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#64『ツナグ』(著:辻村深月)を読んだ感想【読書日記】
辻村深月さんの『ツナグ』
第32回吉川英治文学新人賞受賞作で、映画化もされた作品です。
※吉川英治文学新人賞とは、新聞、雑誌、単行本等に優秀な小説を発表した作家の中から、最も将来性のある新人作家に贈呈する賞
読んだきっかけ
個人的なことなのですが、最近「生と死について」考えることがあり、そんな中で気になったのが本作でした。序盤だけですが、前に映画を少しだけ見ていたこともあります。
このような方にオススメの本です
大切な人を失い、その人に会いたい気持ちがある
生と死について考えることがある
あらすじ
一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員……ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。
感想
生者、死者、そして使者の心の葛藤に、感動以上にその想いの重みを感じた
後半の歩美視点からの話で物語にさらに引き込まれた
会いたい人に会えて良かった、感動の物語……。
読む前はそのようにイメージしていましたが、そんな単純な話ではありませんでした。会ったことで逆に後悔するのでは?、会うことで死を認めるのではないか?、会うことは生者のエゴなのでは?など、生者、死者、そして使者が持つ心の葛藤に、感動以上にその想いの重みを感じました。
もし一生に一度、死者との再会が叶うのであれば、僕だったら誰に会いたいだろう?その再会のチケットをいつ使うだろう?
思わず自分事のように考えさせられました。知らない方が良かったことを知ってしまうのではないか、死者である相手はどう思うだろう。会ったことで後悔の念が強まった人物もいたことで、それを考えたら怖さを感じていました。
今思っているのは、会いたいと思う人を信じ、死者の想いを繋いでいきたいということです。
後半の歩美視点からの話で物語にさらに引き込まれました。依頼人とのやり取りに変化が生まれるのですが、その時に歩美が思っていたことが分かると本作での生と死について、さらに考えさせられると思います。
死者を呼び出す時の表現が強く印象に残っていますし、ミステリの要素が含まれているのも辻村さんらしさがありました。
そして、読了後は生きることに向き合う力を与えてくれた感じがします。
生きているうちに会いたい人に会うのもそうですが、大切な人を失ったとしても、その人の想いを心の中に持っていたいと思います。
印象的なフレーズ
「世の中が不公平なんて当たり前だよ。みんなに平等に不公平。フェアなんて誰にとっても存在しない」
「人間ってのは、身近なものの死しか感じることも悲しむこともできないんだよ。『みんなに愛された』って聞こえはいいけど、それだけだ。娯楽としての悲しみなんてショーだもん」
懺悔する、告白するという行為は、随分とやった側に虫がいい考え方だ。
「ばあちゃん、死んだ人間は、会いたい相手に会ったところで、全員が全員、満足して成仏できるとは思えないって、言ったと思うんだけど」
「ああ」
「それは依頼人にとっても同じなんだって、思った」
「もし、死者は死者のまま、魂なんかないんだとしたら。それか、もうすっかり成仏してあの世で安らかにしてるんだとしてもさ。――そこを会いたいって願うのは、生きてる側のエゴじゃないか」
死者に会うことで、人生を先に進める人たちがいる。占いに頼るように、自分の生活に彩りを与え、心残りを解消する。それは、何食わぬ顔で死者の存在を消費し、軽んじるのと同じではないだろうか。その考えは、どうしようもなく驕ったものだという気がした。