社員総出でAI活用の活路を探せ!部署を超えたチームでLLMハッカソンを開催しました
こんにちは!プロダクトマネージャーのryopenguin(@ryopenguin)です。
AIを活用したテクノロジーが日々進化し、私たちの生活や仕事にも大きな変化がもたらされている昨今、SmartHRでもAI活用が社内で進み始めています。最近は、「AI活用ポリシー」を策定したり、「従業員サーベイ」機能でAIを利用した自由記述回答要約機能のテスト版を公開したり、「AI研究室」(※)を立ち上げました。
※ AI研究室はAIインテグレーションユニットに名称が変更されました。
そんな中、SmartHRでは、LLM(Large Language Model)と呼ばれるOpenAIの大規模言語モデルを活用した「LLMハッカソン」を開催しました!
ハッカソンとは、ハック(hack)とマラソン(marathon)を組み合わせた造語で、様々なスキルを持ったメンバーがチームを結成し、テーマに沿った意見やアイデアを出し合いながら開発を進め、期間内でアプリケーションなどの成果物を競い合うイベントです。
今回のハッカソンは、実運用を目指した開発ではなく、社内でのLLMの普及
と部署や職種に捉われないLLM活用のアイデア創出を目的に行われ、11チーム総勢40人が参加してくれました。
数々の個性豊かな提案の中で、ひときわSmartHRらしさを放つ「産育休にまつわる疑問の解決」をテーマとしたチーム「Second Penguin」にインタビューを行いました!
この記事で、SmartHRの社内の雰囲気や、スタートアップならではのアイデアを追い求められるカルチャーを感じていただけると幸いです。
チーム「Second Penguin」のメンバー
【西岡 俊さん(@aoka)プラットフォームビジネスユニット】
「SmartHR Plus β版」というSmartHR専用のアプリストアをつくるユニットにて、アプリ連携するパートナーの開発支援を行う。SmartHRに入社して1年半。育休未経験側で参加。(写真左奥)
【齋藤 修平さん(@saitono)CEO室】
SmartHRのコーポレートミッション「well-working」を実現するために、SmartHRのこれからを考え、提供価値を増やしていくための企画推進を行う。3人子どもがいるが、前職では育休制度が整っていない部分もあったため、妻が産育休を取得しサポートに回る形だった。SmartHRに入社して1年。(写真左手前)
【中﨑 千敬さん(@chihiro)人事グループ労務ユニット】
社内労務として産休育休をメインで担当。手続きだけではなく、相談役も担う。常に20~30名を並行して担当しているなかで、よりよい産育休の仕組みづくりができないかと思い、ハッカソンに参加。SmartHRに入社してもうすぐ3年。(写真中央)
【川上 晃弘さん(@kawa)プロダクトエンジニア】
SmartHRの組織図機能の開発を担当している。前職在籍時に子どもを授かったが、当時産育休のことがわからずに困った経験があった。SmartHRに入社してもうすぐ2年。(写真右手)
現場の実体験から生まれたアイデア「聞いて、答えて、産育休」
まずは「聞いて、答えて、産育休」がどんなアイデアなのか教えてください
中﨑:このアイデアが叶えるのは、産育休にまつわる疑問を人を介さずにタイムリーに解決できることです。産育休をテーマにしたのは、私が普段担当する労務業務の中で持っていた課題が起点になりました。
私は労務ユニットの中でも産育休の領域をメインに担当しています。手続きだけじゃなくて、相談にのったり、お休み中に会社との接点をどう持ってもらえたらいいのか、とにかく安心して休んでもらって復職してからも活躍してもらいたいと思いながら業務にあたっています。
そんななか、妊娠や出産に関するプライベートな側面をサポートする担当としては、妊娠されている方や配偶者が妊娠中という方だけではなく、将来的に子どもを持つ選択を考えている人にもサポートの範囲を広げたいという思いを抱えていました。
相談するにはプライベートなことを開示しなければならないし、法的知識や社内制度もよくわかっていない状態だと、質問することそのものの心理的ハードルがすごく高いんじゃないかと思っていました。
だから、AIを活用することで人を介さずに疑問を解決することができたらいいよね、という発想から始まりました。
──もう既に頭の中でアイデアが固まっていたんですね!
