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#101 2024年5月に読んだ本【読書日記】

こんにちは🙂

当記事は、僕が2024年の5月に読んだ本の中から9冊をまとめたものです。
それぞれの本で、感想、印象的なフレーズを書きました。読む本を迷っている方にとって、参考になっていただけたら幸いです。


1.『四畳半神話大系』(著:森見登美彦)

📖感想
結末や登場人物が共通している4つの並行世界で繰り広げられる展開は、飽きるどころかむしろ引き込まれました。
それは、笑いをこらえるのが精一杯なくらいの下らなくておかしなやり取り、一文一文が独特な表現で描かれていること、そして主人公をはじめとした個性的な登場人物が魅力的だからだと思います。
硬派で鬱々としていてムッツリで妄想癖がすごい主人公。その主人公と小津の友情?や明石さんとの恋模様は、ほろ苦くもあり爽やか。ある意味薔薇色のように華やかな感じがしました。
おかしさ下らなさ全開の物語ですが、何か大切なことを教えてくれたような気がします。
読了後は、嫌なことも忘れて前を向ける感じがして、カステラと魚肉ハンバーグが食べたくなり、猫ラーメンが気になり、京都に行きたくなるくらい影響を受けていました。

📖印象的なフレーズ

「あ」「ほ」

『四畳半神話大系』

「むにゅっとしてました、むにゅっとしてました」

『四畳半神話大系』

「可能性という言葉を無限定に使ってはいけない。我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である」

『四畳半神話大系』


2.『砂漠』(著:伊坂幸太郎)

📖感想
名刺代わりの小説10選に入る傑作と出会いました。

物語は淡々と進んでいきますが、5人の関係が羨ましくなるくらい素敵過ぎて、いつまでも読んでいたいと思ってしまいます。彼らが何かしらの困難や悩みに対峙する様子に感動しました。
現実は、「なんてことは、まるでない」の連続で、砂漠の中でもがいている日々。だけど、砂漠に雪を降らすことは決して不可能ではないかもしれない。
西嶋が言った「砂漠に雪を降らす」のフレーズが素敵で、心を前へと進ませてくれるような感じがしました。
壁に囲まれていることの優しさ、向こう側に広がる砂漠の厳しさも教えてくれます。
そして、ラストは見事でした。淡々と進むのかと思っていたらこれ以上ない爽快感が待っています。
物語の素晴らしさが詰まっている1冊。
何回でも読み返したい、ずっと大切にしたい作品です。
(ちなみに、物語の舞台となった仙台へ旅行に行っていて、その地で読了しました。すごく良いタイミングで出会えたなと思います)


『砂漠』in 定禅寺通り

📖印象的なフレーズ

「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」

『砂漠』

「みんながプラスマイナスゼロっていうのが一番楽しいでしょ。『いろいろあったけど、でも、みんなとんとんでした』っていうのが。わたしはそう思う」

『砂漠』

僕はそこで、ずっと前に西嶋が、「終わった後で身悶えするのが麻雀じゃないか。確率だなんだ分析するのは、麻雀ではなくて、ただの計算じゃないか」と主張していたのを思い出した。確かに、生きていくのは、計算やチェックポイントの確認じゃなくて、悶えて、「分かんねえよ、どうなってんだよ」と髪の毛をくしゃくしゃやりながら、進んでいくことなのかもしれない。

『砂漠』


3.『ホーンテッド・キャンパス』(著:櫛木理宇)

📖感想
本作をきっかけにオカルト作品にハマりそうかもしれません。
ミステリと違って論理的でなくてもよく、色んな解釈の余地がある。また、解決したからといってスッキリするとは限らず、逆にモヤモヤする。このような感じで想像をかきたてられるのが好きだなと本作を読んでいても思いました。
怖いものを扱っているのにどこか穏やかな雰囲気のオカルト研究会の様子やメンバーも魅力的だなと思いました。その中でも奥手な森司が第五話で見せた行動はカッコよかった!
オカルト研究会、そして森司とこよみの今後の展開が気になりますね。続編も読みたいと思っています。
物語の舞台が新潟なのでイメージしやすかったですし、ライトな文体で読みやすかったです。

📖印象的なフレーズ

見たくもないものが視える。感じたくもないものが感じとれる。そこになにひとつ良いことなどない。
市井の人びとにそれが見えないのは、本来見なくていいものだからだ。聞こえないのは、聞かずともよいことばかりだからだ。

