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【読書】堀江敏幸『いつか王子駅で』

2023-11-24

堀江敏幸さんの『いつか王子駅で』を図書館で借りて読みました。
完全にジャケ借り。作品にも、著者にも予備知識ゼロです。

いきなり余談ですが、この記事を書こうと思って「おうじえき」と打ち込んだら、変換候補の先頭は「王寺駅」でした。
夏まで住んでいた関西の残り香。鼻がくすぐったくなりました。


感想としては、真っ先に出てくるのが「馬がお好きなんだなぁ」。
作品の中には、都電荒川線が走り去る場面、主人公が家庭教師を引きうけている陸上部の女子中学生・咲ちゃんが走る場面などが描かれますが、それらが競馬の歴史の名レースにたとえられる場面が多く出てきます。
が、競馬を知らない私にとっては何がなんだか…ただ、馬の話になると熱くなる身の回りのおじさんたちを思い浮かべては、こういう人いるよなぁーとなんだか微笑ましくなります。

それから、舞台となる都電荒川線あたりの、下町と都市が汽水のように混ぜ合わさった雰囲気が醸し出されていて、(東京出身の自分としては)これもまた、どこか懐かしい気持ちになりました。さっき関西の残り香がうんたらかんたら言ってたくせに、今度は東京出身アピールかよ、みたいな。まぁいいじゃない。故郷は選べないのです。

主人公も、仕事と言えば非常勤講師とか頼まれものの翻訳とかやっている
「時間はあるけど金はない」的な生活で、このゆるさがまた良いのです。古き良き下町風情、ちょっと場所はちがうけれど寅さん的おおらかさに身をゆだねて、のんびり読めた作品でした。



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