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#02 最近、学校に行くのが嫌になっています- お悩み相談 -

ここでは、皆さんから頂いたお悩みに対して、ポジティブ心理学や解決志向アプローチの観点から解決の糸口を一緒に見つけていきたいと思います。ぜひ、ご参考までにご覧ください。


今回のお悩みは「学校」に関するご相談ですね。今、つらい状況で「なんで行きたくないのか?」と理由を探ってもわからない。わからない分、モヤモヤしますし、そんな状況の中で無理矢理、行動しようとすると余計に苦しくなっちゃいますよね。全然、おかしなことじゃないと思うんです。

一方、そのような状況の中であるにもかかわらず、将来のことを考えて、何とか打開策を見つけようとされている姿勢自体、本当に素晴らしいことだと思います。

僕自身、今の状況で「学校に行った方がいい・行かなくてもいい」ということはお答えできないんですが、いくつか解決の糸口になるかもしれないという観点や質問を以下に書いてみました。まずは、こちらに「今回のポイント!」を記載しています。長文になりますので、先にこちらを読んでみて、ピンッとこられるものがあれば、ぜひ、読み進めてみてください!

今回のポイント!


  • そもそも何が今の自分を支えているのかを考えてみる

  • 学校に行くのが嫌じゃなかったときと今は何が違うのかを考えてみる

  • 行きたくない理由を探るのではなく、何を望んでいるのかを考えてみる

  • こころの健康(ウェルビーイング)に関する要素が十分満たされているかを考えてみる


それでは、本題に入っていきたいと思います。

何が自分を支えているのか?

まず、ご質問を読んだときに一番最初に思ったことは、「あ〜、しんどそうだなあ」と思う一方、「そんなしんどい状況であるにも関わらず、今も学校に行っているって、何が自分を支えているんだろう?」っていうことに、とても興味をもちました。結構、こういう状況になったら、多くの人は、もう投げ出したりすると思うんです。苦しい気持ちになりながらも、大崩れせずにいられているのは、この子にどんな力があるからなんだろう?今の状況でマシなことや何が自分を支えるのに役立っているんだろう?ということを伺ってみたくなりました。いかがでしょうか?

  • 何が今のしんどい状況の中、自分自身を支えていると思いますか?

  • 何があるから、まだ大崩れせずにいられていると思いますか?

まずは、こちらの質問について考えてみてほしいなと思います。

「嫌じゃなかったとき」は何が役立っていたのか?

次に、「最近、嫌になっています」とありますが、

  • 逆に「嫌じゃなかったとき」はどんなときだったんでしょうか?

  • 何が役立っていたから、「嫌じゃなかった」と思いますか?

  • 嫌じゃなかったときと今とはどんな違いがありますか?

もしかすると、嫌じゃなかったときにやっていたことで今、やっていないことがあるかもしれませんし、そのことを明確にしていくことで見えてくるものがあるかもしれません。「今、なんで嫌なのか?」を考えても答えがでないのであれば、「なんであの時は嫌じゃなかったのか?」と勝因分析をしてみてほしいなと思いました。この考え方については、こちらの記事にも詳細を説明していますんで、詳しく知りたい場合は、ぜひお読みください。

「何が原因か」より「何を望んでいるか」

また、「行きたくない原因が見つからない」とのことですが、僕たちが生きる現実世界には、このように原因が見つからない問題も多々、存在しています。色んなことが重なって現れている現象もありますし、機械の故障と違って、原因を一つに特定できないってことはよくあるんです。そんなときに、ぜひ大事にしていただきたいのが、「なんで行きたくないのか?」を考えるよりも、「今、望んでいることは何か?」を考えることです。お腹を空かしている人に対して、「なんでお腹が空いているんですか?」と原因を問いただしても、この問題は解決しませんよね?この問題が解決するのは、望んでいるものを食べることであって、「何を望んでいるのか?」を伺うことで解決の糸口が見えてくるときがあります。

そのため、ぜひ、以下の質問についても、考えてみてください。

  • あなたは、今、何を望んでいますか?

  • 自分が抱えている問題がなくなったとき、今とどんな違いが生まれますか?

雑草よりも花の状態に目を向けてみる

最後に、「特にいじめを受けているわけでもないし、勉強も付いていけていないわけじゃない。そのため、なんで学校に行きたくないのか理由が分からない」とありますが、もしかすると、今、人を「庭」で例えると「雑草(ネガティブな出来事)」のことばかりを見て、特に見当たる「雑草」がないなあと思われている状態なんじゃないかなとも思いました。「雑草」が無いからといって、その「庭」は単なる「さら地」の状態で、「花」が咲いているわけではありませんよね?今、この子の日常生活の中で「花」の状態はどうなんだろう?というのが気になりました。

「花」の状態というのは、充実してイキイキとした生活を送るために必要な要素が満たされていることを意味です。

  • 学校生活の中で、どれだけ嬉しい、楽しいと思える時間を過ごせていますか?