中﨑:最初は産育休を取得したときにもらえる給付金がぱっと計算できるツールがあればいいなと考えていました。しかし、これまで育休を取ったことのある人にヒアリングをしたところ、計算が必要なこの課題に対してLLMを活用するのは相性が良くないとアドバイスをもらったんです。
私はエンジニアではないので、課題はあるのに、どう実現したらいいかわからないと困っていました。
──中﨑さんが悩みの当事者でもあるし、「こんな基本的なことを聞いていいのかな?」と従業員に思わせてしまう心理的ハードルを作っている側でもあったんですね
齋藤 :チームでは最初、中﨑さんの業務負担をLLMを用いて減らすためにどうするか?という視点で議論を深めていきました。人事労務側だけでなく従業員側の課題感の解像度も高まって行く中で、産育休に関する従業員の困りごとを支援するようなアイデアへ発展していきました。
中﨑:私が普段感じている課題感についてチームメンバーに聞いてもらうことで、問題を可視化して整理してくれたので、とても助かりましたね。
とくに可視化の部分は西岡さんと齋藤さんがすごくて…!
私がアイデアを口にしたらどんどん掘り下げて言語化、可視化されていくのでさすがだな、と思いました。
西岡:チームが出来上がってすぐに齋藤さんがmiro(オンラインのホワイトボードツール)でカスタマージャーニーやフローチャートを作って整理してくれたんですよね。
齋藤:そうそう、これをもとに認識にズレが生じてないか確認しながら進めていきました。
それぞれのスキルやバックグラウンドを活かし合うチーム開発
皆さんは普段の業務でも関わりはありましたか?
全員:ないですね……!
川上:普段は、みんなバラバラの部署に所属しています。そのため、メンバー全員ほぼ初対面でした。
実際に開発を進める中でどのような役割分担だったのですか?
齋藤:まずは週に1時間程度お昼の時間に集まって、全員で課題を深堀りしたり解決策に落とし込んでいきましたね。
その後は、労務のスペシャリスト且つ課題を持っている中﨑さん、オールラウンダーな西岡さん、実装は川上さんがメインで担当してくださいました。
各自ができることを助け合いながら進められたらと考えて、僕は自分が得意そうな物事の深掘りや情報整理、調整ごとを担当しました。
開発していて、つまづいたことや工夫はありましたか?
中﨑:私が要望させてもらったのは、「かわいいキャラクターでごまかさないこと」です。
botを擬人化したようなキャラクターが出てきて、答えられないときにかわいく謝るようなパターンには頼りたくなかったんです(笑)。それを実現するために3人が本当に頑張ってくれました。
齋藤:従業員が質問をためらって疑問の解消できずにいる現状に対して、自分で解決できるように何かしらの情報にたどり着けるようにするために、フローチャートを作ってすり合わせを重ねました。
中﨑:現状社内には、産育休のルールがまとまったポータルページを用意しています。ただ、多岐にわたる事項が深い情報階層まで続いているため、容易にほしい情報にたどり着けない課題があります。一律の情報提供ではまかなえない部分が多く、産育休を取る人とは全員面談をして、一人ひとりの状況に合った個別の情報まとめを準備しているのが現状です。
川上:つまづいたことといえば「男性は産休がとれますか?」という質問に対して、チャットbotがさも当たり前のように「取れます」と答えちゃったり、思った通りに動かないなという場面はありました。(笑)
最初はAIにすでに出来上がっていた産育休のQ&Aリストをインプットしました。ただ、それだけだと誤った回答を出力してしまったんです。
そこで、Q&AのQの部分はいらないんじゃないかと思い、質問も含まれた形の事実だけが述べられている文章になおしてインプットし直したところ、改善が見られました。
進める中で、思った通りには動かないなと思ったこともありましたが、ひとつひとつに対して改善を繰り返していきましたね。
西岡:想定したいくつもの質問の中でも、この質問には答えられるようにしたいという目標を設定してはクリアして、締め切り直前まで精度を上げていきました。
中﨑:齋藤さんと西岡さんが作り込んでくれた発表資料も、クイズ形式の問いかけが冒頭にあって、3分という短い持ち時間の中でも視聴者の注意を引き付けてからプロダクト紹介に入れた点がすごく良かったと思います。
チームメンバーの頼りになったな、心強かったなと思う場面はありましたか?
