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#82『ひと』(著:小野寺史宜)を読んだ感想【読書日記】
小野寺史宜さんの『ひと』
2019年の第16回本屋大賞ノミネート作(2位)で、2022年の第3回宮崎本大賞受賞作でもあります。
※「宮崎本大賞」とは、宮崎の書店員や図書館司書など本に携わる方が企画した、県民にオススメしたい本を投票で決めるコンテスト
読んだきっかけ
本作を買ったのは3~4ヶ月前。僕も日々の生活の中で孤独を感じることがあり、つい手に取った1冊でした。
時は過ぎて…。
次に読む本を選ぶ時に、積読本用の棚を見たところで本作が目に入り読みました。
このような方にオススメの本です
日々の生活の中で孤独を感じている人
心が温まる、いや熱くなる作品を読みたい
比較的読みやすい作品を探している
あらすじ
母の故郷の鳥取で店を開くも失敗、
交通事故死した調理師だった父。
女手ひとつ、学食で働きながら一人っ子の僕を
東京の私大に進ませてくれた母。
──その母が急死した。
柏木聖輔は二十歳の秋、たった一人になった。
全財産は百五十万円、奨学金を返せる自信はなく、
大学は中退。
仕事を探さなければと思いつつ、動き出せない日々が続いた。
そんなある日の午後、空腹に負けて吸い寄せられた
商店街の惣菜そうざい屋で、買おうとしていた最後に残った
五十円のコロッケを見知らぬお婆ばあさんに譲ゆずった。
それが運命を変えるとも知らずに……。
感想
主人公の聖輔から生きるうえで大切なことを教えてもらった感じがした
ラストシーンに、思わず心が熱くなった
聖輔の自然な姿を映し出している淡々とした文体も印象的
見返りを求めずに譲ること、さりげない気配り。それを主人公の柏木聖輔は自然におこなっています。彼の姿から、生きるうえで大切なことを教えてもらった気がします。
そして、心が熱くなったラストシーン。物語の展開としてもですが、文章がすごく印象に残りました。
聖輔に寄り添う人たちにも心を揺さぶられます。その中で印象的なのは、聖輔が働くコロッケ屋店主の督次さんと青葉さんです。
誰かの良い行いを「見つける」って実は難しい。
喧噪の日々だけど、そんな中でも「ひと」を大切にしたい。そう素直に思える1冊でした。
淡々とした文体も印象的です。それが聖輔の自然な姿を映し出していたと思います。登場人物がフルネームで何度も書かれている点も、一人一人の名前を大切にしている感じが伝わってきました。
ああ、揚げたてのコロッケが食べたい
印象的なフレーズ
「まずな、ウチのだからうまいわけじゃない。コロッケってもんがうまいんだ。そのコロッケをつくる。それだけだな」
「人の誕生日にはしゃぐのはいいな」
「自分のじゃなく、人の誕生日にはしゃげるのはいい」
「一人でがんばることも大事。でも頼っていいと言ってる人に頼るのも大事」
あいつ空気読めないよな、と誰かが言うとき、その誰かは、自分は空気が読めると思っている。実際はどうか。その件に関しては相手より多く情報を持ってるから読めてると思えるだけ、ということが多い。
人は空気なんて読めない。よく考えればわかる。そこそこ仲がいい友だちが自分をどうとらえてるかさえわからないのに、空気なんて読めるはずがないのだ。
大切なのはものじゃない。形がない何かでもない。人だ。人材に代わりはいても、人に代わりはいない。