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#50『がらんどう』(著:大谷朝子)を読んだ感想【すばる文学賞受賞作】

大谷朝子さんの『がらんどう』
第46回すばる文学賞受賞作です。
※すばる文学賞とは、集英社が主催する純文学の公募新人文学賞

TBS「王様のブランチ」のブックコーナーの特集で紹介されていたのを見たのがきっかけで読んだ1冊です。

このような方にオススメの本です

  • 世間一般で見られる幸せの形に疑問を感じている

  • これからの生き方に悩んでいる30~40代の方

  • 話題の純文学作品を読みたい

あらすじ

【第46回すばる文学賞受賞作】
最も読む快楽を感じた——岸本佐知子氏(翻訳家)
不穏な虚を抱えたパワーバランスを評価したい——堀江敏幸氏(作家)
(選評より)

「ルームシェアっていうの、やらない? もっと広い部屋に住めるし、生活費も節約できるし、家事も分担できるよ」
「若い人たち同士ならわかるけど……本気なの?」
「四十過ぎた女二人が同居しちゃいけないって法律はないよ」
「でも、普通はしないよ」

人生で一度も恋愛感情を抱いたことがない平井と、副業として3Dプリンターで死んだ犬のフィギュアを作り続ける菅沼。
二人組アイドルグループ「KI Dash」の推し活で繋がった二人のコロナ禍での共同生活は、心地よく淡々と過ぎていくが——

恋愛、結婚、出産、家族……どんな型にもうまくはまれない、でも、特別じゃない。
《今》を生きるすべての人へ、さまざまな属性を越えて響く“わたしたち”の物語。

集英社より

感想

  • 自分の幸せとはどんな形だろうと考えさせられた

  • 作品全体を通しての「寂しさ」を感じさせる表現も印象的


平井と菅沼の40代前後の女性2人は「推し活」をきっかけに意気投合します。その後、菅沼の提案により2人はルームシェアを始めますが……。


世の中は「幸せ」の一般的な形を誰にでも当てはめてしまうと感じることは僕にもあります。その典型的なものが、恋愛、結婚、出産。でも、幸せの形は人それぞれ違う。「〇〇すれば誰もが幸せ」というのは存在しないし、「それって幸せなの?」と思うものでも当人にとっては幸せに感じる。自分の幸せとはどんな形だろうと考えさせられました。また、幸せの押し付けはしないようにしようとも思いました。

本作のテーマの一つが「幸せ」についてだと思います。それも含めて何かを諦めること、諦めないことを考え、選択することについても考えさせられました。本作を通じて、そのどちらも正解ではなく、自分自身で考え、選択していくしかないんだと思いがわき上がりました。
諦めることって簡単なようで難しい。逆もまた然り。それを平井と菅沼の2人の行動を通じて感じました。


芸能人が結婚した時、平井が幸せを諦めることを考えていた時の菅沼さんの言葉は響き、共感できるものがありました。僕も菅沼さんと同じように、アイドルのプライベートが明かされるのには疑問を感じています。


勤務地や旅行先、年齢を重ねる中での身体の変化など、作品全体を通しての「寂しさ」を感じさせる表現も印象的です。菅沼の「骨に染み入るような寂しさ」の一言は、何か怖さを感じさせるものがありました。

ラストシーンは、歳を重ねてから読み返した時に感じ方が変わりそうです。

印象的なフレーズ

「四十過ぎた女二人が同居しちゃいけないって法律はないよ」

『がらんどう』

「大人になるとさあ、周りにいる人たちって自分で選べないじゃん。親兄弟はもちろん、普段やりとりする同僚も、チームのメンバーも。好きで選んだ訳じゃない」

『がらんどう』

「てか、別に発表しなくていいのに。引っ越しとか、親が死んだとかはいちいち発表しないのに、なんで結婚や出産は特別なことみたいに取り上げるの?どっちも芸能人のプライベートじゃん。アイドルのプライベートなんて全部謎でいい」

『がらんどう』

「諦めないことが正解じゃないように、たぶん、諦めることも正解じゃないよ」

『がらんどう』

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