
BtoB企業はなぜ展示会に出展すべきなのか? 成果を出すための秘訣を徹底解説
こんにちは、BtoBマーケティングとスタートアップのグロースを専門としている株式会社マイノリティ代表の柳澤大介です。
これまで多くのBtoB企業の展示会出展をサポートしてきた経験から、「ぶっちゃけ展示会出展って効果あります?」という質問をよくいただきます。デジタルマーケティングが主流となった現在でも、実は展示会はBtoB企業にとって非常に効果的なマーケティング手法であり続けています。
今回は展示会への出展がなぜBtoB企業にとって有効なのか、どのような効果が得られるのか、さらには展示会出展を成功させるための具体的な戦略と施策の数々についてシリーズで解説していきたいと思います。
展示会で得られるものとは
いきなり本題に入りますが、当然、展示会は重要なマーケティング施策の1つです。特にまとまった数のリードを獲得しようと思ったら、展示会以上に即効性のある手段はないと言ってもよいでしょう。

出展した企業が展示会で得られるメリットは主に4つあります。具体的には、1)リード獲得、2)商談創出、3)認知拡大、そして4)フィードバック収集となります。
このなかでも最も重視すべきは「リード獲得」です。これを一番の目的にやっている会社がほとんどですね。
あるいはプロダクトをリリースしたばかりのスタートアップだと、代表自らブースに立って接客することで、見込み客からの直接のフィードバックをもらえることに価値を感じることもあります。
短期間でプロダクトに対する思いもよらないフィードバックや気づきが得られて、ユーザーインタビューの場として有意義だったと言う方もいますが、これはやや少数派。
優先度としてはおおよそリード獲得→商談→認知獲得→フィードバックという順番だと考えていいでしょう。
なぜ展示会ではリード獲得を重視するのか
BtoB企業はさまざまなマーケティング施策によって多くのリードを集め、その結果としてハウスリストを蓄積・充実させていくことが何よりも重要です。
ある程度の数の顧客リストが足りないと、同じ相手に短期間で何度も営業をかけることになり、そのリスト自体が枯れていきます。
だから常に一定量の新しいリードを注ぎつつ、過去の失注リストを定期的にフォローして掘り起こすようなプロセスを構築する必要があります。
資金調達のラウンドがシリーズBぐらいの会社でうまくいっているところだと、営業チームがだいたい20人ぐらいいて、毎月の受注に占める過去失注商談からの受注は30%ぐらいになります。
それはある程度の顧客リストがあるからこそ、「過去失注」という情報を蓄積したリードから掘り起こして営業するというサイクルが、ちゃんと循環しているということです。
逆に1、2ヶ月前に失注したところにすぐに連絡していると、「もう二度と連絡してこないでくれ!」ってなりますよね。毎月新規のリードが注がれてくることで、新規のリードへのアプローチと過去失注した先へのフォローを適切なタイミングで行えるようのなるのです。
そのためにBtoB企業のマーケティング部門は毎月多くのリードを獲得することが求められます。そして、そこに対して、一番即効性があるのが「展示会への出展」というわけですね。
じゃあ、何件リードが取れるの?
一般的には展示会におけるリード獲得率は来場者数に対して5%取れれば良い方だと考えられています。展示会の会場に来たすべてのお客さんが2万人いたとしたら、そのうちの1000人の名刺がもらえたら御の字ということです。
しかし、本当にそれでいいのでしょうか?
私の実感としては最大10%までは施策の工夫次第で到達できます、実際にこれまでサポートしてきた企業さんの展示会ではおおよそ10%のリード獲得を実現してきました。
来場者が2万人のイベントであれば、2000人の名刺を獲得するための方法論というものがあるのです。
私は常々、支援先の企業さんに「2万人来場者が来る展示会なら、3日間で2000件ぐらいは普通に取れますよ」と伝えますが、最初は信じてもらえないことが多いです。でも、実際に出展するとほぼ取れます。
ただし、最終的な売上はもう少し長い目で見る必要があります。初年度は出展コストと受注金額がトントンか、受注金額の方がやや下回るであろうとお伝えしています。
展示会の成否は「3年以内受注率」で見る
リードには顕在層から潜在層までさまざまありますが、展示会で出会えるのはほぼ潜在層です。「いますぐにでもこれがほしい」という顕在層は展示会に来ません。Webサイトに直接やってきます。
BtoBの展示会に来るのは、いまはそれほどニーズがないけれど、とはいえ遊びで来ているわけではなく、少なくとも自分の業務に対する何らかのヒントを探している人たちです。
明確な課題は持っていないし、そのためすぐには受注につながらないものの、3年以内には受注できる可能性がある方々です。本人のなかでもまだ課題がはっきりしていない、だけど「何か面白いものがないか?」と探しています。
本屋をぶらぶらと歩いているイメージでしょうか。表紙を見ながら、興味がありそうだったら、手に取るのです。
ちなみに、その逆が検索です。具体的な課題がある方はグーグルで検索して探します。
つまり、出展者が展示会で獲得できるリードは、商談機会が遠い潜在層が多くを占めるということ。
「展示会に来る方は、本当に情報収集目的の方が多いので、3年以内受注率を見てください」と話しています。
展示会に出展した初年度の売上だけにフォーカスすると、大抵は費用対効果が合わないと判断されてしまいます。そういう考え方だと何をやってもコスパが合いません。
結果的に打てる手が限られてきてしまうので、「3年で成果を出す」つもりで展示会に出展しょうねという感じです。
つまり「リードナーチャリング」がかなり重要
展示会に出展した後は、獲得したリードを育てること、いわゆる「リードナーチャリング」が重要になります。
お客さんの興味度をめきめきと上げていくのは現実的にはなかなか困難ですが、少なくとも自分たちのことを忘れられないように定期的にメールやインサイドセールスがコミュニケーションを取っていくプロセスが必要です。
