ゼロからの『資本論』斎藤幸平
著者の『人新世の資本論』から気候変動問題についての記述を減らして、マルクスがその生涯において、何を問題視してきたか、そして今を生きる我々がそれを参考にどのような社会を目指すべきかに紙幅を割いている本です。
気候変動という大きすぎて想像しづらい問題ではなく、労働という身近なものをメインテーマにしているので、こちらの方がページも少ないし、読みやすいです。
【大事だと思った点など】
◎資本家が生産性向上のために分業させることで、労働者から構想と実行を分断し、労働が痛苦となり、労働者から生きる力を奪っている。
◎民営化というコモン(共有財産)の解体、商品化により、商品なしでは生きられない世界になっている。
◎ソ連や中国もコミュニズムではなく、ただの国家資本主義で生産性向上を目的としており、持続的な制度ではない。
◎マルクスが夢見た、市民同士による持ちつ持たれつの相互扶助のコミュニズムはいまだ達成されていない。しかしバルセロナから始まったミュニシパリズムという萌芽は出てきている。
この本で主張されるような社会が実現されれば、いったいどれだけの人が救われるだろうか?と願わずにはいられません。
しかし、富をどんどん集約させて世界への支配を強めている資本主義の壁はあまりにも高く、著者の提言する『脱成長コミュニズム』への道のりはあまりにも険しいと感じます。
とにもかくにも人々に染み付いた『お金が無いと何もできない』という恐怖心から解放するためには何が必要なのか?
著者は否定していますが、やはり、まずは積極財政による福祉国家化が第一であると私は考えます。
今の日本は所得の中央値が年々下がっており、金銭の余裕のない世帯がどんどん増えています。
蓄えがないため、辛いと感じていたとしても、労働を止められず、他者や地球環境を思いやる余裕がない状態です。
なので、労働について他者と共に考え直し、『脱成長コミュニズム』の境地に至るには、労働、即ちお金が無くても、生きる事ができるという安心感が必要で、そのためにはまず福祉国家化が必要と考えます。
発信力も小さくて、金銭的な余裕が少ない今の自分自身にできることは小さいことですが、縁があって出会った人とこの本で学んだ労働について、色々話していこうと思います。
あんまり締まりませんができることから一歩ずつ。