『ホーンテッド・キャンパス』


4.『屍人荘の殺人』(著:今村昌弘)

📖感想
想像だにしない事態、残るであろうと思ってた人物がいきなりいなくなるという展開に序盤から目が離せなかったです。
何気ないことが伏線になっていたトリック、予想できなかった犯人の正体、ラストの剣崎さんの行動。終盤は驚きの連続、そして切なさもありました。
心がない冷たいようなものに見えて、どこか人間味を感じるミステリだったような気がします。
印象的だった人物はやはり剣崎さん。彼女が探偵として事件に向き合うこととなった背景も驚きのものでした。
ある謎と対峙したわけではなくスッキリしない終わり方でしたが、だからこそ続編が読みたくなりました。

📖印象的なフレーズ

「小説やドラマでは完全犯罪なんて言葉がよく登場するけど、死体が見つかった時点で事件の半分は解決したようなものだと思う。殺害方法、犯行時間、犯行動機……死体は情報の宝庫だからね。真の完全犯罪は警察をギブアップさせることじゃない。犯罪として露見すらしないものだよ。人知れず殺し、人知れず死体を始末し、人知れず日常に溶け込むことだ」

『屍人荘の殺人』


5.『〈私〉を取り戻す哲学』(著:岩内章太郎)

📖感想
スマホに溢れている情報を見ることに時間を費やしてしまい、どこか見失いがちになっている私(自分)を取り戻すための考え方を哲学の観点から考察した1冊。
今の自分にとってどストライクな1冊でした。
スマホをダラダラと見てしまい、それによって疲労を感じたり、自分自身がよく分からなくなる感覚はこれまでもあり、実は最近も感じていることです。しかし、スマホを完全に手放すことはできないし、それによって人間関係が悪化する可能性もある。そんな状況下で、スクリーンを通して見ている情報にどう立ち向かっていくのかのヒントをもらった感じでした。
僕なりに大事だと思ったのが、何事も自分自身で考えること、自分軸を大切にすること。そして、何かしらの問題を早急に判断せず、一旦立ち止まり、保留することが大切だということです。ネガティブ・ケイパビリティはこれからの社会を生きるうえで大切な能力になりそう。
また、第四章は目からウロコ。私(自分)を取り戻すキーとなるのが、自分自身の弱さや脆さを引き受けることにはハッとさせられました。まさに僕に足りない点だなと思ったからです。
読了後は、自分自身を肯定してもらえた気持ちになり元気が出ました。
SNSで時折繰り広げられている議論にモヤモヤとしたものを感じている方はぜひ読んで欲しいと思っています。

📖印象的なフレーズ

結局、〈私〉は〈私〉でしかありえない。そして、すべての人が、一人の例外もなく、この同じ条件を共有している。このどうにもならない事実を少しでも肯定するために、私はこの本を書いたのである。

『〈私〉を取り戻す哲学』


6.『魔眼の匣の殺人』(著:今村昌弘)

📖感想
剣崎比留子シリーズの第二弾。
前作以上に面白かったです!
本作のキーとなるのは、予言・予知。犯人探しに加えて、匣で行われていた研究の真相、予言・予知は本当なのか。読み進めるごとに謎が増えていくばかりで、さらに中盤ではある作戦が行われたりと最後まで目が離せなかったです。
緻密なトリック、この状況下で殺人を行う動機が疑いのないような完璧なもののように感じました。なるほどそういう考え方、使い方があったとは!といった感じでした。伏線も見事に回収されていて唸るしかありません。
そして、真相の先にあったさらなる真相には鳥肌ものでした。
所々で見られる葉村と比留子さんのやり取りも好きですね。
前作に続いてスッキリしない終わり方……。続きがますます気になります。

📖印象的なフレーズ

おそらく多くのミステリファン、特にクローズドサークルものが好きな人なら一度ならずこんな不満を感じたことがあるだろう。
『犯人は間違いなくこの中にいるんだから、自室なんか戻らずに一晩中互いを監視すればいいじゃないか。皆馬鹿なの?』と。
当事者として言おう。相互監視など無理だ。まだ三十分も経っていない状況でこれなのだ。疑心暗鬼下での集団行動は常に不満を孕んでおり、ものすごくストレスフルである。こんなことなら鍵のかかった部屋でじっとしていた方がマシだ、と考えるのも無理はない。

『魔眼の匣の殺人』


7.『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(著:三宅香帆)

