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#48「強み」を意識して使った方がいいとき - ポジティブ心理学 -

ここでは、「ポジティブ心理学」で研究される「強み」について一緒に学んでいきたいと思います。前回の記事では、「強み」を活かすためには、意識して使おうとするよりも、それが自然と出てくる「環境」を整えることの方が大事であるということを学んできました。

「強み」を使おうと意識してしまうと逆にぎこちなくなってしまうため、意識せずとも自然と出てくる「環境」を整えていった方がいいというお話でしたね。今回の記事では、逆に「強み」を意識した方がいいときはどんなときかということについて、一緒に学んでいきたいと思います。


「強み」はコンテクストの中に存在する

まず、「強み」を意識して使った方がいい時はどんな時かを考えるために、一つ、前提となるお話からしていきたいと思います。それは、前回の記事でも触れたように、「強み」のことを考えるときは「環境」もセットで考えることが重要だということです。ポジティブ心理学の世界では「強みはコンテクストの中に存在する」と言われており、「自分が自然とできること」だけを考えるのではなく、自分が置かれた環境との相互作用の中で、その自然とできることが「強み」になったり、「弱み」になったりすると考えられています。

例えば、VIA調査のキャラクターストレングス(徳性の強み)の1つに「親切心」という強みがあります。この「親切心」は、例えば、友人が悩みを抱えていて助けを求めてきたときなどは、「相談にのる」という行為を通して「強み」として発揮されます。一方、友人が悩みを抱えているけれど、まだ相談できる心の準備が整っていないときに、「どうしたん?どうしたん?ね~どうしたん?」と差し迫っていくと、「親切心」は「お節介」や「詮索好き」という形で現われ、もはや「強み」ではなく、「弱み」に転じてしまいます。(※「弱み」とは「自他にとってマイナスに働くもの」とここではざっくりと定義しています)

ある状況や環境で「強み」を使い過ぎると、もはや「強み」では無くなってしまう。そのため、強みは「環境」とセットで考えた方がいい

状況のニーズに応じて「強み」のボリューム調整をする

このように「強み」というのは、置かれている状況の必要性に応じて、ボリューム調整をしていく必要があるんです。ある状況では「親切心」という強みになる行為も、相手が望んでない場合にそれを使い過ぎてしまうと「詮索好き」になってしまいます。また、逆に状況(人)が求めているにもかかわらず、「親切心」を全然使わないと「自己チュー」になってしまいます。

自分が置かれた状況のニーズに応じて「強み」のボリューム調整を行い、最適に使うことが大事

「強みを活かす」と聞くと、僕たちは「強みをいっぱい使うこと」をイメージしがちですが、実はそうではなく、「状況に応じて調整していくこと」が「強みを活かす」ということなんです。時と場合によっては「あえて使わない」ことも「強みを活かす」ことなんです。

「強みの使い過ぎ」に気づく

それでは、本題の「強みを意識して使った方がいいとき」というお話に戻りましょう。ここまでみてきたように、「強み」というのは、状況におけるニーズを考慮する必要があります。意識せずとも自然と出てくるものが「強み」ですから、時と場合によっては、状況のニーズが無いにも関わらず、知らず知らずのうちに自分の「徳性の強み」、もしくは「自然とやっている癖(才能)」(←クリフトンストレングスの場合)が出すぎて、「弱み」に転じてしまっている場合もあるんです。上述の例でいうと、環境(友人)のニーズを考慮せずに、「どうしたん?どうしたん?」とついつい「良いことをしたい」という性分が、気づかないうちに出過ぎてしまい、相手に不快な思いをさせてしまっていました。「強み」を意識して使う方がいいときとは、まさに、このように「状況のニーズを考慮せずに、使い過ぎてしまっているとき」です。この「強みの使い過ぎ」を意識して対処していくことは、「強み」を育てていく上でとても重要です。

「強みの使い過ぎ」に対処する具体的な3つのステップ

では、具体的に「強みの使い過ぎ」に対して、どのように対処すればよいでしょうか?具体的には3つのステップがあります。

まず、「どんな状況や環境で使い過ぎるとマイナスになるか?」と、その状況を特定していくことから始めていきましょう。状況を特定することができると、いざ、そのような場面に出くわしたとき、「あっ、今、出過ぎている」と気づけるようになっていきます。気づけると「思考」は一旦、緩むんです。

次に、またそのような状況に出くわす前に「その状況であったにもかかわらずに、例外的にもうまく対処できたときや、使い過ぎなかったときはどんなときだったか?」を振り返って、「なんでそのときはうまくいったのか?」と、勝因分析をしていきます。そうすることで、自分ならではの対処法や予防策が見つかりやすくなるからです。(「例外探し」「勝因分析」に関しては、コチラのリンク記事をご覧ください!)

因みに、勝因分析をした後、自分の中で「もし~になったら、こうする(If-thenプラン)」という形でまとめておくと、いざとなったときに思い出しやすくなると思いますんで、お勧めです。上述の例でいうと、「もし友人が困ってそうだったら、まず相手が助けを求めているのかどうかを確認する」など、自分にとって、しっくりくる「If-thenプラン」を考えてみてください。

最後に、その「If-thenプラン」を実際に似たような場面に出くわしたときに、意識して実践練習をしていくことで、自分のものにしていきます。

このようなプロセスを通して、「強みの使い過ぎ」に対処していきたいわけなんですが、ご自身のケースで考えるとさらに腑に落ちるところがあると思いますんで、ぜひ、こちらの3つのステップを試してみてください!

「強みを活かす」というのは、「マイナスに働くとき」を無視するということではありません。「弱み」には適切に対処しながら、より多くの時間とエネルギーを自分の力が湧いてくるものに費やすという発想になりますんで、ぜひ、過去にうまく対処できたときを振り返りながら、自分なりの対処法を作ってみてください!

最後に、この「強みの使い過ぎ」という考えについて、以前、NIKKEI STYLEさんに投稿していた記事がありましたんで、こちらもご参考にしてみていただけたらと思います。

さて、今回の記事では、「強みを意識して使った方がいいとき」というテーマで、「強みの使い過ぎ」やその対処法について、一緒にみてきました。次回の記事では、ちょっとここから派生して、「強み」にフィーカスするために大切にしたいことについて、一緒に学んでいきたいと思います。(つづく)

【参考文献】
Biswas-Diener, R., Kashdan, T. B., & Minhas, G. (2011). A dynamic approach to psychological strength development and intervention. The Journal of Positive Psychology, 6(2), 106-118.

Matsuguma, S., Niemiec, R. M. (2021). Hikikomori from the perspective of overuse, underuse, and optimal use of character strengths: Case reports. International Journal of Applied Positive Psychology, 6, 219–231.

Niemiec, R. M. (2019). Finding the golden mean: The overuse, underuse, and optimal use of character strengths. Counselling Psychology Quarterly, 32(3-4), 453–471.

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