトロ建築を巡っていて、ゆったりとした時の流れに感化されて少し下町への憧れを抱いている。
キラキラ橘商店街
歩いていると、商店街にたどり着いた。
名前に反して、キラキラとしたような雰囲気はあまりなく、どちらかというと落ち着いている。
この橘という名前は、1963年に閉館してしまった映画館である橘館に由来するらしいが、そもそもこの土地に映画館があったことが驚きだ。
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多くの店がシャッターを閉めていた。
日曜日だからなのか、そもそも閉店をしているのかは判別がつかない。
それでも、商店街の中で行われている京島マダムたちの元気な井戸端会議が印象的だった。
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商店街の中には、営業をしている店もあった。
そのひとつがこのハト屋?なのだが、コッペパン専門店のようで、さまざまな種類のコッペパンが置いてある。
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残念ながら、自分はパンよりご飯派なので、購入することはなかったが、こうしてお店が継続しているのを見ると、初めて来た土地だがなんとなく嬉しい気持ちになった。
路地裏を通りながら駅方面へ
商店街の中に、スーパーがあったため、新宿よりは少し安いのでは?と覗いたが、野菜や果物は2割ほど安くはあったものの、そこまで大幅な値段の違いはないように感じた。
今は、本当に物価が高い。
そんな寄り道をしながら、路地裏を通りつつ駅方面へ。
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途中、何か面白いものがないか探していると見つけたのは、自転車だ。
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ここの一角だけ、やたらと古びた印象だ。
後ろの形状からすると、何かを運搬する用途に使っていたようにも見える。
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レトロな自転車も座ったり、立ったり、角度を変えて何枚か写真を撮っていたわけだが、人通りが多くないこの地域は、写真を撮るにしてもゆったりと撮れる気がした。
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自販機に閉店の挨拶が記載してある
なんだか、閉店の挨拶の張り紙を多く見たためか、哀愁を感じる土地だったが、同時にゆったりとした時間を過ごせたとも思う。
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日頃、忙しく過ごしている人にこそ、こうした地域でゆったりした時間を過ごすことをオススメしたいと思いながら、帰路に着くことにした。
📷PENTAX KF