齋藤:川上さんがAIでできることはどこまでなのかを、初期段階で可視化してくれたのが心強かったですね。試しに自分たちの自己紹介を入れてみて、どんな形で答えが生成され返ってくるかを見た時に、アウトプットのイメージがしやすく、安心感がありました。
西岡:最後の大詰めの時に、齋藤さんがスケジュールを立てて共有し、全体の進行を見てくれていたこともありがたかったです。
川上:最後の3〜4週間あたりから細かくタスクを区切ってくれたのは本当にありがたかったです。
中﨑:私としては、社員が使ってくれることを想像しながら作れたことが良かったです。こっそり聞きたい事情は絶対にあると思ったので、その気持ちに応えられる機能を実現できたことがとてもうれしかったですね。
審査員も真剣勝負のハッカソンに参加してみて
ハッカソンに参加するハードル、ぶっちゃけ高くなかったですか?
齋藤:実は、ハッカソンって「エンジニアがやるもの」みたいなイメージがあって、社外で行われているものは参加ハードルが高かったんです。ずっとやってみたいとは思っていたんですが、今回は社内で参加もしやすかったし、テーマも自分が興味のあるAIで本当にいい機会でした。
西岡:ryopenguinさんの誘い方がとても良くて。とりあえず興味があれば気軽にSlackチャンネルに入ってねって言ってくれたことですごくハードルが下がったと思います。その後のLLM勉強会の開催や、手厚いフォローがあることがわかっているのも安心材料になりました。
中﨑:それは私も思いました!
ハッカソンを振り返ってみてどうでしたか?
西岡:最終発表を見て、どのチームもクオリティが高く、ジャンルも多岐にわたっていて、すごいなと思いました。個人的には、CxO陣が全員審査員として参加して、厳正に提案に対する講評をしてもらったことも良かったです。ガチンコの審査員として痛いところもたくさん指摘されましたし、次はもっと考え抜いてやるぞ!という気になりました。
それから、発表当日にハッカソンに参加した人もしてない人も、みんなが大きな会議室やZoomに集まって、Slackでこれは新規事業や新機能に繋がるかどうか、ワイワイ話しながら発表を聞いているのも、SmartHRらしいなと思いました。(笑)
川上:宮田さん(取締役 ファウンダー)からは、従業員が正しい情報を知りたいと思った時に、高い精度でbotが機能するかどうか、求められている正確さをクリアするには難しさもあるとズバッと言われた時に、たしかにそうだな…と思いました。
中﨑:講評の中でSmartHRの既存機能との相性がいいんじゃないかというアドバイスをもらった時、私達チームの中では考えが至っていない部分だったので、さすがだなと感じました。「よくできました」で終わらずに、真剣に新規事業につながるのかどうか審査してもらっているところがいいですよね。
齋藤:初めての参加だったのでどこまで準備したらいいか悩みながら検討を重ねましたが、早いタイミングでデモをみんなで確認しながら作り上げられたことで、最終的なアウトプットのイメージを揃えられて良かったと思います。
各チームの発表を聞いていても、モックで終わらずちゃんと動くものを作ってきていてSmartHRの「楽しみながらもコミットする」という強みを実感しました。
川上:初めての開催だとは思えないほど、盛り上がったと思います。2回目、3回目もあるんじゃないかと早速期待しています!今回、参加に対して足踏みしていた人もいたでしょうから、第2回目の開催を期待して、今後も多くのメンバーに関わってもらえるといいですね。
SmartHRでは一緒に働く仲間を探しています!
いかがだったでしょうか!
組織規模が急拡大中のSmartHRですが、我々はまだまだ発展途上です。所属部署や入社時期によらず変化をいち早く捉え、人が欲しいと思うものをつくるというマインドをみんなで共有しています。
今回のハッカソンの取り組みから、SmartHRのそんな空気を感じてもらえたら嬉しいです。
これを読んで興味が湧いた方はぜひこちらからご応募ください!カジュアル面談も大歓迎です。
制作協力/リスナーズ株式会社