  • どれだけ、夢中になれる時間がありますか?

  • 一緒にいて安心できる人間関係は築けていますか?

  • どれくらい、学校に意味を感じられていますか?

  • どれくらい、学校の中で自分の存在意義を感じられていますか?

  • どれくらい、達成感を感じられていますか?

因みに、これらの質問にそれぞれ10点満点で答えるとしたら、何点と言うと思いますか?10点が十分、感じられていて、1点が真逆で全くそのようなことがない状態とした場合、それぞれ、何点くらいでしょうか?

上述の質問は、充実してイキイキとした生活を送れている場合は、よく高得点が付けられる質問になります。おそらく、これらの質問に10点満点で考えてみると、大なり小なりの凸凹ができると思います。その凸凹を見ながら、今の悩みを解決するためには、まず、どこにテコ入れをすればいいかを考えていくと、今の状況から抜け出す糸口が見えてくるかもしれません。この凸凹による考察については、こちはの記事に高校生の例もつけて説明していますんで、ぜひご参考にご覧ください。

まとめ

さて、ここまで、読んでみて、いかがでしたでしょうか?的外れなことを言っている部分もあったかもしれませんが、ピンッとくるものがあれば、是非、時間をかけて、その質問について考えてみたり、お話できる人が身近にいれば、一緒に話し合ってみて頂ければと思います。

改めて、こちらに質問をまとめておきますね。


  • 何が今のしんどい状況の中、自分自身を支えていると思いますか?

  • 何があるから、まだ大崩れせずにいられていると思いますか?

  • 逆に「嫌じゃなかったとき」はどんなときだったんでしょうか?

  • 何が役立っていたから、「嫌じゃなかった」と思いますか?

  • 嫌じゃなかったときと今とはどんな違いがありますか?

  • あなたは、今、何を望んでいますか?

  • 自分が抱えている問題がなくなったとき、今とどんな違いが生まれますか?

  • 学校生活の中で、どれだけ嬉しい、楽しいと思える時間を過ごせていますか?(10点満点で何点?)

  • どれだけ、夢中になれる時間がありますか?(10点満点で何点?)

  • 一緒にいて安心できる人間関係は築けていますか?(10点満点で何点?)

  • どれくらい、学校に意味を感じられていますか?(10点満点で何点?)

  • どれくらい、学校の中で自分の存在意義を感じられていますか?(10点満点で何点?)

  • どれくらい、達成感を感じられていますか?(10点満点で何点?)


「今、どうすればいいか分からない」という状況かと思いますが、大崩れせずにいれていること自体、本当によくやっていると思います。解決の糸口を見つけるために、これらの質問について考えてみることをお勧めしますが、それよりもまず、大崩れせずになんとか持ちこたえている自分自身に対して「よくやっているよ」という労いの言葉を是非、かけてあげてほしいなと思います。またご質問がありましたら、ぜひ、マシュマロに投げてください。応援しています!

松隈 信一郎 | Shin Matsuguma, Ph.D.
医学博士、公認心理師。慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了。専門はポジティブ心理学と解決志向アプローチ。在学中、School for Strengths-Based Education(旧 一般社団法人ストレングス協会)を設立し、ポジティブ心理学の理論を応用した10代・20代の不登校・ひきこもり向けの訪問支援、教員・保護者向けの心理教育、及び、各教育機関向けの心理教育プログラム・カリキュラムの開発・監修に従事。2019年、豪州メルボルンで開催された第6回ポジティブ心理学国際学会臨床部門症例大会でファイナリストに選出される。日本ポジティブサイコロジー医学会事務局長(株式会社メディプロデュース内)、立教大学GLP兼任講師、慶應義塾大学医学部精神神経科学教室特任助教、米国GALLUP社人材開発コンサルタントを兼任。2022年より、学生時代からご縁があったフィリピンに渡り、フィリピン大学ディリマン校心理学部でポジティブ心理学とモチベーション、感情、教育心理学の講義を担当する。また、オンラインを通して、日本の企業や学校向けに心理支援や人材育成、心理教育のカリキュラム開発・監修なども行う。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。著書に「ポジティブサイコロジー:不登校・ひきこもり支援の新しいカタチ」「人生を豊かにするウェルビーイングノート」(金剛出版)等