#86「わるいことがおこっても、なんかしらいいことがかならず、ある」【読書感想】
永井みみさんの『ミシンと金魚』
第45回すばる文学賞受賞作です。
読んだきっかけ
先日読んだ『がらんどう』と『犬のかたちをしているもの』が印象に残る作品だったこともあり、他のすばる文学賞受賞作品を読みたいと思っていました。その中で、最近の受賞作であらすじが気になり手に取りました。
このような方にオススメの本です
文体が独特な作品を読みたい
ページ数以上に内容が重めで濃い作品を読みたい
すばる文学賞受賞作が気になっている
あらすじ
感想
独特な文体に引き込まれた
カケイさんの凄絶な一生に息を呑む
一瞬の幸せを見逃していないだろうか
本作は、認知症を患っている主人公のカケイさんの視点から、彼女の一生についてなどが語られています。通常なら誤字にあたるものや、忘れていることを繰り返し語る部分など、方言とはまた違う独特な文体に引き込まれました。
そして、カケイさんの凄絶な一生に息を呑みました。継母からの暴力、トイレで「みっちゃん」を出産したことなど、濃く重さがあります。
また、広瀬のばーさんの過去、相続の生々しさなども強烈でした。
凄絶な一生だったカケイさんですが、みっちゃんと過ごした時期は幸せだったと言っています。
人は、あの時ああしていたら、と後悔したり、損の部分に目を向けがちです。だけど、一瞬の幸せを見逃していないだろうかと自らに問いかけられているような感じがしました。
すばる文学賞受賞作は何冊か読みましたが、印象に残るフレーズでしたり、力強さや勢いが伝わってきて好みです。他の受賞作も追っていきたいですね。