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読書記録『非認知能力~概念・測定と教育の可能性』小塩真司(編著)①



書誌情報

『非認知能力~概念・測定と教育の可能性』小塩真司(編著)
出版社:北大路書房(2021年8月)

非認知能力とは何か。「人間力」「やりぬく力」など漠然とした言葉に拠らず,心理学の知見から明快に論じる。誠実性,グリット,好奇心,自己制御,楽観性,レジリエンス,マインドフルネスなど関連する15の心理特性を取りあげ,教育や保育の現場でそれらを育む可能性を展望。非認知能力を広く深く知ることができる一冊。
●【主な目次】
まえがき
序章 非認知能力とはなにか
1章 誠実性 2章 グリット
3章 自己制御・自己コントロール 4章 好奇心
5章 批判的思考 6章 楽観性
7章 時間的展望 8章 情動知能
9章 感情調整 10章 共感性
11章 自尊感情 12章 セルフ・コンパッション
13章 マインドフルネス 14章 レジリエンス
15章 エゴ・レジリエンス 終章 非認知能力と教育について
・用語集・文 献・索 引

Amazon紹介文

本との出会い

エッセンシャルマネジメントスクールなどでご一緒している花咲ともみさんのSNSでの紹介で興味を持ち購入。その後この本を使った読書会を開かれるとのことで、読み切るためにも参加しようと決意。
第1回目は序章、1章から3章までを読んで参加とのことでしたのでまず3章まで読んでみました。

読書会に参加してみて、自分が気になった部分や感じたことを話しました。誰かが解説してくれるわけではないのですが、みなさんのお話や事例を聞いているうちになるほど…と納得したり、共感したり。
私は幼児教育の観点から非認知能力について興味を持っていましたが、ビジネスパーソン向けの教育活動をされている方が多かったのが意外でした。
以下、まず序章の気になった部分をまとめてみました。

序章

序章には主に非認知能力とはどういう能力なのかということが書かれています。非認知能力を知るうえで「認知能力」がなにかをまず先に説明されています。かなり端折って書きますが、

認知能力とは
知能(知能検査で測定されるような能力
学力(多くの問題に対して正確に解答する能力)

学力とは
文部科学省が提唱する学力の3要素

①基礎的・基本的な知識・技能
②知識・技能・を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等
③主体的に学習に取り組む態度

この学力の3要素には「非認知能力」も含まれているが、「非認知能力」の文脈で想定される「学力」の意味合いは、その部分を含めずに、学力テストなどで測定されるものを指し示している。

認知能力とは、何かの課題に対して懸命に取り組み、限られた時間の中でできるだけ多く、より複雑に、より正確に物事を処理することができる心理的な機能。

そして、それ以外の「非」の部分である、非認知能力とは「そのような心理的機能ではないもの、思考や感情や行動について個々人がもつパターンのようなものを指し示している」

非認知能力の重要性を提唱するヘックマンは「人生における成功は賢さ以上の要素に左右されているとしている」とし、意欲、長期的計画を実行する能力、他人との協同に必要な社会的・感情的制御などを非認知能力としてあげているそうです。

このあたりさらっと読んだだけだとちょっと理解が難しかったのですが、「非認知能力」とは「非」あらず、という概念なので、まず「認知能力の確認」そしてそれ以外「あらず」の部分が「非認知能力」ということなのだととりあえず理解しました。

ヘックマンは非認知能力について、「賃金や就労、労働経験年数、大学進学、十代の妊娠、危険な活動への従事、健康管理、犯罪率などに大きく影響する」と書いているそうです。

・非認知能力の高さは
学歴、職歴、収入の多さ、各種のリスクテイキング行動、健康関連行動
などに影響する。

・非認知能力は環境によって変化する部分が大きい。

・質の良い教育プログラムや幼少期の環境を整えることによって非認知能力を高めることができる(研究知見を背景とした確信)。

・「よい結果」へとつながる心理特性であることが非認知能力であることの最も重要な要件。教育や訓練によって伸ばすことができる心理特性であることも重要な条件。

・認知能力と非認知能力は完全に別個の存在なのではなく、互いに関連している心理特性である。

序章所感

序章は「非認知能力」とはいったいどういう能力なのかということを丁寧に説明されています。

本文の中で知能を含む心理的な特性の遺伝率について書かれている部分もありました。遺伝の話が出てくると、私はなんだか最初から負け組みたいな気持ちになるし(親に失礼)「たいしたことない遺伝子だから何しても無駄なんだよ」みたいなやさぐれた気持ちになりがちですが、知能の遺伝による説明率に比べると、パーソナリティー特性の遺伝子による説明率はやや低くなるそうです。
つまり非認知能力は、環境によって変化する部分が大きいと言えるとのことで希望を感じました。私たちの仕事でできることがきっとあるはず。

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