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#92「魅惑の国、レーエンデに魅せられました」【読書感想】
「魅惑の国、レーエンデに魅せられました」
壮大な世界観と革命の渦中で戦った登場人物たちに、とにかく心が揺さぶられる。
帯文にもある「王道ファンタジー」の名の通りで、今年読んだ中でのベスト10に入るほどだった作品。
それが、多崎礼さんの『レーエンデ国物語』です。
読んだきっかけ
SNSで話題になっていること、書店の店頭でも必ずといっていいほど見かけることから、以前から気になっていた作品です。そこに、非現実の世界にどっぷりと浸りたい思いが加わり手に取りました。
このような方にオススメの本です
ファンタジー作品が好き
余韻がすごい作品を読みたい
今年(2023年)話題になっている作品を探している
あらすじ
異なる世界、西ディコンセ大陸の聖イジョルニ帝国。母を失った領主の娘・ユリアは、結婚と淑やかさのみを求める親族から逃げ出すように冒険の旅に出る。呪われた地・レーエンデで出会ったのは、琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタン。
空を舞う泡虫、琥珀色に天へ伸びる古代樹、湖に建つ孤島城。ユリアはレーエンデに魅了され、森の民と暮らし始める。はじめての友達をつくり、はじめて仕事をし、はじめての恋を経て、親族の駒でしかなかった少女は、やがて帰るべき場所を得た。時を同じくして、建国の始祖の予言書が争乱を引き起こす。レーエンデを守るため、ユリアは帝国の存立を揺るがす戦いの渦中へと足を踏み入れる。
感想
魅惑の国レーエンデと革命の渦中で戦った者たちに、とにかく心が揺さぶられた
登場人物たちの姿に、自由の真髄を見た気がする
読了後、しばらくは余韻に浸っていました。
それは、魅惑の国レーエンデを中心とした物語の世界観と革命の渦中で戦った登場人物たちに、とにかく心が揺さぶられたから。
帯文にもある「王道ファンタジー」の名の通り、前半は壮大な世界観に引き込まれました。そして、後半は怒涛の展開に。レーエンデと彼らの行方が見逃せず、固唾を呑みながら読んでいました。
怖くもあり、美しさもある魅惑的な国、レーエンデ。
そこで主人公・ユリアたちが築いていく絆、友情、恋模様。登場人物たちと同じように感情が揺れ動き、泣いたり、笑ったり、ドキドキしたり。
喜怒哀楽の感情の全てが詰まっていると思いました。
この物語に出会えたことを幸せに感じます。
登場人物たちの姿に、「自由の真髄」を見た気がします。
何かに縛られたくない思いでレーエンデにやってきたユリアをはじめ、登場人物たちが求めていたものの1つが「自由」
しかし、それは好き勝手に生きればいいというわけではない。理想通りにいくとも限らない。そんな中で、誰かのためにと想う心を持ちながらも、自らの意思を持つ強さが求められるのです。
決して簡単ではない、とても難しいことだなと思いました。だからこそ、彼らの勇ましさをいつまでも目に焼き付けたいです。
僕が本作で特に印象的な場面は、後半のトリスタンが取ったある行動。あまりにも切なくて胸が締め付けられました。
あとは、ティコ族の村長たちが集まっている中でのヘクトルの演説ですね。
ヘクトルの野望にワクワクしながら、終章で明らかになること。感動に包まれ、この先の展開が気になりながら本を閉じました。
印象的なフレーズ
私はレーエンデにやってきたのではない。
レーエンデに還ってきたのだ。
「取るに足らない、おおよそ無価値な人生でも、僕にとって価値があるなら、それはとても幸せなことなんじゃないかって」
「僕の望みは、何ものにも縛られることなく自由に生きること。自分が正しいと思う道を進むこと。悔いのない人生を生き尽くし、満足して笑って死ぬこと。それだけです」
「生きるってのは楽じゃない。喜びや幸福は刹那の光、それ以外はずっと闇ん中だ。ヘマして恥かいて失意と絶望の泥沼を這いずり回る。それが人生ってもんなのさ。だからこそ自分が歩く道は自分で選ばなきゃいけないんだ。その結果、大失敗をやらかして血反吐を吐くほど苦しむことになっても、自分で選んだ人生ならまだ納得がいくからね」
「夫婦の絆だけが永遠じゃない。あたし達の友情だって永遠――だよね?」
レーエンデ沼にハマりました
レーエンデ地方や登場人物の相関図の把握には時間がかかる点はありますが、壮大な世界観にいつまでも浸っていたい気持ちにさせてくれます。
実は5巻構成という情報を目にして読むことに躊躇いがあったのですが、その心配は杞憂でした。第1巻だけでも存分に楽しめると思います。
その上で言いたいです。
レーエンデ沼にハマりました
これは2巻が読みたくなっちゃうじゃん!
いや読みたいではなく、読みます