キュレーター原田マハの描くアートの楽園①
curator Maha
キュレーター
博物館や美術館、図書館、公文書館のような資料蓄積型文化施設において、施設の収集する資料に関する鑑定や研究を行う者を指す。
現代美術の世界においては、キュレーターは展覧会の企画者としての業務が重要である。
美術作品はタイムマシーンである。
数百年も前の作品を、この目で見ることができるなんて、ホント、凄いことだと思うんですよね。
原田マハさんの美術系の本は、美術作品を通じてその世界を旅させてくれる、まさにタイムマシーンのような物語なのです。
今回は、そんなタイムマシーンのようなマハさんの作品に出てくる絵画について”note”していきたいと思います。
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『楽園のカンヴァス』
ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに篭めた想いとは―。
原田マハさんのアート系の物語の出発点にして最高傑作がこの作品だと思います。
1枚の絵の謎を2人のキュレーターが追いかける現代パートと、ルソーとピカソのエピソードを追う過去パートのバランスが素晴らしい!
まさにアート・サスペンスの謳い文句にピッタリの作品なのです。
この作品に登場するのがルソーと若き日のピカソなのです。
◎アンリ・ルソー 1844-1910
19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの素朴派の画家。
登場作品「夢」
ルソーの作品って、味が濃い絵画って感じなんですよね。
ルソーなりのジャングルが描かれた一連の作品とか、植物が生々しくてちょっと怖い!
でも、そういうイメージが重層的に繰り出されてくるので、この幻想的な作品に仕上がってると思うのです。
「嵐の中の虎」
「眠れるジプシー女」
ルソーの絵って、わざとなのか実力なのか分からないのですが、なんか人物とかがディフォルメされていて変なんですよね。
この「眠れるジプシー女」なんかも、女性の様子がちょっと変ですよね。
でも、これがルソーの不思議な魅力なのです。
◎パブロ・ピカソ 1881-1973
ブラックとともに、キュビスムの創始者として知られる多くの作品を残した巨匠。
「楽園のカンヴァス」の過去パートにおけるもう一人の重要人物。
現代パートでは”ブルー・ピカソ”という言葉が出てくるのですが、ピカソの初期作品のいわゆる「青の時代」の作品群です。
ピカソは原田マハさんの本にはちょくちょく顔を出しますね。
『ジヴェルニーの食卓』
近代絵画の巨匠、マティス、ドガ、セザンヌ、モネの4人を、それぞれの短編で描いた作品。
それぞれの時代に、ある女性からの視点で巨匠たちが描かれていて、まさにタイムマシーンで様子を見ているかのような物語なのです。
◎アンリ・マティス 1869-1954
フォーヴィズム(野獣派)の先駆者であり20世紀を代表する画家
「大きな赤い室内」
実は大好きな画家さんの一人なんです。
人物の顔に緑色の影を描いたりしちゃったもんだから、「野獣派」とか呼ばれたマティスですが、この大胆な色使いは印象的ですよね。
「ダンス」
◎エドガー・ドガ 1834-1917
フランスの印象派の画家、彫刻家
「エトワール」
ドガと言えば踊り子たちを描いた一連の作品が有名ですが、短編の中で登場するのは彫刻作品の方です。
「十四歳の小さな踊り子」
実際のスカートを身につけさせている彫刻作品。
面白いですよね~。
マハさんの短編では、この作品の背景が描かれているのです。
◎ポール・セザンヌ 1839-1906
印象派やポスト印象派の作家として多大な影響を与えた画家
「りんごとオレンジ」
セザンヌといったら、こういう静物画か ”セント・ヴィクトワール山” を描いた風景画のイメージなのです。
学生時代の静物画の授業で、何度もセザンヌを参考にさせられたので、ちょっとその頃を思い出してしまうのです。
◎クロード・モネ 1840-1926
印象派を代表するフランスの画家
「睡蓮」
モネといえば「睡蓮」、「睡蓮」といえばモネというぐらい、モネはたくさんの「睡蓮」を残しています。
ただ、その時々で、写実的な様子があったり、ほとんど抽象絵画みたいなやつもあったりして、比較してみると面白いのです。
『モダン』
MoMA(ニューヨーク近代美術館)を舞台にした短編集。
作品を通じた人々との交流を描く短編で、美術館に関わる人たちが描かれています。
登場する絵画は、お馴染みのピカソやマティスらの作品に加えて、ワイエスの「クリスティーナの世界」が登場します。
◎アンドリュー・ワイエス 1917-2009
リアリズムの画家であり、戦前から戦後にかけてのアメリカ東部に生きる人々を、鉛筆、水彩、テンペラなどで詩情豊かに描いた。
「クリスティーナの世界」
ワイエスは、これまで紹介した印象派の方々に比べると、比較的、新しい作家さんです。「写真」?みたいに精緻に描き込まれたリアリズムが追求されていています。
有名なのは「クリスティーナの世界」ですが、この女性はワイエスの作品で度々登場してきます。
ぜひ、どんな作品があるのか追いかけていただければと思います。
正直、自分はリアリズム系の作品はそれほど好みではないのですが、ワイエスはその構図や描かれている人々、光景などなど、他のリアリズム作品とは違った印象があるのです。
よく”詩情”という言葉が付されてるのですが、独特の空気感があったりして、個人的には静かな迫力を感じさせられるのです。
「1946年 冬」
「海からの風」
この「海からの風」のカーテンの様子とか凄いですよね。
多分、描かれているのはカーテンではなく”風”なんです。
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と、紹介してきましたが、まだまだ、マハさんの本が残っているので、②の方で残りの画家さん達を紹介したいと思います。
(過去note)
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