📖感想
タイトルの通り「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を読書史と労働史を交えた観点から深く考察した1冊。
「読書とは本来はノイズとなるような他者の文脈に触れること」と書いてありますが、本書も僕にとってまさにそのような本でした。
「黙読」による一般的な読書の形態が定着したのは明治時代からと実は「読書」の歴史は思ったよりも長くないこと。現代の人が感じている読書・教養に関する悩みは以前からあったこと。ノイズがある知識とノイズがない情報は違うこと。本が読めなくなるのは単純に時間がないからだけではないことなど……。
これまでほとんど触れなかった読書史はとても興味深く感じましたし、読書とは人々にとってどのような存在なのかが言語化されていると思いました。
そして、三宅さんが本書で一番に伝えたかったであろう「仕事、趣味、家事、育児などは全身全霊をやめて半身で取り組むこと」
僕はこれまで何を取り組むにしても全身全霊を意識していて、それにより燃え尽きたこともあり、最終章に書かれていたことはすごく響きました。本もそうですが、様々な取り組みを通じて様々な文脈を取り入れる、その余裕を作る。制度を変えることは難しいにしても自分自身の意識は変えていけたらと思っています。

📖印象的なフレーズ

自分から遠く離れた文脈に触れること――それが読書なのである。
そして、本が読めない状況とは、新しい文脈をつくる余裕がない、ということだ。自分から離れたところにいる文脈を、ノイズだと思ってしまう。そのノイズを頭に入れる余裕がない。

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

つまり私はこう言いたい。
サラリーマンが徹夜して無理をして資料を仕上げたことを、称揚すること。
お母さんが日々自分を犠牲にして子育てしていることを、称揚すること。
高校球児が恋愛せずに日焼け止めも塗らずに野球したことを、称揚すること。
アイドルが恋人もつくらず常にファンのことだけを考えて仕事したことを、称揚すること。
クリエイターがストイックに生活全部を投げうって作品をつくることを、称揚すること。
——そういった、日本に溢れている、「全身全霊」を信仰する社会を、やめるべきではないだろうか?
半身こそ理想だ、とみんなで言っていきませんか。

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』


8.『仮面病棟』(著:知念実希人)

📖感想
病院が舞台になっているミステリ。
夜の病院といえば不穏な雰囲気を連想させますが、本作はまさに物語全体から不穏な雰囲気が漂っていました。
強盗後に病院に立てこもったピエロよりも気になる田所病院の謎。その真相は恐ろしいものでした。しかし、それだけでは終わらない。その後に待っていたさらなる恐ろしい真相は、それまでの見え方がガラッと変わってしまうほどでした。
病院が舞台ということもありますが、人間の尊厳について考えさせられます。また、生死の判断が医学的な知見からわかるのは新鮮でした。
病院のフロア図はそこまで複雑ではなく、また登場人物も適度な人数。医学に関する専門知識がなくても読みやすい印象がありました。

📖印象的なフレーズ

「女は化粧で別人になれるんです」

『仮面病棟』


9.『一万円選書: 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語』(著:岩田徹)

📖感想
「一万円選書」の元祖として知られる北海道旭川市にある「いわた書店」。店主である岩田徹さんが、自らの半生や珠玉のブックリスト、本について書かれた1冊。
僕も一万円選書の存在は知っていて、岩田さんはカリスマ店主というイメージがありました。しかし、実際は鳴かず飛ばずで一万円選書がブレイクする直前は店を畳むことも考えていたとか。そんな岩田さんの人間味あふれる物語にジーンときました。
そして、店員と読者だけでなく、出版社や著者とのコミュニケーションにつながっている選書サービスはとても素敵なものだと思いました。
また、岩田さんの本に対する考え方、人生との向き合い方は大切なことを教えていただいたような感じがします。
生涯のうちに読める本は限りがある。自分にとって大切な1冊との出会いをこれからも楽しみたいと思います。

📖印象的なフレーズ

その人が歩んできた人生によって、読むタイミングによっても、響く言葉も印象もまったく異なるものになると思います。レビューを見てわかった気になっている人もいるようですが、本の中には、簡単に説明できない複雑な物語、要約できない気持ちなんかが書かれている。実際に読んではじめて動かされる感情があるはず。そういうものが「生の読書体験」なんです。

『一万円選書: 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語』

すべてのハンデはアイデアひとつでアドバンテージに変えられるんですね。

『一万円選書: 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語』


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