上に書いたとおり、展示会で得られるリードのうち、いますぐにニーズがあるという人は2割もいません。そして当然、ノイズもあります。
7割以上はすぐには売れないお客さんなので、2000件のリードにデジタルを駆使して効率的かつ定期的にコミュニケーションを取っていく必要があります。
その際に顧客管理をNotionやExcelでコツコツとやっているケースをたまに見かけますが、それだと展示会に出た後で完全に破綻してしまいます。
少なくともCRMやSFAなどのツールは導入し、2000〜3000件のリードに対してきめ細やかにコミュニケーションを取っていく必要があります。そのインフラがないと展示会に出しても思うような成果は得られません。ここは始めにお伝えしています。
現時点のニーズを確実に把握する
具体的にリードナーチャリングでまずやるべきなのは、展示会で名刺をいただいた方々の興味度を把握することです。いわゆるWebからの問い合わせではないので、直接話を聞かない限りどの程度興味があるかはわかりません。
そこでナーチャリングを行うことで、興味度をはっきりさせます。
例えばMAツール経由で展示会で獲得したリードにメルマガを送り、メールのリンクをクリックしてもらうことで、ウェブサイトのCookieを付与します。
そうすると、自分たちの会社のホームページにいつ来たか、どのページを見たかなどのログが全部取れるようになります。
Webサイトに一度来ていただいたり、ホワイトペーパーをダウンロードしてもらったりすることで、直接電話をかけなくてもデジタル上での行動によってニーズが把握できるのです。
なので展示会後のナーチャリングは、まずはじめにメール施策からスタートすることが多いです。
2000件のリードに毎月や四半期ごとに電話をかけるのは大変な作業ですが、事例のページを10ページ以上見た方だけに連絡するとか、価格のページを見た方には「検討に入った」と判断して連絡する。それがリードナーチャリングの基本的な動きです。
このようなリードナーチャリングを実施して、手応えを感じられるのはリード数が2万件以上になってからだと言われています。
リードナーチャリングで成果を出す5か条
以前に書いたこの記事では、リードナーチャリングを実施して成果を出すための5つの条件として以下を挙げました。
条件1:2万件以上のハウスリストを保有している
条件2:毎年1,000件以上の新規リードを獲得している
条件3:月1本以上のコンテンツが制作できている
条件4:インサイドセールスが稼働している
条件5:MA(マーケティングオートメーション)を活用できる
リードナーチャリング自体は必ず必要なマーケティングのステップなので、保有するリードが少なかったとしてもやるべきではありますが、あまりに少ないとメールを送ったことによるダイレクトな反響を感じづらいです。
でも、何も連絡しないと商談にはつながりません。だから100件とか200件でもやらないよりは、やった方が良いとは思います。
私が「リードナーチャリングは少なくともリード数が1万件から」と言うのには明確な理由があります。
一般的にメールの開封率が20%、クリック率が5%、さらにコンバージョンレートが2%だとすると、メール施策で商談に至る割合は限りなくゼロに近いです。
仮にリードが500件しかないと、開封率が20%なので見てくれるのは100件。ウェブに来る方はそのうち25人。最終的なコンバージョンレートが2%だと500件送っても1件しかありません。
でも、これが2万件あると50件の商談につながります。1回のメールを送る手応えが全然違ってきますよね。
ただこれには注意も必要です。
このようにとすると、ある程度の数がないと費用対効果が合わないと判断されてしまいがちです。
しかし、展示会出展後から3ヶ月〜4ヶ月おきに連絡し、ナーチャリングを継続していると「ああ、あの会社さんね」と覚えてもらえます。これは商談化率に大きく影響します。だからこそナーチャリング自体はリード数が少ない時でもやるべきなのです。
展示会を経験したことがない企業も、いつか出展したときのために、リードナーチャリングの経験値はためておいたほうがいいでしょう。
3年以内の受注につながるように
展示会に来る方は、人それぞれまったく目的が違います。私の印象だと本屋に行く感覚で、見に来る方が多いように思います。
自分のニーズや課題解決を意識していなくても、ふらっと立ち寄って流し見していると、「あ、これ面白そう」とか「うちに必要かも」と思うものに出会えます。
目的意識を持たずに行っても、ざっと見ていると手に取ってみたら面白くて買っていく本があったりしますよね。
私もそういう感じで展示会に行くことがありますし、情報収集や業界トレンドの把握という目的で来る方がけっこう多いです。
だから商談につながるケースは、いい本に出会ったときと近い感じなんです。
ざっと見ていて「あ、なんか面白そうだな」と思ったとき。本の表紙みたいにブースに掲示されているキャッチコピーに興味を引かれると、足が止まります。来場者もちょっと気分が高揚しているので、簡単に名刺をもらえたり、その場で話が盛り上がったりしますが、受注には即つながるわけではありません。
その反面、名刺は大量に取れるので、展示会に出すときの心構えとしては、すぐ受注につなげようとしないこと。それでは費用対効果が合いません。
そうではなく、3年以内に受注につなげることを狙って、まずはたくさんのリードを獲得することだけに注力すべきです。
それが展示会の最も効果的な活用方法なのです。
次回も引き続き「展示会で成果を出すための戦略と実践のすべて」をテーマにノウハウ記事を書いていく予定です。よかったらnoteをフォローしてお待ちください。
すぐに詳細を知りたい方はこちらの「展示会攻略大全」を用意しました。
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