カリブの女王 第1章 黒い海賊④
漕ぎ手の海賊たちが櫂を挿して小舟を止めると、男が一人舳先(へさき)に立ち上がり、防波堤にパッと飛び移った。そのジャンプはトラのようだった。男は2000人の住人がいる町に大胆にもたった1人で上陸した。その2000人は男に歯向かい、男を獰猛な野獣のように扱おうと待ち構えていたと言うのに。それは、35歳くらいの、背は高めで、貴族のように洗練された物腰の、見目の良い男だった。
整った目鼻立ちをしていたが、顔色は死人のように蒼白だった。広い額にはしわが1本刻まれていた。そのせいで男